第18話 ③——「【コラボ配信】控えおろう! この〝天上院〟の威光が目に入らぬか!【三周目】」
「さて、みんな……ごきげんよう。今宵もまた、この夜叉姫様による深淵なる配信の時間がやってきたのだよ——」
もはや聞き慣れた、やっさんのいつもの挨拶によって……突発的にゲストが増えたコラボ配信がいよいよスタートした。
そうして、配信開始と同時に、空中で一列に並ぶ四チームの四台分のドローンカメラが、すでに勢揃いしている私たちの姿を捉えたところで……案の定、コメント欄が一気に沸き立っていく。
〈ラブ夜叉姫@好き好き大好き♡ズッキュン♡キュン♡:今日の夜ちゃんは一段と天使でキュンだよん♡ センターに相応しいビジュ極まってるっ!〉
〈ニートの無職ん:……あー、はいはい、今度は天使バージョンとか言うんだろ? 見たまんまじゃん笑〉
〈もっこり助兵衛:………………ごめんやっきゅん……マジで……そういうのさぁ……良くないと思う…………てかさぁ……そんなんもう結婚するしかないじゃん!!!!!(錯乱する魂の叫び)〉
〈探索兵長:…………え、私の推し、可愛すぎでは?????〉
〈♡←(〃ω〃):ちょっと♡ふざけんな♡まじでメロすぎ♡♡♡監禁したい♡その羽もぐぞ♡はよ堕天しろ♡〉
〈☆脳空◎:マ!?!? ッッッジでよるちゃ天使やん!!!笑笑笑 え、普通に顔もだけど声もめっちゃかわいくなりすぎててやばい。。。もうさ、こんなん、さらに好きになっちゃうやん!!♡♡〉
〈キチガイバーサーカー:み゛ん゛な゛天゛使゛に゛気゛を゛取゛ら゛れ゛て゛て゛ヴ゛ン゛オ゛ケ゛も゛い゛る゛こ゛と゛に゛気゛が゛付゛い゛て゛な゛い゛の゛草゛な゛ん゛だ゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!゛!゛!゛!゛〉
〈やが灰のファンである:え、待って待って、ヤバいヤバい、何それ何それ……いやいやいや、えー……天使やん。こマ? そんなんあり? え、これ普通に夜叉姫さんにガチ恋しちゃいそうなんだけど……いかん正気に戻れオレ!!!!笑笑〉
〈やがてファンになる:天使な夜叉姫さんがあまりにも天使過ぎて二度見どころか三度見、四度見……って、あれ、待って、なんか今日、人数多くなってません……???笑笑〉
〈地上の視聴隊:久々に何の告知も無しに我らがお嬢様のゲリラ配信が始まりましたわぁぁぁぁぁってぇ! 天使ぃ!!?? 天使ナンデェですのぉ??!!〉
〈地上の視聴隊:予告なくいきなりヴンオケの配信が始まったと思ったら、なぜか画面のセンターにいるのは、我らが神楽お嬢様ではなく、天使な夜叉姫様でしたわぁ!? 何を言っているのかアタクシにも解りませんわぁ?! これは一体どういうことですのぉ!?!〉
〈地上の視聴隊:なんと……! いつかやるとは思っていましたが、まさかのタイミングですわね! 今話題の夜叉姫様(天使!?)に、人気急上昇中のソラ様との電撃ゲリラコラボ配信だなんて! さすがは我らが神楽お嬢様ですの! 行動が早い、早過ぎますわぁ!〉
〈(・・?):ヴンオケはわかるけど、となりの二人組はだれ?〉
〈眠れぬ森の女王:妾の出番はまだかのう……ほれ、夜叉姫よ、はよ進めい〉
「ふむふむふむ……そろそろ説明も要らなくなってきたかな? ——そうそう、これは天使バージョンってヤツさ。
オホン。それでね、まあ見ての通りなんだけれど……今日は特別なゲストを呼んであるんだよね。それもなんと、二組も、ね。
まあ、片方は有名配信者だから、今さら紹介の必要は無いかもだけれど……でも一応は、軽く自己紹介してもらおうかな?
というわけで……一つ目のゲストは、こちらの〝お嬢様〟たちだよ!」
そう言ったやっさんは、まず初めにヴンオケに話を振り——それに対して、颯爽と前に出てきたお嬢様が応える。
「皆様、ごきげんようですわ。今回の配信は、ご覧の方々との、とても素晴らしいコラボ配信ですの。
まずは——今とっても話題のお二人ですから、ご存知の皆様も多いであろう——今日は天使な夜叉姫様と、つい最近に超有能な使役獣が増えたソラ様ですわ。
そして、皆様気にしておられるであろう、こちらの見慣れぬお二方についてですが……なんとですの、このお二人は、かの『勇敢なる挑戦者』——勇者御一行の指揮者である、勇者御剣様の、実のお姉様と妹様なのでしてよ。
では、お二人とも、どうぞこちらに、ですわ」
さらに続いて、お嬢様からバトンを渡された御剣姉妹が、前へと出てくる。
「はいどーも〜。ヴンオケのお嬢様にご指名いただきましたー。我ら二人……御剣の名を継ぎしもの、こっちが姉の光刃でー——」
「——こっちが妹の鳳刃で〜す!」
「「そんな二人合わせて、『御剣姉妹(仮)』でーす! よろしくお願いしま〜す!」」
〈探索兵長:ええっ、マジですか! 勇者御剣さんの実の姉と妹!? ですって?!〉
〈やが灰のファンである:うおぉぉ二人ともめっちゃ美人だぁぁぁぁ!!! コイツはすげぇ! 御剣一家が美形すぎるぅ!!〉
〈地上の視聴隊:これは驚きましたわ……! しかし、御剣家といえば、言わずと知れた武家の名門ですから、お嬢様と既知の間柄だとしても、別におかしくはないと言えばそうなのですよねぇ……〉
「うんうんうん…………って、それだけですの? もう少し、こう……何かないんですの?」
「んー、いやぁー、そう言われてもねー……そもそもアタシら、配信を始めたのも今日が初めてだしー、ぶっちゃけ慣れてないというかー……」
「まあ、それはそうですわね。でしたら——僭越ながら……後は私が引き継がせてもらいますわ。それで、よろしくって?」
「うん、よろしくってす」
「では……おほん。まず初めに、今回、私どもが夜叉姫様とコラボすることになった経緯から、軽く説明していきますわね————」
最低限の紹介を終わらせて——それから後は、そのまま自然な流れで神楽お嬢様がその場を仕切り、リスナーに対しての説明を引き受けてくれる。
——そういうのが苦手なやっさんはもちろん、この私としても、お嬢様や御剣姉妹を差し置いて、この場を取り仕切る度胸や段取りなどは、さすがに持ち合わせていないので……お嬢様が率先して前に出てくれるのは、むしろ有り難いというものだった。
そうしてお嬢様は、今回私たちといきなりコラボすることになった経緯を、当たり障りのない範囲でリスナーたちに説明していく。
——その大筋としては、自分たちもシェイプシフターを獲得したかったから、その手引きを夜叉姫に依頼したことをきっかけにして……そこから、なんやかんやとやり取りして、あれこれと取引をしたところ……依頼を受けてもらうための対価の一環として、今回こうして配信にお邪魔する運びになったのである……とまあ、そんな感じの説明だった。
ただ、それに加えて……これだけは、いずれにせよ大っぴらに宣言しておく必要がある、ということで——私のために、改めてこんなことを言ってくれた。
「——それと、一つだけ……今ここで、はっきりと言っておかなければいけないことがありますわ。
それというのも——最近、何かと注目を集めている夜叉姫様とソラ様のコラボ配信ですけれど……前回の〝新メンバー加入〟の一連の配信の後からは特に、注目が集まっているようでして……それだけならば、配信者としては、とても喜ばしいことなのですが……しかし中には、どうにも良からぬ思惑でもって、このお二人を狙っている方たちがいらっしゃるようでしたの。
ですので今回、この場を借りて、以下のことを大々的に宣言させてもらいますわね。
おほん……『我々、天上院財閥は、この度、正式に——夜叉姫様とソラ様の後援につくことを決定いたしましたことを、ここに宣言させていただきます』……ということですわ。
これが、どういうことを意味するのかは——もはや、言わずとも判っていただけるとは思いますが……しかし、一応は釘を刺しておきますわね。
今日この時より、夜叉姫様とソラ様に対して、何らかの不利益をもたらさんと画策するような方々につきましては……それはそのまま、この〝天上院〟を敵に回すことになるのだと、そう理解しておいてくださいまし。
まあ、そうは言っても……すでに動き始めている連中につきましては、我々の方でも、すでに対処に当たっていますので……今さら後悔しても遅いのですけれどね。
ですので、まだ間に合う方々につきましては、これを機にスッパリと諦めていただけることを……この私としても、切に願っておりますわ」
そう……色々と目立ってしまったことで、何やらすでに方々から狙われているらしい私を守護るために、天上院の名と力を貸してくれるということを——こうして広く知らしめることで、まずもって犯罪的行為を未然に抑止するという意味でも——配信でキッパリと宣言してくれたのである。
〈流浪の探索者:夜の字の実力と、天上院グループの組織力が合わされば……こりゃもう、向かうところ敵無しやな!笑〉
〈やが灰のファンである:噂には聞いていたけれど……ソラちゃんを狙う悪いヤツらってマジでいたんか。とはいえ、天下の天上院グループが味方してくれるというのなら……もはやすでに勝ちは約束されたようなものだな!笑〉
〈地上の視聴隊:我らが神楽お嬢様のお膝元、天上院グループがバックについたからには、ソラ様の安全は保障されたも同然ですわぁ!〉
という宣言を受けての、リスナーたちの反応を見ても分かる通りに……天上院グループが、その名を大々的に出した時点で、すでに事態の趨勢は決したも同然だった。
——それくらい、天上院グループの名前と、それが持つ影響力は凄まじく大きい。
実のところ……今回、お嬢様たち『天上の神楽隊』をゲストに呼んで急遽コラボしたのは、コラボ配信を通して、このことを宣言することが一番の目的だった。
実際にコラボして、お嬢様の口から直接、天上院グループが私たちの味方をしてくれるのだと宣言することで……それはそのまま、確かな〝事実〟と認識されて世間に伝えられることになる。
そして、その〝事実〟が広まった時点で、私たちを守護るという目的はほとんど達成される。
なぜなら……それほどの力を——名前を出しただけで、もはや手出し出来なくなるくらいに強い影響力を——天上院グループは持っているのだから……。
一番の目的を早々に終えたので、後はもう、気楽にコラボ配信探索をするだけでいい。
というわけで、二組のゲストを迎えたコラボ配信の三週目・一日目が、いよいよスタートしたのだった。




