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第15話 ⑤——「とんでもない重要情報を、ついでのようにさらっと明かす……!」



 薄暗い森から差し込んでいた、わずかな光も届かなくなるくらいに深くまで、大樹の(うろ)から続く岩窟を地下へと進んでいったところで……私は腰に差している(かたな)の能力を発動し、周囲を明るくする。


『“魔刀(まとう) 光明(こうみょう)——白昼明光(はくちゅうめいこう)”』


 すると、完全に真っ暗闇だった洞窟内が、一気に昼間のように明るく照らし出された。


「ふぅ……ようやくここまで来れたね。いやはや、ダークエルフのフリするのも楽じゃないよ、まったく」


〈探索兵長:あ、いつもの姫に戻りましたね〉


〈もっこり助兵衛(スケベえ):ダークエルフ・ロールプレイ中のやっきゅんも、すっごく(うつく)し可愛かったよん♡〉


〈眠れぬ森の女王:いよいよ、か……〉


〈やがてファンになる:お、真っ暗だったのが、いきなり明るくなった〉


〈やが灰のファンである:いやマジで隠しエリアって感じのトコロに来ちゃってません? これ?!〉


「というわけで……さっきもソラが軽く説明してくれてたけど、改めて解説すると、ここは南の森の深部から入れる〝隠しエリア〟の地下空間だよ。

 ここに来るためには、ダークエルフたちに〝儀式〟という名のギミックを起動してもらう必要があるから、さっきはああして取り入ってたってワケなのさ。

 そうまでして、この場所にやってきた理由はもちろん、今日の目標であるソラの新メンバー獲得のためだからね。

 そう……つまりはこの先で、いよいよ当のモンスターとご対面することになるよ。みんな、心の準備はいいかな?

 ああ、そうそう……ちなみに、周囲が明るいのは、ボクの武器であるこの(かたな)の能力によるものだよ。

 というのも、この地下エリアって、この先もずっと真っ暗なんだけど……それだと配信としてはよろしくないだろうし——少しならともかくずっとだから、いつかみたいに暗視(ナイトヴィジョン)モードでやるのも微妙だよねって思って——今回はちゃんと対策装備を持ってきたんだよね。

 そう……これこそは、闇夜を切り裂く光を操る刀——人呼んで、『魔刀(まとう) 光明(こうみょう)』!

 この刀は、光に関する能力を持っていて……今みたいに周囲を明るく照らしたり、刀身を強烈に光らせたり、光の斬撃波を飛ばしたりできるんだよ」


 そう言いながら私は、腰に差していたその刀を、(さや)から引き抜いてみせる。


〈ニートの無職ん:普通に喋れるようになった途端に、めっちゃ喋り出して草〉


〈流浪の探索者:夜の字はほんま、自分のことについては、まったくと言っていいほど教えてくれないのに……攻略情報に関しては、こうして惜しげもなく開示してくれるんよなぁ……笑〉


〈探索兵長:精霊ダン中層中域の「迷いの森」に関しては、それこそ協会ですらロクな情報を持っていない秘境ですからね……それが、今回だけでも——ダークエルフに、儀式、そして隠しエリアの存在まで……今やこの配信の価値は、もはや計り知れないレベルに到達しているといっていいでしょう〉


〈やが灰のファンである:迷いの森の情報なんて、調べてもまったく出てこないくらい知られてないからね……これはガチでヤバい情報だと思う。ってか、こんなすごい情報なら、たぶん上手くやったらかなりの額の金に変えられると思うんですが……こんなアッサリとタダで配信しちゃっていいんですか?!〉


〈†漆黒の堕天使(ブラックエンジェル)†:ふむ……刀と言いつつ、見た目は和風というより洋風な(おもむき)があるな……美しい装飾の(ほどこ)された護拳(ナックルガード)などは、特にそう……しかしそれも、今の闇森人(ダークエルフ)たる†深淵の†君にはよく似合っているから、これもまた良し……と言ったところだろう〉


〈やがてファンになる:なんだか衝撃的な情報が次々に押し寄せてきてて……一周回って何も感じなくなりました笑 もう後は何も考えず、純粋に楽しんで観ていこうと思います!w〉


 刀のお披露目も済んだところで、私は隠しエリアの地下洞窟を奥へと進んでいく。

 ——ちなみに、この刀の能力は鞘に納めたままでも使えるので、納刀した今でも周囲は明るいままだ。

 そうして——今はもう逆に明るすぎるので——もはやまったく暗黒の地下世界って感じがしない一本道をガンガン進んでいくと、しばらくして開けた場所に出てきた。


 その広場は、ここまでやってきた道の他に、六つの道と通じていた。

 私たちが入ってきた道を南とするなら、他の道はそれぞれ、八つの方位のうち、北と南を除いたそれぞれに対応するように——北東、東、南東、南西、西、北西の六方向へと伸びている。

 そのうち、正面にあたる北の方向については、道ではなく大きな扉が存在しており、その大扉の手前には、意味ありげな六つの台座が並んでいた。


「さて……ついたね。ここはいわゆる、この南の森のボスがいるボス部屋の——その手前の広間だね。正面に六つの台座と、その先に大きな扉があるけれど……あの扉の先にいるのが、南のエリアボスだよ」


 私がサラッとそう告げると、にわかにコメント欄がざわつきだす。


〈やが灰のファンである:え、待って、今エリアボスって言った? ウッッソ、マジぃ!? 南の森のエリアボスってこんなところにいたの?? てゆうか、南の森にもエリアボスっていたんだ!?〉


〈やが灰のファンである:南以外の北、東、西にはそれぞれエリアボスがいるんだから、南にもいるはずってのは前から言われてたみたいだけれど……まさか隠しエリアにいたとはね。どおりで未発見だったワケだよ。いやまあ、そもそも深部のダークエルフの時点で未発見だったんだけどさ……〉


〈探索兵長:……ついに、未発見だったエリアボスの所在まで……。今さら姫の言葉を疑うつもりはありませんので、私は信じますよ。ただ、その上で言わせてもらうなら……この情報は、かなり大きな反響を呼ぶと思います。それこそ、場合によっては、探索者協会や大手クランが動く可能性も十分にあるでしょう。なにせ、この精霊ダンの、この階層に関しては、以前から言われていましたから……東西南北のエリアボスをすべて倒したら、何かが起きるのではないか、と〉


 コメントを読みながらも、私は広間の中を進んでいき……正面にある六つの台座のそばにまでやってきたところで、おもむろに口を開く。


「そうだね……知っている人は知っていると思うけど、この階層って、東西南北の四つのエリアにそれぞれ別種のエリアボスがいて、どれか一体を倒すだけで次の階層に進めるんだよね」


 そう言ってソラの方を見たら、(うなず)いて(こた)えた彼女が続ける。


「そうですね、やっさんの言う通りです。なので、通常の攻略においては、どれか一体のボスだけを——それも、一番倒しやすい西の沼地のボスを倒すのが一般的です。

 ——かくゆう私も、倒すなら西のボスだと思って、今までは西エリアを重点的に攻略してましたから……まあ、ずっと苦戦していたので、ほとんどボスには挑めていないんですけど……。

 ただそれでも、北の山と東の湖のボスが倒されることも無くはないんですよね。その人とボスの相性によっては、そっちの方が倒しやすい場合とかもありますし……。

 それに、すべてのボスを倒そうと挑戦している人も、中にはいるらしいとも聞いたことがあるんですが……その場合でも、よくて南以外の三つを倒すまでが限界だったみたいですね」


〈やが灰のファンである:それな。いや今回、マジでアッサリ夜叉姫さんが攻略しちゃったからアレなんだけど……本来はマジで、下層が主戦場の上級探索者だって普通に諦める場所だからね、この森って〉


〈やが灰のファンである:俺が聞きかじった話じゃ、迷いの森って、実力があって敵は倒せるヤツでも、道に迷ってどうしようもないらしいな。なんか、そんな特殊効果が働いてるとかなんとかって……だから結局、希少な転移アイテムとかを使わないと最終的には脱出できないから、どう考えても割に合わないんだと〉


〈やが灰のファンである:それでもいまだに東西南北エリアボス制覇を目指すヤツがいなくならないのは、階層転移陣にある台座が意味深に四つあるから……エリアボスの魔石をセットすることで、次に進めるようになる台座、それがまるで、東西南北に合わせるように四つ……となると、こりゃあ完全にそういう〝意味〟でしょ! ってね〉


〈やがてファンになる:有識者たちの怒涛の知識アピール助かる笑〉


〈やが灰のファンである:てか、ここにある台座も、階層転移陣にある台座と似てない? てか、この台座は何なん?〉


 にわかに沸き立つコメント欄の中では、様々な憶測や、有識者の言説が飛び交っていたけれど……

 すべてに取り合っていたら埒が明かないし——ちょうど本題に触れるコメントも現れだしたので——私は目の前の六つの台座について説明するために、背後に浮いているカメラの方に向き直るのだった。


 

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