第14話 ⑩——「テレビ番組なんかで、お馴染みの〝アレ〟」
「まだ未完成だけど……ひとまずはこれで、ソラの新武器(仮)を手に入れることができたね。それじゃ後は、残りの必要なパーツとなる武器たちを収集して……それを全部合体させて、新武器を完全に完成させたあたりで——まあ、今日の配信としてはそこまでかなー」
〈アンチ太郎:新武器がクロスボウだってことはもう分かったから、もっと詳しくちゃんと説明しろ〉
〈探索兵長:そういえば、〈不死ダン〉の「領域効果」といえば、厄介な領域効果の代表例として有名ですよね。全域に渡って飛行などの移動がかなり制限されるので、探索はもちろん、配信でもドローンが飛ばせないから困るとかって…………あ、あれ? そういえば、姫とソラさんは最初から普通にドローン飛ばしてますよね? ……えっと???〉
〈やが灰のファンである:え、これで完成じゃないんすか? まだなんか別の武器を収集? って……え? それってテイモンたちの武器ってコトっすか?!〉
「ああいや、違うよ。こっから集めるのも、ソラの武器用の追加パーツとなる別の弩なんだけど……うんまあ、確かにちょっと分かりにくいから、具体的な内容も含めて説明するね。
——あ、それと、ドローンについては、確かに普通は飛ばせないんだけれど……それだと面倒だから、今回は飛ばせるようにしておいたよ。
で、クロスボウについての話に戻るけど……ああでも、長くなりそうだから、説明しながら雑事を済ませておくとしようかね」
そう言ってやっさんは、説明を続けながらも残り二つの宝箱もさっさと開けてしまうと、そのまま部屋から出ていき、残った二つのうち右の扉——ドロップ置き場に入り、そこにある魔石を回収していく。
——あ、ドローンの説明はそれで終わりなんだ……。
やっさん曰く、配信環境については妥協せずに能力を解放するっていってたから、たぶん何かをしてくれているんだろうけれど……
これについては、私も詳しくは聞いてないから、私の口からも説明できないし……ってことで、ごめんなさい、兵長……。
「えっと、今日の配信では、これからさらにこの〈不死ダン〉を巡って、あと三つの弩を集めるつもりなんだよね。
一つ目は、〝攻撃力〟とかのSTが純粋に高い強力な弩で、性能の底上げ用。
二つ目は、【自動照準】の能力がついたもので、能力追加用。
三つ目は、見た目がカッコ良くて構造的な機能性が高い弩で、これは素体として使うつもり。
ってな感じで……つまりは、残りすべての必要な弩を回収して、それらを全部組み合わせることで……見た目良し、性能良し、能力良しの三拍子揃った最強の弩が完成する——って寸法なのさ!」
そう高らかに宣言する頃には、大量のドロップもすっかり無くなっていた。
「まあ、残りの弩も全部このダンジョンで手に入れることができるとはいえ、それぞれを落とす敵のところまで普通に探索して回ってたら、やたらと時間かかるし間に合いそうにないから……ここは〝アレ〟を使って、途中はスキップしていくね」
「アレ……ですか」
〈ニートの無職ん:おいこら、さすがにそのアレとやらの説明はあるんだろうな……??〉
〈やがてファンになる:マジでアレって何? てかスキップってことは、もしかして、あの最後の三つ目の扉は行かないんですか? え、気になる……〉
「アレはー、だからー……ごめん、説明が難しいな……んーでも、見たら分かると思うよ。あ、コレのことなのね——って。
あー、そしてこっちもごめんね、三つ目の扉は行かないよ。でもあそこは別に、大したものは無いというか……ただの上へ戻るためのエレベーターだからさ。わざわざ行かなくてもいいよね?」
〈ツッコミ番長:いやあの、上に戻るエレベーターに乗らないなら、どーやってここから出るんすか……???笑笑〉
〈やがてファンになる:えっと、わざわざ梯子まで戻る方が面倒では??〉
「それについても……見れば分かるよ! というわけで——今から一瞬だけ画面が暗転するからね——じゃあソラ、やるよっ!」
「は、はい! ——みんなもいくよっ!」
「せーのっ!」
事前の打ち合わせ通り、やっさんの掛け声に合わせて、私たちは全員その場からジャンプする——
そしてそれと同時に、配信の映像を一時的にオフにしておく。
「ん、オッケーかな? ——よし、それじゃ急いでっ、はい、みんなで手を繋いで……」
「みんな、集まって!」
「あ、ドローンも忘れないでね」
「そ、そうでした」
〈ニートの無職ん:マジで画面消えたぞ、でもなんか声だけ聞こえるな、何をボソボソ言ってんだよ……w〉
「よし、それじゃいくよ——」
やっさんがそう言った、次の瞬間——
『“刻印転移”』
シュン——シュパ!
視界が一瞬で切り替わり——私たちは、さっきまでいた三つの扉のある通路とはまったく別の場所に現れていた。
「オッケーオッケー、それじゃ、またジャンプしたところで、ちょうど再開だよ? 準備はいい?」
「——う、真っ暗……あ、ちょっと待ってください、いま暗視モードに切り替えますので……」
「あー、そっか、忘れてたや。ボクも切り替えとかないと……」
「……出来ました、もう大丈夫です!」
「こっちもオッケー。んじゃいくよ、せーのっ」
手元に呼び戻していたドローンカメラを、ついでに暗視撮影モードに切り替えてから、再びその辺に浮かせて……
それから——ぴょん、とまた全員で飛んだタイミングで、モノクロになった配信の映像を再開させると……
あら不思議——観ている人からすれば、まるでジャンプした瞬間に別の場所に現れていたみたいに見える……という、テレビ番組とかでお馴染みの〝アレ〟。
——まさか私がアレを……それも、本当に転移するヤツを体験することになるなんて……
いやこれ、本当に転移するんだったら、もはやアレとは完全に別物と言うべきなんじゃないのかな……?
〈やが灰のファンである:え、何これ、しばらく暗転してたと思ったら、再開後もなんか画面が白黒になってるんですが、これは??〉
「あ、えっとですね、ここは完全に真っ暗なエリアなので、撮影モードを暗視に切り替えてます。モノクロなのは、そのせいですね」
〈ニートの無職ん:モノクロなせいで分かりにくいが……これ、さっきまでの場所とは違うよな? いや、どこだよ〉
「ふふっ……そうさ、今はもう目的の場所についてるんだよね。というわけで……これで分かったかな? つまり、さっき言ってた〝アレ〟ってのは——パッと移動したい時によくある、いわゆる〝お約束〟の——この『場面転換ジャンプ』のことだったのさ」
〈ニートの無職ん:…………はあぁ???〉
〈やがてファンになる:いや、そのっ……分かったかな? って言われても……スンマセン、ゼンゼン分かんないっス……〉
〈探索兵長:あの、姫……言いたいことは分かるんですけど——いえ、やっぱり分からないかもです、というか、まずこれ……生配信なんですが????〉
「ふふっ……甘いね兵長、この夜叉姫様にかかれば、生配信を編集することだって容易いんだよ」
〈キチガイバーサーカー:あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああまりにも意味不明すぎて、僕は正気に戻った〉
〈ツッコミ番長:草wwww〉
「しーしししぃ〜——静かに! ここはもう敵陣のど真ん中なんだから……ここからは、お口にチャックの抜き足差し足忍び足で行くよ。さてと……それじゃ、ソラの準備はオッケー?」
そう小声で聞いてくるやっさんに答える——その前に、私はウィルに指示を出して、ここから先へ進むための準備として〝とある魔法〟を使ってくれるように頼むのだった。




