第14話 ⑨——「ながら作業(説明)すっ飛ばし配信」
やっさんに(ほぼ一撃で)倒されたボス骸骨騎士が消え去った後には、魔石と大きな槍が残されていた。
〈ラブ夜叉姫@好き好き大好き♡ズッキュン♡キュン♡:お見事〜!〉
〈やが灰のファンである:おおやった! さすが夜叉姫さん、強そうなボスも瞬殺だぁ〜!!〉
〈ニートの無職ん:せっかくザコ相手にいい感じに無双してたシーンだったのに……敵の体で埋もれてよく見えてなかったの草〉
〈やがてファンになる:いやマジで、夜叉姫さんってガチで強いんすね!? あの大群も単騎で蹂躙&無傷とか、さすが深層級なだけあるわぁ……まあ惜しむらくは、マジで華麗な戦闘シーンがきれいに映ってなかったところっすね……笑〉
「さてみんな、さっきのボクのバトルシーンはどうだった——って、え、マジ? よく見えてなかった……だって?? うわ……カメラワークのこと完全に頭から抜けてたぁ、最悪ぅ〜……」
「あ、いや、でもっ、ちゃんとすごい戦いだなってのは伝わってましたよ!」
「んー、そう?」
「ですです! なので気にしないでください! それにほら、ようやくお宝の部屋へ行けるようになったので、さっそく向かいましょう!」
「ん、そうか……そうだね、行こっか」
どうも軽く落ち込んでしまっていたやっさんを励ましつつ、話題を変えるように私が本来の目的であるお宝武器のことを持ち出したら、彼女もすぐに気を取り直したようで……それからすぐに、件のお宝が眠る場所へと、私たちを先導するように移動を開始する。
そうして——さっきまでは敵の骸骨たちが出てきていた扉を潜り、中へと入って進んだ先……そこには、いかにも何かがありそうな三つの扉が待ち構えていた。
「さて、じゃあまず初めに、本命の扉を選ぼうかね」
そう言って、やっさんが真ん中の扉を開けて入った部屋の中には、三つの宝箱が置いてあった。
その三つのうち、真ん中の一つだけは明らかに残りの二つよりも豪華な装飾が施されている。
「罠は無いから、どうぞ開けちゃって、ソラ」
「あ、はい。分かりました」
さっそく本命の真ん中の宝箱を開けると……そこにあったのは、ついさっきにも見たはずの、やたらと厳つい弩だった。
ずっしりとした重量のあるそれを取り出した私は、カメラの前にかざしてみせる。
〈やが灰のファンである:おお、これが……! なんか強そうなクロスボウですね! これがソラちゃんの新武器なんすかっ!?〉
〈やがてファンになる:ん、でもこれ、なんかつい最近に、どっかで見たような……??〉
「そうそう、この弩こそが、ソラがこれから使っていくことになる新しい武器だよ。——ふふっ、そうなんだよねぇ……どっかで見たようなってのは、つまりはこれのことだね」
そう言ってやっさんが視線を向けると、心得たとばかりに彼が懐から取り出したものこそは……私が持っている新武器と瓜二つの弩だった。
「まあ、つまりはそういうことだったんだよね。前室のエリアで戦うことになるコイツが持ってる、この特殊な弩が確定で手に入るのが、ここのクリア報酬宝箱部屋なのさ」
〈やが灰のファンである:へえぇ、そういうタイプのクリア報酬もあるんすねぇ。てか、その弩って、めっちゃ強いヤツなんじゃないんすか? アイツが使ってたの見る分には、めっちゃヤバそうでしたよ!?〉
「そうだね……この弩の詳細については、まあ、これから実際に使っていく中で、紹介していけばいいかなって思ってるよ。なんせこれ、けっこう複雑ってか、たくさんの機能があるってか——使える特殊な矢の種類が多いもんだからさ……。でも、とりあえず名前だけは教えておくね。コイツの名前は——「七つの矢で〝七矢〟……七矢の弩」と書いて、『七矢の弩』と読む!!」
無骨で厳つい弩——改め、『七矢の弩』……これが私の新しい武器。
〈もっこり助兵衛:えーっと、つまり、『七矢の弩』ってコト?? ……合ってる?〉
「そうそう、それで合ってる合ってる。さて、これでまずは、ソラの新武器になる弩のメイン能力になる武技がついた弩が手に入ったね。それじゃさっそく、追加のサブ能力の方もこの場でサクッと合成しちゃうから、ちょっと待っててね〜」
するとやっさんは、どこからともなく巨大な釜のようなものを取り出した。
「じゃあソラ、これまで使ってたあの魔法の杖を出してよ。これからさっそく、それに宿ってる【自動追尾】の能力を、この『七矢の弩』に付け替えちゃうからさ」
「……っえ? オートホーミング? ちょ……ちょっと待ってください、私の杖って、【理力の追尾弾】の呪文が宿った杖じゃないんですか?」
「え……っえ、知らなかったの? その杖に宿ってるのは、ただの【理力の大矢】で、追尾効果は【自動追尾】の能力があるからなんだけど」
「うぇっ?! そっ、な……知りませんでした。てっきり【理力の追尾弾】なんだとばかり……」
「そ、そう……あー、まあだから、【自動追尾】抜いたら、そっちは『ただ真っ直ぐ飛ぶだけの魔弾を撃ち出す杖』になっちゃうケド……よかった?」
「そうですね……まあ、新しい武器が手に入ったので、もう使わない気がしますし……はい、大丈夫です」
「オッケー。それじゃ、移し替えちゃうね。まあ大丈夫だよ。というか、【自動追尾】をこっちに付け替えたら、むしろ今まで通りに使えるはずだからさ」
「なるほど……? なら確かに、ありがたいですね」
するとやっさんは、取り出した釜に、まずは私の杖と透明な球みたいなのを入れていく——という作業をしながらも、その作業中の間を持たせるかのように、チラチラとカメラに視線を向けながら補足説明のような話をしていく。
「あ、そうそう……今回こうして『七矢の弩』を手に入れた、この隠しエリアについてなんだけど……本来はアイツ——あー、名前無いと不便だね……んじゃ、とりあえず黒マントだから〝黒套〟って呼ぶことにするね——この〝黒套〟が第一陣の時から参戦してきて、上の方でコソコソしながらめっちゃ援護してくるからさ、さっきの感じよりも断然、攻略の難易度が高くなるんだよねー……」
ボフンっ——と煙が出たところで蓋を開け、中に入れた杖と透明だった球を取り出すと……透明の球が青く色づいている。
〈流浪の探索者:あ、やっぱりそーなんだ——って、ちょっと待ってちょっと待って……さっきから展開が早すぎて、全然ついていけてないんやって!笑〉
〈ニートの無職ん:マジで情報量が多い! 少しは加減しろ!w ってかちゃんと説明しろ!ww〉
〈やが灰のファンである:何の作業してんのか説明してくれんのかと思ったら……いや今そっちの話?!笑〉
「だからさ、この『七矢の弩』が欲しいなって思って、さっきの感じの戦いなら自分もいけるぞって考えて挑むつもりの人が、もしもいるんだとしたら……その時は気をつけてね。本来はあんな簡単じゃないからさ」
続いて『七矢の弩』と、またまた透明の球を一緒に釜の中に入れるやっさん。
「あそこさ、天井や上の方の壁辺りにかけて、ボロっちい建物みたいなのが張り付いてたじゃん? そんで、コイツ——〝黒套〟って、なんかワイヤーみたいなの出してビュンビュン移動してたでしょ? だからね、本来はああして、あの辺の建物の影に隠れながらコソコソと『七矢の弩』を使ってめっちゃ邪魔してくんのよね」
ボフン——蓋を開けてみると、今度は透明の球が無くなり、『七矢の弩』だけになっていた。
そこに先ほど作った青い球を入れて、また蓋をするやっさん。
「あ、そうそう——あと、言い忘れてたんだけど、この〈不死ダンジョン〉って、実は全体を通して、とある『領域効果』が働いていてさ……それが、【飛行禁止】と【上昇負荷】なんだけど。
飛行禁止は、そんまま『空を飛べなくなる』効果で、上昇負荷の方は、地上から一定以上の高さまで飛び上がると途端に勢いが落ちちゃうから、『一定の高さまでしかジャンプできなくなる』って効果なんだよね。
んでまあ、この二つがあるせいで、本来はあんな上の方にある建物とか、なかなか利用できないんだけど……ジャンプじゃなくてワイヤー移動なら可能とかいうガバガバ判定だから、〝黒套〟だけはああやって自在に移動できちゃうんだよねぇ……。
それもあってホント、普通はかなり厄介なんだよね——っと、出来たね、ひとまずはこれで完成だよ!」
ボフン——と言ってから開いた釜の中からは、青い球に宿っていた【自動追尾】を宿した『七矢の弩』が取り出されたのだった。




