第14話 ⑦——「激ヤバな魔眼の効果!」
『“夜王の瞳”』
やっさんの紅の魔眼に射抜かれた——使い古したような黒の外套が強者の気配を滲ませている——その幽骸骨は……ややあって、おもむろに頭を垂れると、その場に跪いてみせた。
「はい——というわけでね、これがボクの新たなる〝魔眼〟の効果だよ。そう……ご覧の通り、この魔眼と目を合わせた相手は、たちまちのうちにこのボクに完全に支配されて、どんな命令にも意のままに従うようになるってワケさ」
〈ニートの無職ん:サラッと言ってるけど、普通にめっちゃヤバい効果で草〉
〈やがてファンになる:いやこれ……マジぃ??! そんなん……ヤバ過ぎるッピ!!!?〉
「ま、それで、なんで今回この魔眼を選んだのかというと……せっかくテイマーのソラとのコラボだから、ボクも似たような感じのアレでやったら、お揃いだし面白そうかなってのが一つと……後はまあアレだね、ボクが直接的に手を貸したら取得魔力量的な問題が出てくるんだけれど、でもこんなふうに支配して操ってるモンスターで加勢する分には、それってあくまでもモンスターの仲間割れ扱いでボクの参加とは見做されないから、ソラの育成的にも都合がいいって部分もあるからなんだよね」
〈ツッコミ番長:ああなるほど、これはテイマーを真似してみたってことなのね……って、そんな簡単に納得できるワケなくない???笑〉
〈やが灰のファンである:え、ヤバい、夜叉姫さんの言ってることが何一つ分からないんだけれど……これってオレがおかしいんか?〉
〈探索兵長:まさか姫の口から、経験値分配の抜け道としてそんなクレバーな発想が出てくるなんて……まったく読めませんでした、この兵長の目をもってしても……!〉
〈流浪の探索者:サラッと魔眼を〝選んだ〟とか言ってるの……ワイは聞き逃さなかったで(震え小声)〉
〈†漆黒の堕天使†:素晴らしい詠唱……凄まじい魔眼の威力……! もはや進化が止まらないな、†深淵の†〉
〈やがてファンになる:はえぇ、そうなんすかぁ……ってボケっと聞いてたら、その裏では、なんかソラちゃんがすでにガッツリ戦闘準備やってますね? えっと、これは陣地作成中ですかな??〉
やっさんが魔眼の効果を説明したりと視聴者とやり取りしている間に、私はこれから始まる戦闘に備えて、少しでも有利に立ち回れるように準備していく。
『“地形の操作”』
ハナちゃんの『地魔法』で地面の形状を変化させ、闘技場を完全に分断するように、相手から見て手前側に空堀を——そして、その後ろに切り立った高台を同時に形成していく。
その作業が終わりきらないうちに、私たちが入ってきた反対側の壁にある仕切り扉が上に開いていき……そこから多数の幽骸骨が次々に闘技場へと侵入してきた。
それら一体一体の強さは——やっさんの魔眼に従わされたことで、今や私たちと肩を並べて高台の上に立っている——黒い外套の幽骸骨ほどではなさそうだけれど、属性的な相性が良くても決して油断できる相手ではなさそうだ。
今回出てきた幽骸骨たちは十を数えるほどで、皆が何らかの近接武器を携えている。
「りんちゃん、お願い!」
「っ——!」
そんな骸骨戦士たちは、飛び出してきた勢いのままこちらに襲いかかってこようとしたけれど、空堀の前で動きが止まる。
『“聖属性の付与”』
その隙に私は、りんちゃんの『精霊魔法』で聖属性を付与してもらった魔法の杖を構えると、魔力を練り上げ、その武技を放つ。
『“聖なる理力の大矢”』
不死種の弱点である聖属性を追加された魔力弾が、私の持つ杖から発射され——
ピュイン——ズガァッッ!!
軍団先頭の骸骨戦士に命中し、大きなダメージを与えた。
「いいよいいよぉ、そのまま地の利を活かしてバンバン一方的に撃っていこう!」
やっさんの掛け声に従い、それからも私は連続して魔法攻撃を撃ちまくる。
『“聖なる理力の矢”』
それに加えてりんちゃんも、私と同じように自前の『精霊魔法』でバンバン攻撃していく。
空堀に阻まれて手をこまねいている骸骨戦士に対して、高所から見下ろしつつ一方的に撃ちまくり、次々に仕留めていく私たち。
しかし、相手も自分たちの半数以上が倒された頃には、もはや黙ってやられるばかりではなくなり、助走をつけてから飛びかかって攻撃してくるものや、手持ちの近接武器を投げつけてくるものが現れる。
とはいえ、幅跳びではこちらまで到達できるものはおらず、皆そのまま空堀に落下してしまったし……
『“水盾防御”』
投げつけられた武器も、ウェンディが展開した水の盾に止められ、そのまま絡め取られて奪取されてしまった。
こうなってしまえば、後は消化試合とばかりに……
残った数体もそのまま、私とりんちゃんの攻撃ですべて倒されたのだった。
「はあっ、はぁ……やりました、やっさん」
「お疲れさま。はいこれ——魔力回復薬ね。ささっ、グイッといっちゃって」
「……本当にいいんですか? ここまでしてもらって……」
「いいってことよ。余り物をお裾分けしてるだけだから」
「そういうことなら……遠慮なくいただきます」
〈やが灰のファンである:おおやった! ソラちゃんと妖精ちゃんだけで全部倒せたやん!〉
〈探索兵長:地の利がバツグンに効いてますね。いやはや、お手本のように見事な地魔法の使い方です〉
〈流浪の探索者:最初はまずザコからか……と思ったけど、そういや夜の字が魔眼でアレしたアイツもいたんだったか。アイツが普通に敵のままやったら、こうアッサリとはいってなかったんかもやな〉
ひとまず第一陣は、わりとアッサリ完封できた。
しかし、あくまでもさっきの連中は長い戦いの始まりに過ぎず、この戦いは回を追うごとに激しさを増していくらしいし……そもそも本来はもっと難しい戦いになっていたはずなので、まだまだ安心するには早過ぎる。
マナポーションの効果で回復していく魔力を感じながらも、油断することなく目下前方の入場口を見つめていたら……魔力が回復しきる前に、新たな敵の軍団が出陣してきた。
続いての敵集団は、数もさっきよりいくらか増え、装備も武器だけではなく防具も身につけ充実しており、しかも隊列を組むように出てきた後ろには、先ほどとは異なり弓や弩といった遠距離武器を構えた後衛まで揃っているのだった。
やはり空堀前で止まる前衛陣よりいくらか距離を置いた後方から、後衛の射撃隊が矢弾を放ってくる。
『“水盾防御”』
しかしそれらはことごとく、弓の存在を見た時点で準備していた水の盾によって防がれる。
『“聖なる理力の大矢”』
そしたら次は私たちの攻撃だ。
お返しとばかりに聖なる追尾弾をお見舞いしてやれば——後衛は耐久力が低いらしく、一撃で一体ずつ仕留めることができる。
そうやって早々に後衛を仕留めてしまえば、あとは先ほどの焼き回しだ。
結局は今回も、空堀とそり立つ高台を攻略できなかった前衛たちは、そのまま成す術なく私たちに殲滅させられた。
しかし……そんな感じで今のところ順調な戦況とは裏腹に、今までこんなに短時間にたくさんの魔法を使ったことがなかった私は、早くもヘトヘトになってしまっていた。
——いくらマナポーションがあるとはいっても……いや、そもそもそのマナポーション自体、私にとっては高価なアイテムだから、今までもほとんど使ったこと無かったし……まさか、魔力を回復しつつ使いまくるのがこんなにキツいものだとは……し、知らなかった……
確かに、これだけやれば私の魔力も存分に鍛えられることだろうし……それがひいては、私の天恵である【使役】の成長にも繋がるだろうというやっさんの言にも、今なら大きく頷ける。
ここまでは順調に自力で敵を倒せていることに、確かな手応えを感じつつも……
同時に私は——今回、やっさんに突きつけられたことで、否が応にも向き合うことになった自分の〝弱さ〟についてを、改めて痛感させられていたのだった……。




