第14話 ⑤——「二度目のコラボ配信開始!」
「どうもみなさん、こんにちは……とある配信のリスナーとしては〝やが灰〟と名乗っていた、昏虚ソラスです。
えー、ついに今日から、事前告知していた特大コラボ企画が始まります!
そうです! 今や超有名人の、あの御方とのコラボ配信です!
というわけで、さっそくお相手の彼女——今まさに話題沸騰中の……夜叉姫さんに登場してもらおうと思います。——どうぞ!」
〈やが灰のファンである:うおおぉぉ〜! 待ってましたぁ〜〜!!〉
〈やがてファンになる:まさかソラちゃんが夜叉姫さんのリスナーで、しかもオリメンだったとは……めっちゃ驚きましたw!〉
〈ソラちゃんのファンである:いやしかし、長年謎だった固定リスナー名の由来が、まさかあんな形で明かされることになるとは……思ってなかったっすよw てか、すでにやが灰バージョン使ってるヤツおるやん早っww オレも変えよっかな?笑〉
そう配信開始の口上を述べてから、私がドローンカメラをそちらに向けると、そこには吸血鬼バージョンのやっさんが堂々と——壁に寄りかかった状態で、組んだ腕の中で片手の二本指を上げる謎のポーズで登場してくれる。
「やあ、みんな……ごきげんよう。今宵もまた、この夜叉姫様による深淵なる配信の時間がやってきたのだよ。
そう……今回は前回に引き続き、またまたコラボ配信をやっていくよ。相手はボクの〝観測者〟であり、また古参ファンでもあるところの、やが灰——ではなく、昏虚ソラスくん——改め、ソラだよ。
そしてこのボクも、今回はソラとのコラボに合わせて、サプライズで大幅にイメチェンしてきたからね〜驚いた? ビックリしただろ〜?
これぞボクの新ビジュアル——〝吸血鬼〟バージョンの夜叉姫様とは、今のボクのことだ!
というわけで……ソラとのコラボ期間中は、この吸血鬼バージョンでやっていくつもりだからね〜、そのつもりでよろしく〜!
もちろん、変わったのは見た目だけじゃないから、そっちにも期待しててよね。
それこそ、新たな〝魔眼〟のお披露目もあるから、楽しみにしていたまえよ!」
〈ラブ夜叉姫@好き好き大好き♡ズッキュン♡キュン♡:うひょ〜ヴァンパイアばーじょんの夜ちゃんサイコ〜!! 私も血を吸われたぁい♡〉
〈探索兵長:ええっ、なんですかこれ!? イメチェン?! いや、もはやそんなレベルでは……え、てか待って顔が良すぎてしんどい……っっ〉
〈ニートの無職ん:まーたコイツは初っ端から意味不明なインパクトぶち込んできたな……www いやアンタ、有名になってから整形するのは普通、順序が逆では?笑〉
〈もっこり助兵衛:……………………エンッッッッ(あまりにも唐突に極上ビジュを過剰摂取してしまい尊死)〉
〈†漆黒の堕天使†:……君を観ていると、いつも驚かされる……流石だ、†深淵の† ああ、魅せてくれ、新たなる魔眼の輝きを……!〉
〈流浪の探索者:これは……たまげたなぁ……何がどうなってんのか全然分からんけどスゲェ!笑〉
〈やが灰のファンである:えぇ夜叉姫さんってこんなだったっけ???www マジで何これ?ww 待ってこんな美少女見たことない!! ヤバいこんなんっもはや確実に夜叉姫さんのファンにもなるなる絶対なるぅ〜〜!!笑〉
〈やがてファンになる:あまりにもびっっっしょうじょすぎて、やしゃひめさんのチャンネルにもそっこーでとうろくしました!!!!〉
するとさっそく、劇的に変化したやっさんを見たリスナーたちが、大いに盛り上がっていく。
「じゃあ——挨拶も終わったし、さっそく今回のコラブ……コラボの、大まかな概要を説明していくよ」
〈ニートの無職ん:噛んだな〉
〈探索兵長:噛みましたね〉
〈MS管理人R:意外と緊張してるん?ww〉
〈アンチ太郎:大まかな概要って意味被ってるだろ。いや、そんなことより……吸血鬼バージョンとやらの詳しい説明は無しか? またなのか? お前視聴者舐めてんだろ??〉
「……」
〈ツッコミ番長:ワァ……さっそく黙っちゃったァ。。。〉
〈アンチ二号:いやアンタさぁ……コラボ相手が知り合いのやが灰だからって、最初からやりたい放題し過ぎでしょ……何もかもが雑すぎ!!〉
「……もう! 細かいことをグチグチ言うんじゃないよ! せっかくのやが灰との楽しいコラボ配信なんだぞ! 気楽にやって何が悪いんだよぉっ?」
〈ニートの無職ん:夜叉姫、キレた……!ww〉
〈やがてファンになる:すごい……これが夜叉姫さんの配信か……始まったばかりなのにもうめちゃくちゃww〉
「あ、あの、やっさん……ここは私から説明しましょうか?」
「うん、そうだね……じゃあソラ、お願い」
「は、はい。それでは……まずは最初に、今回のコラボの大まかな流れをお話ししておきますね」
〈ニートの無職ん:最初からそうしておけばよかった定期〉
〈ねっこ寝子:やっぱいいなぁ、やっしゃんとコラボで直接会えるなんて……やが灰が羨ましい〉
〈☆脳空◎:ムムっ!? のあさんレーダーが親密度の上昇を探知! コイツらいつの間にか、お互いの呼び名が変わっとるぞい!?〉
〈やが灰のファンである:あれ、そういや今気づいたけど、ここっていつもの精霊ダンジョンじゃないよね? え、でもテイモンたちもみんな揃ってるじゃん……え、え、ドユコト?〉
〈やが灰のファンである:もしかしてソラちゃん、ついにダンジョン移動したの?〉
「えっと……実は、そうなんですよ。ここは通称『不死ダンジョン』と呼ばれている場所の〈中層・深域〉で……今日の配信は、ここでやっていこうと思ってます」
そう話し出した私は、それからリスナーに対して、やっさんと話し合ってざっくりと決めた、今回のコラボでやることを説明していった。
前から私の配信を観てくれているウチのリスナーはともかく——相変わらずやっさんはミュート中なので、その存在は本人には見えてこないとはいえ——やっさんのチャンネルのリスナーは私の事情を知らないだろうので、それも含めて掻い摘んで話していく。
今回のコラボで、やっさんは「私がぶつかっている壁」を乗り越える手助けをしてくれると言った。
しかし、それについては……やっさんの手引きにより、こうして別のダンジョンに使役獣ごと連れてきてもらった時点で、すでに達成しているとも言えた。
——本当に……とんでもない方法でここまで来てしまったので、いまだに戦々恐々としているくらいなのだけれど……
そうして実にアッサリと、長らく私を苦しめてきた悩みを解決してくれたやっさんには、すでに感謝してもしきれないくらいの恩を受けているというのに……
この程度は、まだまだ序の口とばかりに——やっさんはそうして、私の探索者としてのゆく道を切り開いてくれただけでなく、さらには、その道を一気に駆け抜けていく方法を手取り足取り教えてくれるばかりか、しまいには、手厚いサポートまでしてくれると言うのだから……もはや一生頭が上がらないというか、永遠に足を向けて寝られない。
この〈不死ダンジョン〉に来たことで、すでに私の行き詰まりは解消された。
ここは名前の通りに不死種モンスターばかりが出るダンジョンであり……中でも〈中層〉以降は幽骸骨が主な敵となる。
この幽骸骨は——炎・聖属性が弱点なので——私たちのパーティーとかなり相性がいい相手であり、これまでの〈精霊ダンジョン〉と比べたら、同じ〈中層〉でも私たちにとっては攻略難易度が全然変わってくる。
ここでなら……今までとは違い、存分に同格の敵を倒して実力を上げていける。そうして一定のレベルを超えられたら、また以前の〈精霊ダンジョン〉に舞い戻っても、問題無く探索を続けることすら出来るようになるだろう。
——移動の問題についても、やっさんの協力があれば解決したようなものだから……もはやどこかのダンジョンにこだわる必要もないのかもしれないけれど。
とはいえ、今回このダンジョンを選んだのは、私たちと相性がいいというだけではなく、他にも理由があった。
その理由の一つが、「装備をドロップして手に入れやすい」というもので……
これは、今回のコラボ配信で達成しようと掲げられた〝三段階の目標〟のうち、最初の三つの「小目標」の一つである、『私の装備を充実させる』にも合致しているということで、やっさんが選んでくれたのだ。
そう……やっさんとの事前の話し合いにより、今回のコラボ企画における目標というものが定められたのだけれど……それはまとめると、こんな感じになっていた。
まず全体としては、「小目標」「中目標」「大目標」の三段階に分かれていて、それぞれの段階を踏んでいくことで、より大きな目標が達成されるという手順になっている。
まず初めの「小目標」は、以下の三つとなっている。
・「使役容量を増やす」
私の天恵である【使役】の能力を鍛えて成長させ、同時に使役できる使役獣の数をさらに一つ増やす。
・「新たに(強力な)モンスターをテイムする」
新たに増えた枠へ迎えるに相応しい強力なモンスターを調伏・使役する。
・「私の装備を充実させる」
私自身が強くなるために、強力な装備を集めて実力を底上げする。
この三つの「小目標」を達成することで、私の実力は飛躍的にアップすることになる。
そうしたらいよいよ、次の段階である「中目標」の二つに挑戦していく。
◯「独力で〈中層・中域〉の境界主を倒す」
今の私の適正実力帯である〈中層・中域〉を突破するため、自分たちの力だけで〈中域〉のエリアボスを討伐し、〈中層・深域〉への切符を手にする。
◯「〈中層・深域〉の攻略を進めていき、終界主へと到達する」
中層を抜け、〝下層〟に至るために……〈中層・深域〉を探索し、エンドボスが待つ中層の最深部にまで攻略を進める。
この二つの「中目標」を達成したら、ついに最後の「大目標」に挑戦して、コラボ配信はフィナーレを迎える。
☆「〈中層〉の終界主を自力で倒し、〝下層〟へ到達する」
エンドボスを倒し〈中層〉をクリアして、中級探索者を卒業……ひいては上級探索者への仲間入りを果たす。
とまあ……こんな感じの予定になっている。
改めて見返すと……こんなの、どう考えても配信コラボ企画でやってしまうようなレベルの大躍進ではないと思う。
しかし、当のやっさんはこんぐらい楽勝って感じの反応だったから、結局は押し切られてしまった形だ。
もちろん私としても、色々と思うところはあるのだけれど——その胸の内の多くを占めているのは、自分がちゃんと期待に応えられるのかという不安だ——しかし、他でもないやっさんが私のために協力してくれているのだから、文句なんてあるはずもない。
私が一通り説明を終えると、リスナーの反応も概ね私と同じような感じだった。
すなわち……そんなんマジでやれんの? ——っていう……
〈やが灰のファンである:いやぁ、なかなか……思い切った目標を打ち出しましたね?!〉
〈やがてファンになる:まあ夜叉姫さんがついてるなら、いずれは達成できるんじゃないかとは思いますが……ぶっちゃけ、かなーり時間かかると思いますけどね??〉
〈探索兵長:普段の姫の配信とはかなり毛色が違って、話を聞くに、なんだか後進育成めいてきましたが……これはこれで、普段と違った姫が見られそうですし、それはそれで楽しみですね〉
〈流浪の探索者:確かに、他者の育成となると、これまでみたいに勢いと力技で解決ってワケにもいかないやろうし……ここは夜の字の手腕に期待やな!〉
「まあまあ……任せておきなって。いわば今回のボクは、発案者であり、後援者であり、助言役なのさ。大船に乗った気でいてくれればいいよ」
「は、はい……よろしくお願いします、やっさん」
そんなわけで、私の強化育成コラボ配信企画がスタートした。




