第11話 御剣さん家の、ダラ姉とギャル妹
「おー、バジリスクも何とか倒したかぁ。最後はせっちゃんがめっちゃ活躍してたなぁ。——まあなんか、かなり無理してたっぽいけど……。にしても、ゆーじんのやつ、ぜんぜん活躍してなかったじゃん。——やれやれ、我が弟ながら、なんとも情けないヤツじゃ……」
「ん、アレ、みっちゃんも兄ぃの配信みてたんけ?」
「おお、あーちゃん。そういうオメーもかい?」
「もち。なーんだ、だったら一緒に観よーや」
「いーよん」
一階のリビングルームにて、昼間っから酒を飲みつつおツマミ片手に愚弟のやってるコラボ配信とやらを暇つぶしに眺めていたら、自慢の賢妹がふらりとやってきたので、一緒に配信を観ることになった。
「あーちゃんも最初から観てたん?」
「んだ」
「ほぉん……」
「みっちゃんも〜?」
「そだよー、まあ何やかんや、ちゃんと最初の夜叉姫ちゃんの配信から観てるよー」
「夜叉姫ちゃぁん——いや、〝やしゃっち〟ダナ」
「……あーちゃん的には、夜叉姫ちゃんのこと、どー思った?」
「やしゃっち……いいよね、あーしもうファンだワ」
「そ、そーか……いやうん、それで、強さとかそっちについては? ぶっちゃけ——自分より強いと思う?」
「んえぇぇ……? そんなコトは、ジッサイに会ってみらんと分からんっすねぇ……」
「まあ、そーか」
「じゃけん会いたいっス! ……どーにか会える方法、ナイんすかねぇ?」
「えー、どーだろ……ゆーじん経由でなんかこう、紹介とかしてもらえば……ワンチャンいけるかも?」
「おし、兄ぃが帰ったらさっそくお頼みしよ」
まあ、さすがのあーちゃんでも、画面越しに観ただけじゃ分からないっかぁー……
とはいえ、アタシの見立てでは、夜叉姫ちゃんって完全にコッチ側なんよねぇ。
——姫巫女ちゃんはともかくとして、他とは明らかに実力差があり過ぎて、もはや完全に〝引率の先生〟になってんの、マジで観ててウケる……笑
あの様子だと、〝深層〟はすでに踏破していると思うし……下手すりゃ、さらにその先にまで行っちゃってる可能性もある。
「お宝開封〜からの分配〜で、ま〜た揉めてんのウケる〜。ま〜でも、隠し部屋のボスってゆ〜だけあると思わん? 深層級にしてはなかなかい〜もん出てんだワ〜」
「いやそれなー。〝蘇生の宝珠〟とか、深層浅域でも出たんかーって感じ」
「兄ぃはまーたドロ剣狙いやん、好きねぇ〜」
「けっきょく今回も、夜叉姫ちゃんは何も取らないのねぇ……深層級なんて眼中に無さそーだし、こりゃあ完全に〝もっと先〟行ってんな」
「だよね? そ〜だよね? あーしも気になるっス……やしゃっちって、イマどの辺まで深ってんだろ〜」
ドロップや宝箱の分配を終えたら、一行はすぐに先へと進み、次はいよいよ最終目標であるヒュドラに挑む……その前に、もはや恒例となっている事前の打ち合わせを始めた。
「せっかくだから、なんか賭けなーい? どっちが勝つか——は、分かりきってるから……そーね、誰がヒュドラにトドメを刺すか、ってのはどーお?」
「あーしはダンゼン、やしゃっちに賭けるなり!」
「……その心は?」
「イイ感じのドロップを出すためでごわす」
「ふーん……?」
「バジリスクも最後はやしゃっちが倒してたケド、アレもたぶんそのためっスね〜。だって、その方が配信が盛り上がるし!」
「…………あー、つまり、夜叉姫ちゃんってレアドロップ率アップ的な装備持ちとかだから、自分が倒した方が良いアイテムが落ちるって話?」
「そだよ? これまでもやしゃっちが倒したヤツは確実になんかイイモン落としてるし〜、だから今回も何やかんやいって最後のトドメは自分が狙ってるハズ!」
「あーね」
天才肌の妹の言うことにゃ、このおねーちゃんにもすぐには理解できないものがちょくちょくある……
言われてみれば……確かにそうだった。明らかにドロップ率がおかしい。確定ドロップの魔石はともかく、素材や武器なんかはそうそう落ちるものではにゃー。
配信的には、そりゃあレアドロ出た方が取れ高美味しいワケだから……じゅーぶんあり得る話だ。
にしても、あのヒュドラのレアドロかぁ……なーにが出るんだろ?
「てか——ふふっ、打ち合わせ地味に長いなぁ……まー最後だし、念入りに段取りとか決めてるんかねー。んー、ヒュドラ戦かー……このメンバーなら、ぶっちゃけぜんぜん楽勝だと思うけどー、だからこそ気になるかもなぁ。いったいどんな演出で戦うつもりなんだろ〜?」
「あーしちゃんとしては、やしゃっちの魔眼がまた観たいなりぃ〜」
「あれね〜。……つーか、あの魔眼ってさー、いやまあ、フツーにアレが夜叉姫ちゃんの天恵なんだよね……? あーちゃんはどー思う?」
「……あーしちゃんの推理だと、その可能性は79%くらいデス」
「んふっ、ふふ……いや何ソレ? 残り21%は何?」
「つまりはそれだけ、ギフトじゃない〝何か〟が含まれてマス」
「……〝何か〟——ねぇ……」
アタシ自身の固有能力も大概だから、人のことは言えないんだけれど……それにしても、夜叉姫ちゃんのあの魔眼は強力だ。
あんな能力を最初から持ってたんだとしたら、そりゃあアレだけの強さにもなれると——自分のことを棚に上げて——思っちゃうところだけれど……
でもなぁ……どーにもチグハグなんよねぇ。
普通、あれだけクッソ強い能力を手に入れたら……いや、手に入れてしまったら、それに頼りきりになったり、増長して基礎を疎かにしてしまって……けっきょくは大成できない——なんてことは、よく聞く話だ。
——アタシのようなヤツは、むしろ例外といえる。
だけど、あの夜叉姫ちゃんは、むしろ基礎能力もバリバリ高そうなんだよねー。
そもそも今回の探索風景を見てても、魔眼とか無しでもぜんぜん余裕で攻略できますって感じの雰囲気がアリアリだしー。
——使った一回のバジリスクのアレとか、普通に要らんかったし。あれはそんままやってても倒せてたわ、三人でも余裕で。
魔眼に頼りきりじゃ先がないと自分で悟って、どこぞのタイミングで自ら封印でもしたのか、あるいは……
んー……やっぱり気になるー夜叉姫ちゃんー……っ!
「お、いよいよ始まるか——って、おいおいおいおい……! なんじゃそりゃあ……っ!!」
「あははははっっ!! すっっげーすっげぇー!! マジで派手すぎぃ〜!! お祭りやん!?」
「オイゆーじん?! お前さんが技名叫ぶところなんて初めて観たぞ!? 実はノリノリじゃねーか! ぎゃははっ!」
「カイザァァァ!? オメェそんな派手なワザ使えたんかいっ!? んっふふふっ! 技の名前も皇帝やんけ! マジなんウケるってぇ〜!」
「いやマジか、これマジか……このまま一気に終わらせるつもりなんかっ……!?」
「合体奥義はロマン!! いいぞっ! そうだッ、すべてを出し尽くすんだよォォ〜ッッ!!」
「いけるなぁ、いや、いけちゃうなぁ〜! まあそうか〜、これだけのメンバーが揃えば、そりゃあいけるよなぁ〜……!」
「あーもう終わるっスねぇ。さぁ誰がラスト飾る? トドメは誰? ラス1の首を取ったのはぁ〜〜〜——やっぱり! やしゃっちで〜す! ブイ! 賭けはあーしちゃんの勝ちィ! ぶいぶい!」
「いや〰〰ヒュドラ瞬殺なんてマジ最高かよ〰〰! あー、笑いすぎて腹いて。——てかそーじゃった、賭けの賞品を決めてなかったなー。何がいい?」
「え〜、じゃあねー、帰ってきた兄ぃちゃんをガン詰めすンの手伝ってくれたら〜、それでヨロシ」
「そんなんでいーのー? むしろ願ったり叶ったりー。アタシも夜叉姫ちゃん気になってきたしー、二人でグイ詰めすっかぁー」
可哀想なゆーじん……ヒュドラをド派手に倒して配信は最高の締めを飾れたのに、お前の受難はまだまだ終わらんみたいゾ。
『……うぅ、何だろ? なんか今、悪寒がしたような……?』
『御剣、どうかしたのか?』
『いや、悪寒というより、これは予感か……? ——それも何か、悪い予感……あるいは、勘? これは、オレの超直感が、何かを告げている……?』
『おい勇、さっきから何をブツブツ言ってんだ? みんな待ってるぞ』
『ああ、悪い……すぐに行くよ』
——おやまあ、勘の鋭い弟だこと……伊達に勇者とか名乗ってねーってかぁー? はんっ、生意気な……。
ヒュドラを倒した面々は、出現したお宝やドロップを——また色々とかなり揉めつつ——分配したら、いよいよ配信もお開きになった。
最後に色々と締めの挨拶というか、今回の総括みたいな話をやっていたら、そこでもなんか意外な展開になって、最後にひと盛り上がりする一幕もあったりで……終わってみれば、なかなか盛り上がって面白い配信だった。
見れば、それぞれのチャンネルの同接数もかなりのもので、超豪華一大コラボ企画としては大成功だと言っていい数字を記録していた。
久しぶりに面白い配信を観れた満足感と、それが終わってしまった寂しさがないまぜになったことで、何とも言えない侘しさに包まれつつ……
とはいえ、それからアタシは——帰ってきた可愛い弟にウザ絡みするという——楽しい予定についてを考えることで、すぐに気分を持ち直したのだった。




