第10話 ③——「〝奥義〟連携RTA!!」
「——さて。それじゃ今から、いよいよ最終目標たるヒュドラと戦うけれど……これが最後だから、ド派手にブチかますからね! これから魅せる一大決戦は——もはや、すべてが見どころ……瞬き厳禁、豪華絢爛な〝必殺奥義〟の大連発だよ! ——それじゃみんな、準備はオッケー?」
「おうよ!」
「バッチリさ!」
「いつでもどうぞ!」
夜叉姫さんの号令を合図に、私たちは一斉にヒュドラが待ち構える闘技場の中へと——大扉を開いて飛び込んでいく。
ザッ——!
すると、真っ先に広場へと飛び込んでいき、その勢いのまま特大武器の槍の切先をヒュドラに向けて構えたのは、先陣を切った夜叉姫さんだ。
「まずはボクからいくよっ……最後に残った、まだ見せていない槍の奥義を、今こそ放つ! 喰らえっ——〝飛天・真空・一閃突き〟ッッ!!」
ボヒュッ——ビュン——パシュンッッッ!!
勢いよく突き出されたハルバード——その先端にある槍の穂先から飛び出したのは、目にも止まらぬ速度で空を切り裂き突き進む〝真空の刃〟で……それはそのまま、狙い通りに〝結界〟の能力を持つ首に命中し、その頭部を一撃で消し飛ばしてしまう。
「お次はわたくしですね……! ではいきます! 貫きなさいっ——〝螺旋・穿孔・貫通射ち〟ッッ!!」
ギュルルルッッ——ビュン——ザシュゥッッ!!!
続いて、広間に入ってすぐの場所で弓を構えていた姫巫女さんが、鋭く回転する術式を付与され貫通力を大幅に強化された必殺級の矢を放ち、これまた一撃で次なるヒュドラの頭を吹き飛ばす。
「次はオレだなっ! いくぞっ、斬り裂けっ——〝裂帛・雷火・風神斬り〟ッッ!!」
ボワァッバチチチィッッ——ビュオッ——ズガァァァッッッ!!!
さらに続いて、我らがリーダーである御剣さんが——すでにヒュドラの目の前に辿り着いていた夜叉姫さんが、さりげなく〝黒星球〟で目印を付けていた一頭に向かって——事前に最大まで溜めた魔力を込めた剣を振り抜くと、そこから炎・風・雷の三重属性を宿した〝飛翔する斬撃〟を放ち、三つ目となるヒュドラの頭部を吹き飛ばしてみせる。
「ぅぅオラァっ! 続いてオレ様の番だぁ! 目にもの魅せっぞぉ! はあぁぁぁいっくぜぇっ——〝昇天・皇帝覇道拳〟ンンンッッッ!!!」
パアァァンッッ——ブオォッ——ドッゴォォォンンンッッッ!!!
さらにはカイザーさんが、これまた全力を込めた拳を——〝黒星〟の目印めがけて——勢いよく振り抜くと、解き放たれた〝天翔る拳撃の波動〟が四頭目のヒュドラに激突し、その首から上が丸ごと弾け飛ぶ。
っ、きたぞ……次はいよいよ、私の番だ——!
「私の番、ですね……では、いきます! すぅぅ……ふっ——〝一の太刀・居合・一刀・閃空斬り〟っっ……!!」
腰に差した刀の一つ——〝名刀 月華美刃〟に添えた左手で鯉口を切り、そのまま居合抜きの形で、一閃……
——その戦技は、彼我の間合いを無くし、遠くの敵をその場に居ながらにして斬り伏せる——
最大限に込められた魔力を乗せた、全身全霊の一撃は……狙い過たず、黒き御印の付いた頭に炸裂し——一刀両断、その太首を完全に斬り飛ばした。
キンッ——ザンッッ——ズッッバァッッッンン!!!
っ! 良かった……成功した……!
私の実力でも、あのヒュドラの首を、なんとか一撃で斬り飛ばすことが出来た……!
その喜びに浸る間もなく——各々の〝奥義〟を連発することで、開幕から一気呵成に畳み掛けた境界主戦が、いまさらながらに動き出す。
『“豪炎息吹”』
「ッ、青蘭——!」
『“強化防炎障壁”』
いよいよ攻撃を開始したヒュドラ——その口から吐かれる灼熱のブレスは、一番近くで真っ先に狙われた夜叉姫さんに届く前に、彼女の周りに展開された障壁がしっかりと防いでいる。
「——それから赤武、貴方も出番です! さあ、今です……〝奥義〟を派手に見せつけなさい!」
「おぉ、助かったよ——ありがとう、姫巫女ちゃん! お返しじゃないけど、あの〝黒光り〟はボクが対処するから、思いっきりぶっ放しちゃって!」
「夜叉姫ちゃん——ええ、そちらはお任せします! ……では、赤武よ、いざ、解き放ちなさい……〝奥義開帳〟——〝日輪・鳳凰・赤十字斬〟ッッ!!」
その姫巫女さんの掛け声に合わせて、赤い甲冑に身を包んだ鎧武者の式神が、腰の大太刀——〝霊験刀 日輪鳳凰丸〟を引き抜くと、切先で大きく弧を描くように振りかぶっては、振り下ろしていく……
ボボボボボッ——
そうして宙に描かれるのは、まさに〝日輪〟が如き炎の輪であり……
さらに続いて彼は、その日輪の中心に対して、斜めに十字を描くように、その霊刀を素早く二度、閃かせる——
ビュ、ビュン——
すると、まさに丸の中にバツが入ったような印が宙に浮かぶことになり……驚くのはここからだ。
なんと——そのバツ印がめくれあがるように開いたところで、そこから現れたる存在こそは、燃え盛る炎をその身に宿した瑞鳥であるところの……鳳凰なのであった。
ボワァッ、ボバァッ——
羽ばたきとともに盛大に焔を撒き散らしながら飛び上がった鳳凰は、そのまま勢いよくヒュドラへと向かっていき——
——途中、立ち塞がろうと〝黒光り〟が動いたけれど、夜叉姫さんがぶっ飛ばして邪魔立てを阻止する——
そのまま、黒い印の付いた一頭に突撃すると同時に、たちまち盛大に炸裂し……諸共に爆裂四散するのだった。
ボッッッバァァァァァンンンッッッ!!!!
おおおぉぉぉ……!
美しく洗礼された所作による演舞、神々しいまでに煌びやかな鳳凰、そしてあの、類稀なる天晴れな威力……!
……あれが、あれこそが、かの霊刀に秘められし奥義——〝日輪・鳳凰・赤十字斬〟……!
まさか、この目で直接、見ることが叶うとは……
特殊刀剣好きの冥利に尽きるとは、まさにこのこと……ああ、すごく、よき……
「さあ、これで残りは三つ! 畳み掛けるぞ! ——みんな、力を貸してくれ……!」
「おう!」
「ええ!」
「託します!」
「ああ! やってやれ!」
御剣の掛け声に合わせて——全力を出して疲弊してしまっている私を除いた——ウチのメンバーが、それぞれ応えていく。
——出るぞ……なかなか使う機会がない、勇者パーティーの〝合体奥義〟が……!
チームのみんなの力を受け取ったリーダーが、すべてを込めた究極の一撃を放つ……!
「みんなの力、受け取ったよ……さあ、見ていてくれっ——はあああっ——〝一心全力・万勇終結波〟ッッ!!!」
ビカァァァブワァァァァアアアアアッッッッ!!!!
そして、勇者の構える魔剣から、極太の光線が放たれて……
その極光が命中した——〝黒光り〟から〝回復〟に転じていた——その首を、綺麗さっぱり跡形もなく消し飛ばしてしまった。
「ははっ、さすがは勇者パーティーだな! おらっ、オレ様たちも負けてらんねぇぞ! お前ら、力貸せぇ!」
「「「「「おう!」」」」」
さらに続いてカイザーさんも、チームメンバーと力を合わせた合体奥義を発動する。
「これで最後だ……一欠片も残さず、すべてを込めてド派手にぶっ放す……! ——あとは任せたぞ、夜叉姫……! いくぜ、喰らえやぁっ——おおおおっ——〝全臣全礼・皇帝覇道砲〟ンンンッッッ!!!!」
ギュオオオオッッバギュゥゥゥゥンンンンンッッッッ!!!!
皇帝さんの構えた両腕から、これまた凄まじい威力を宿した極大の波動が放たれて……
最後に残った二つの片割れ——その頭部を悠々と飲み込んだ後には、もはや何も残っていなかった。
ただ一つ、最後の首を除いて。
「任されたよ、カイザー……最後の最後は、ボクの十八番で、バッチリ決めるからね! さぁ、これで終わりだよっ——〝黒星・磔刑・夜叉車裂き〟ッッ!!」
そう叫んだ夜叉姫さんは、手甲から〝黒星球〟を撃ち出して、最後に残った一頭に引っ付けると、それを手元に引き寄せつつ——強力な重力も併発させて——そのまま地面に横たえて縛りつけてしまう。
『“黒星重引地磔”』
さらにはそこから、彼女の代名詞たるその技を繰り出して……
グルグルグルッッ——ザシュッ!!
その強烈な回転斬撃により、実にあっさりと、最後に残ったヒュドラの首を一撃で斬り落としてしまった。
すべての首を的確な順番で落とされたヒュドラは、結局ただの一度も復活することはなく……その巨体を塵へと変え、はらはらと風に舞い、崩れ去っていく……
その光景を映し出すカメラの向こうにいるリスナーたちが——今まさに大興奮の最中にあることを表す、大量の声援に見送られながら……
不甲斐ない戦いを見せたバジリスク戦の雪辱を果たすかのように——華々しい奥義の連携による最速の攻略によって、コラボ配信最後のヒュドラ戦は……こうして、鮮烈に幕を閉じたのだった。




