第9話 ⑮——「お宝ドロップ目白押し!」
私の必殺技——「〝滝夜叉車——河川割り〟」により、大カブトのボスは体を真っ二つにされ一撃で倒された。
〈勇敢なる応援者:なんかもう姫巫女様やっぱSUGEEE!! これでモンスターハウスもクリア——って思ったら、えぇまだボスいたの?! でもこのボスも瞬殺お疲れ様〜ってまだ生きてるけど!? って思ったら……夜叉姫さんYABEEEE!! なんすかその技! 真っ二つじゃん!? てか地面も!! 地ぃが割れてまんがな!?〉
〈姫巫女様の親衛隊[¥35000]:さすが姫巫女様ですっ!! モンスターハウスも華麗かつ豪快にクリアですね——ってボス?! 往生際の悪い……でもどうせコイツも騰蛇様にかかればチョチョイのチョイ……じゃ、ない!? な、なんてしぶとい……まさか姫巫女様の本気でも足りないなんてそんなことはって夜叉姫さん!!?? ……おーわあ倒しちゃった!!〉
〈皇帝の臣民:もはやカイザーはおろか勇者も空気に……まあしゃーないわな姫巫女様には敵わん敵わん。なになにー、これが騰蛇っすかぁ〜ヤッバ何コレ、もはやモンスターハウスごと焼き払っちゃうやつですやん——ってボス? ……ウッソだろキミ生き残るんだぁ……ってぇ夜叉姫さんがボスとハウスにマジでトドメ刺してて草というか地割れww〉
〈ニートの無職ん:おいだから説明しろって言ってんだろ! なんでボスどころか地面までガッツリ割れてんだよ!?〉
〈もっこり助兵衛:「滝夜叉車 河川割り」……かな? 地面だけじゃなくて、川も割れるってコト?!笑 ……なんてね! 滝からの繋がりで川ってことダネ!?〉
〈探索兵長:さすがは姫ですね! 一対一ならやはり負け無し、素晴らしい……ところで、これは何かの技によるものですか? あるいはただの力技?〉
〈(・・?):なんで割れたの?〉
「ふぅ……いやぁ、アレだね。残りHP1でギリギリ生き残ってましたってカンジだったネ……さすがは姫巫女ちゃんダヨ……おかげで、ボクのハルバードの斧部分に宿る能力である【轟波断撃】の技を使うことで、簡単に真っ二つにして倒せたよネ。
ん? え? この技の説明が聞きたいって? これはね、『斬撃の波動というか衝撃が対象を突き抜けていって、最後まで貫通・分断させる』という技だよ。どこまで貫通するかは相手の硬さやこっちの実力によるんだけれど……今回は相手が死ぬほど弱ってたし、みんなの声援が力になったからバッチリ決まったよネ! みんな応援ありがとう!」
〈勇敢なる応援者:なるほど、やっぱりそこまで弱ってたんだ。でも……だとしてもすごいよ、あんなデカいボスを一撃で倒すなんて。普通はもっと慎重になるもんだろうし……夜叉姫さんこそ勇敢なる探索者だね!〉
——そうそう、そんだけ弱ってたんだよ(すっとぼけ)。
〈姫巫女様の親衛隊:やはりほとんどは姫巫女様のお陰というか手柄というわけですね。とはいえ姫巫女様を信じて迅速にトドメを刺しにいく決断力は素晴らしいと思います! それでこそ姫巫女様の隣で戦う資格があると言えるでしょう!〉
——まあ実際ほとんどは姫巫女ちゃんの活躍だったし、それで間違いじゃないよね。
〈皇帝の諫臣:ぱっと見はそんなに弱ってるようには見えなかったけど……それでも弱ってると確信して速攻をかけて、実際に一撃で倒しちゃうのは歴戦の探索者って感じするなぁ……やっぱり夜叉姫さんもスゴかったんや。まあ、一人で特に派手な能力も使わずに自分の担当方面を余裕で捌いてる時点で、只者じゃねぇとは思ってたけどね、俺は〉
——おお、あんな地味な活躍でもちゃんと評価してくれる人もいるんだ……ちょっと感激。
〈ニートの無職ん:クッソ適当なことをめっちゃ棒読みでほざいてて草 じゃあなんか? 地面も死ぬほど弱ってたってのかぁ?? おぉん??〉
——そ、そうだよ! 地面も炎浴びてたし、元から穴だって空いてただろ! ……まあ関係ないけど!
〈♡←(〃ω〃):そうそうよるピはこれでいいの♡これからもコラボ相手とか気にせずに敵は瞬殺しろ♡〉
——いやだよ♡ 盛り上がらないもん♡
〈†殺戮の使徒†:真っ二つぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!! ン気もちぃィィィィィィッッッ!!!〉
——これは盛り上がってるってことでいいのかな……? いいよね?
「さて……ボスも倒せたことだし、さっそく——いやそうか、まずは戦利品の回収だね。てか、さっきのボスもなんかドロップしてるし……まあ、こういうのはサクサク進めないとだよね。というわけで、今から一気にドロップアイテムとかバンバン回収していくから、みんなもちょっとした休憩くらいに思っててちょうだいね」
〈勇敢なる応援者:なんかドロップに対する反応かなり薄いっすね? 夜叉姫さん。普通ならもっとはしゃぐし、配信としても盛り上がる場面なんだけどな〉
え、マジ?
ドロップの回収に配信的な需要とかあったの?
だったら——適当にさっさと回収するか、なんなら無視して先に進もうかとも最初は思ってたけれど——ちゃんと配信しながら全部回収した方がいいのかな?
……ちょっと相談するか。
ちょうど勇者さんたちもこっちに来たし。
「夜叉姫さん……またまた驚かされたよ。まさか一撃で倒せるとはね」
「あ、うん。それはさっき言った通りに、ほとんど姫巫女ちゃんのお陰だよ」
「……まあ、君がそれでいいなら、オレたちも余計なことは言わないけれど……」
そう言ってチラチラと他のメンバーと視線を交わす勇者さんに、私はさっそく相談する。
「それで、この後はどうする? 大量のドロップとか、宝箱とか——後はボスからのドロップもあるけど……全部回収する?」
「そうだね、出来ればそうさせてほしいんだけれど……まずは休憩させてほしいかな。オレたちだけじゃなくて、姫巫女さんもだいぶ疲弊してるから」
「いや、休憩は必要無いよ。歩けないほど疲れてるってわけじゃないんでしょ?」
「そ、それはそうだけれど……」
〈ニートの無職ん:ナチュラルに鬼軍曹の言い分で草〉
「い、いや、そうじゃなくって……ここはクリアしたら、宝箱や転移陣だけじゃなくて回復魔法陣も出るから! それを使えばいいってことを言いたかったんだよ……」
「な、なるほど……回復陣が出るのか! それなら確かに、無理してでも先に使っておいた方がいいね」
そう言って笑顔でウィンクする勇者さんに私もウンウンと頷きつつ、それからさっそく私たちは件の回復陣の場所まで向かった。
モンスターハウスやボス部屋みたいな特殊なエリアをクリアしたら、クリア後に報酬が出現することがある。
宝箱がある部屋に繋がる扉だったりと……そういったものがスッと現れるのだ。
今回の場合は、元からある無数の穴のうちのいくつかが、そういった報酬置き場へと繋がっているので、私たちはまず最初に、回復陣が出現している穴に入っていった。
「本当にここにあった……すごい、よく分かったね?」
「ふふ、まあね。それじゃさっそく、みんな回復してよ」
穴を進んだ先には少し広くなった場所があり、そこの地面には複雑な紋様が刻まれていて、緑色の光を放っている。
これが回復魔法陣だ。
この魔法陣の上に乗ることで、怪我・体力・魔力が回復する。
使えば瞬時に万全の状態にまで回復できるので、そのまますぐに探索を再開できる優れものなのだ(ただし、基本的に一回の攻略で一人につき一度しか使えない)。
全員が回復魔法陣を使ったことで、モンスターハウスでの激戦を含むこれまでの疲労も全回復したところで、元気よく次の報酬部屋へと向かう。
お次に連続して向かったのは、宝箱がある部屋だ。
これも、特定の穴の先に宝箱が設置された小空間が出現しているので、三つある宝箱を順番に開けていった。
——うち一つの宝箱は罠付きだったのだけれど、カイザーのチームのメンバーが解除してくれたので、無事に開けることが出来た。
出てきたお宝の見分は後にするとして、お次に向かったのはドロップ置き場だ。
モンスターハウスみたいに大量のモンスターと連続して同時に戦う場合は、普通ならドロップアイテムの扱いが問題になる。
まあ、要は……最初に倒したモンスターが落としたドロップを拾う間もなく次が来てしまい、連続する戦闘に巻き込まれてドロップ品が紛失ないしは破壊されてしまうという問題が起きるのだ。
何らかの要因により大量のモンスターが集まってしまい、連続した混戦が起こるという——モンスタートレインのような状況だと、普通にそういう問題が起こるのだけれど……初めから大量に戦うことが決まっているモンスターハウスの場合は、ある特別な仕様があったりする。
それがつまりは、このドロップ置き場のことなのだ。
モンスターハウスの戦闘では、モンスターはドロップを落とさない。少なくとも、倒されたその時、その場では。
ではいつ、どこに落とすのかというと……「戦闘終了後に、専用のドロップ置き場にまとめて一気に落とす」のである。
この仕様のおかげで、モンスターハウス内での乱戦でもドロップを気にせず戦うことができ、終わった後ですべて回収できるのだ。
とはいえ……今回の場合は、その親切設計を逆手に取った悪辣な罠が設置されているんだけれどね。
大量の魔石やドロップアイテムが山となって積まれている小空間を前にして、私は立ち止まって注意喚起する。
「ここで止まって。気をつけてね……この先には転移罠が設置されているから、下手に入ったら別の階層に飛ばされちゃうよ」
「なっ、転移罠!? じゃあ、ここはトラップルームなのか……では、あのドロップは偽物?」
「いや、本物だよ。生き物以外には反応しないんだよね、ここの転移罠は」
「それじゃあ……」
「うん。気をつけて外から回収すれば平気だよ。それじゃ、ここはボクがパパッと回収しちゃうね」
『“黒星球体——黒星引力”』
腕装備の能力を使い、生み出した〝黒星球〟を部屋の中へ飛ばし、引力を発生させてドロップアイテムを漏れなく引き寄せてくっ付けると、すべてまとめてこちらに引き寄せて回収する。
「それは……確か、ヒュドラとの戦いでも使っていた能力だよね?」
「そうそう。ボクの腕装備である——〈黒星の手甲〉の能力だよ。黒い球——〝黒星球〟を生成・操作することが出来て、こんなふうに引力を発生させて引き寄せることも出来るんだ」
「ほぅ……色々と出来そうで便利だな。てか例のヒュドラ戦でもすげぇ役に立ってたし、かなり強い能力じゃねぇの? それ」
「確かに……武器ならともかくとして、腕装備の防具なのに、そこまで攻撃にも使える能力というのは、かなり珍しいですよね。それも、あれほど強力な効果となると……やはり、よっぽど深い層の装備なんでしょうか? あ、いえ、探るつもりでは無いのですが、お気に障ったなら申し訳ありません」
「ん? 別に気にしてないよ。それに、深い層っていうか……深層産の装備だよ、これは。というか、今のボクが身につけてる防具は、だいたい全部深層級のやつだよ」
「全身が深層級の装備か……どうりで強いワケだね」
うん……まあ、むしろ普段に比べると、かなりグレードダウンしてるんだけれどね。
「えっと、この大量のドロップも後で確認するから、まずは広いところに戻ろうか。——ごめん、先に行ってくれる? 下手にコレに近づくと、君たちも引き寄せられちゃうからさ」
「ああ、なるほど。了解。それなら悪いけど、そのドロップの運搬は頼むね」
それから最初の大空間に戻ってきた私たちは、そこで改めて回収したお宝を一気に確認していくことになった。
——とはいえ、ドロップは多すぎるから今は放置かな。
この場で見るものは、とりあえずは宝箱のアイテムとボスドロップくらいか。
それでは、お楽しみの確認タイムの始まりだ。




