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第9話 ⑨——「新たなる詠唱……進化する必殺技!」



『“大地震脚(グランシェイカー)”』


 牛頭鬼(ミノタウロス)の能力により、私はもはや振動の檻に閉じ込められたも同然。

 逃げ場など、もはやどこにもない……この空中以外は。

 ではどうするか——答えは簡単。というか、すでに述べた。


 空中にまでは振動も届かない。

 だから、このまま宙に浮き続ければいい。


『“黒星重力(ブラックグラヴ)——無重力圏(ゼロ・グラビティ)”』


 相手も能力を使ってきたから、ここからはこちらも装備の能力(アビリティ)の使用を解放する。

 ——相手も足技を使ったから、というわけではないけれど、私も足装備の能力で対抗だ。


 これぞ「夜叉姫(やしゃひめ)流・新・魅せプレイの法則・その二」——「相手が能力を使ってきてから、こちらも能力を使う」だ!

 ——ちなみに「その一」は、「敵に先手を譲り、決して瞬殺はしない」である。

 これまでの配信で不評だったらしい部分を改めて、少しでもより良い魅せプレイを模索していくために……この「新・魅せプレイの法則」は、これからも随時増やして意識していくつもりだ。


 グラグラと揺れる地面を尻目に、私は悠々と空中に浮遊している。

 とはいえ……これはあくまで、重力の影響をゼロにすることで宙に浮かんでいるだけなので——振動の影響は受けずに済むとはいえ——その場から移動も出来ないこの状態では、どっちにしろ次なる攻撃は回避できない。

 案の定——振動は自身にも伝わるとはいえ——それによる悪影響は受けないミノたちは、大揺れに揺れる地面をものともせず動いて私に近寄ると、そのまま大斧を振りかぶる。


 私は振り下ろされるその攻撃をハルバードで受け止めつつ、同時に新たな能力(アビリティ)を発動する。


『“衝撃充填(チャージインパクト)”』


 ガキィン!


「ブモッ?!」


 ()()()()()()()()ミノが驚愕するのも無理はない。

 なんせ、フワフワと宙に浮いてる私に思いっきり大斧を打ち込んだにも関わらず、私がその場から()()()()()()()()受け止めてしまったのだから。


 これぞ、ゴシックドレスアーマーとして私の衣装と一体化している鎧装備の能力。

 その効果は、「受けた攻撃の衝撃を吸収し、充填(チャージ)できる」というもの。

 ミノの大斧による攻撃の衝撃をすべて鎧が吸収してしまったので——重さゼロで宙に浮いているというのに——私はこうして小揺るぎもせずに、その場から動くことなく受け止められるというワケなのだった。


「ブ、ブモォッ!!」

「ブモォォ!!」


 二体のミノが交互に私に大斧を打ち込んでくるが——


 ブンッブンッ——ギンッ、ガキィ!!


 私はその場でハルバードを振り回し、それらを難なく受け止める。

 衝撃は余すところなく鎧の能力にて吸収されてしまい、私はその場を微動だにしない。


〈ニートの無職ん:うわぁ何の説明もなく宙に浮くな〉


〈浮世の社畜ん:うおお、めっちゃ脳が混乱する……なんであんなにガンガン打たれてるのに、空中に固定されてるみたいに不動なんだ?〉


〈ツッコミ番長:いや何コレw なんかバグったゲームみたいな絵面なんだけどww〉


 しばらくそうして打ち合ったけれど、ミノの攻撃はまったく私に通用せず……先に痺れを切らしたのはミノたちの方だった。


「ブ、ブモゥ!」


 その一言(ひと鳴き?)が合図になったように、ミノたちはどちらともなく私への攻撃をいったん止めると、お互いに後退し私から距離を取る。

 そのうち、私の背後にいるミノは、スウゥゥッ——と息を吸って咆哮の能力を使う予兆を見せ……

 もう一体の前方のミノの方は、これ見よがしに大斧を構えてみせ……放とうとするは、その巨大な得物に宿る能力だ。

 ——同時攻撃? ふっ、甘いね……。

 さて、まだ相手が見せてない能力も残りはアレだけだし、そろそろ終わりにするか。


 そう私が決めたところで、まずは背後のミノがすでに見た咆哮(ほうこう)の能力を使ってくる。


『“震痺咆哮(スタンハウリング)”』

『“衝撃充填(チャージインパクト)”』


 しかし……咆哮とはすなわち音による振動の()()のことなので、鎧の能力を使えばアッサリと無効化できる。

 ——ちなみに、近くに浮いてるドローンカメラも咆哮の影響を受けて画面がすごくブレているけれど……〝装備〟している私の魔力によって護られているのでダメージまでは受けていないし、ちゃんと浮いたまま耐えられている。

 ドローンについては戦闘には関係ない配信の部分に当たるので、魅せプのための制限とか付けずに全力で守護(まも)っていく。


「ブモゥッ!!」


 咆哮で動きが止まったと思い込んでいるのか、前方のミノはどことなく得意そうに、大きく振りかぶった大斧を振り下ろす。

 巨大な斧でも届かない距離からの攻撃は、しかし、持ち前の武技(ウェポンアーツ)により、その射程を伸ばしてくるが……


『“真空波斬(ソニックスラッシュ)”』


 あらよっと!


 ブン——バシュウ!


 その軌道を完全に見切っている私は、飛んでくる不可視の斬撃波にピッタリと合わせた軌道でハルバードを振り抜くことで、アッサリと相殺してしまう。


「ブモゥッ?!」


 その反応は動けないと思っていた私が動いたからか、はたまた飛ぶ斬撃を相殺されたことによる驚きか。

 動揺したように動きを止めた前方のミノに対し、私の背後のミノは、すでに次なる攻撃に移っている。

 こちらに対して距離を詰めつつ、振り上げた大斧を地面に向かって振り下ろす。

 ——これはー、もう見たんだよなぁ。


『“衝撃波斬(インパクトスラッシュ)——地砕礫波(グランドブレイキング)”』


 やはりというか、石床に打ちつけると同時に、大斧から衝撃波を放って砕いた石床の破片の(つぶて)を飛ばしてくるが……私はハルバードで受け止めて難なくガードする。

 ——もはや、鎧の能力を使うまでもない。

 もう真新しい動きもないし、これ以上は戦いを引き延ばしたとして、魅せプ的にも微妙だし——けっきょく上手い言い訳の妙案も浮かぶ気配が無いし——そろそろ倒してしまうか……と思っていた、その時。


『“振動制御(テクニカルビート)——超振動斧(ハイビートアックス)”』


 動揺から抜けた前方のミノが、私も知らなかった能力の応用技を披露し——いまだに続いている地震の振動を集めていき、地面に突き立てた大斧に集約させて武器を大いに強化してみせるのだった。


 これはっ、私も初めて見る技だ——?!

 マジか……コイツって、こんな能力も使えたんだ。

 そうか——昔に戦った時には、地震の能力はそもそも使わせないようにしてたから……知らなかったんだ。

 いやはや……それもこれも、魅せプレイの法則に従ったからこその展開——やはり私の「新・魅せプレイの法則」は間違ってなかった……!?


「ブモォォッッ!!」


 微細に高速振動する大斧を(たずさ)えて、ミノが私に迫ってくる。

 ——もはや地面の揺れは収まっているので、私は無重力を解いて地面に降り立つ。

 新技まで出してくれたのだから、私も受けてやらねばなるまい。


 振り抜かれる大斧の一撃に、私はハルバードを打ちつける。


 ガッッギギギギィィィィンン!!!


 鎧の能力は使わない。——仮に使ったとしても、振動の影響までは吸収できないので完全には相殺できないだろうし。

 代わりに私は、少しばかり魔力を自身と武器(ハルバード)に流して、身体能力と武器の威力とを強化する。

 ——それが必要な一撃だと判断した。

 事実、振動する大斧と真っ向から打ち合った私のハルバードは、それでちょうど相手の一撃の威力を相殺することが出来ていた。


「ブモッ、ブモッ、ブモォォッッ!!」


 ガンッ、カガンッ、ガギギギィィッ!!


 ようやくまともに攻撃を仕掛けられることに勢いづいたのか、ミノの打ち込みは激しさを増していき、私は打ち合いながらも思わず後退させられていく。

 しかし、下がる先には当然もう一体のミノがおり、大斧を横に構えてここは通さんとばかりに私の(後退する)行手(ゆくて)(さえぎ)ってくる。

 追い詰められた、どうする……っ!?

 ……なんてね。


 向こうも新技を使ってきたんだから、こっちも一つ、新技を出して対抗だ。

 さあ、コイツを喰らいなッ!


 私は打ち込まれるミノの振動する大斧に対して、ハルバードの槌の部分を打ちつけて受け止める——


『“豪爆打撃(バーストスマッシュ)”』


 さらに、それに合わせて、槌部分の能力である「打撃と同時に前方に指向性のある爆発を起こす」技を使い、攻撃してきたミノを吹き飛ばす。


 ガッ——ボッッバァァァンンッッッ!!!


「ブモォゥッ?!」


 爆発を受けたミノはもんどり打ってぶっ倒れ、武器の大斧は手から離れてどこぞに吹き飛んでいく。


「ブモ!? ブモォッッ!」


 一瞬だけ爆発に驚いた様子を見せたが、しかし相方がぶっ飛ばされても(ひる)むことなく、背後のミノが隙ありとばかりに私に体当たりをかましてくる——が。


 そこだっ!


 その動きに合わせて、私は私でしゃがみながら足払いを決める——


『“黒星重力(ブラックグラブ)——重力軽減(グラビライト)”』


 さらにはそれと同時に——足装備の能力で重力を軽減し、触れているミノの重さまで軽くすることで——足払いで転ばせたミノの巨体を軽々と浮かせてやると……


「ブモォォォォッッ!!?」

 

 自分の突進の勢いのまま私を飛び越して、前方へと吹っ飛んでいくミノ。


「ブモッ」「ゴブフッ」


 そしてそのまま、そこにぶっ倒れていたもう一体のミノにぶつかり、無様に重なり合う。


 狙い通り……完成だ。

 これぞまさに、ミノ重合(かさご)(言ってみただけ)。

 あとはこれを、まとめて一撃でトドメを刺すだけだ。

 そう……特別バージョンの〝あの技〟でね。


 ゆらり——と……おもむろにミノ重合(かさご)へと足を踏み出しつつ、私は口を開くと、歌うようにその詠唱を(そら)んじる。

 ——(つぶや)くようなその声は、しかし私の〝照面鏡(ホロスク)〟を通してバッチリと配信にのって、画面の向こうへと届けられていく。


「天から降って、地に落ちる——流れ流れて、生々流転(せいせいるてん)——今宵(こよい)は敵と、相見(あいまみ)えるも——死して(しかばね)、拾うは魔石——されど魂、源世(イデア)(めぐ)り——来世の祝福、願いて振るう——この一撃にて、因果の呪縛——解き放たんと、(こいねが)う——送る(はなむけ)冥土(めいど)土産(みやげ)——一輪(いちりん)落華(らっか)……〝滝夜叉車(たきやしゃぐるま)〟!!」


 事前に考えに考えた——渾身の(相手にとっての)辞世の句(ラスト・ポエム)(うた)いつつ……

 ——詠唱の途中でミノが起き上がりそうになっていたので、こっそりと〝停滞の魔眼〟を使って動きを止めたりなどもしつつ……

 走り寄ったミノ重合(かさご)に向かって大きく飛び上がり、最後の技名を叫ぶに合わせて、私はその技を放つ!


『“衝撃解放(チャージバースト)——剛破進撃(ギガストライド)”』=『“激輪(げきりん)滝夜叉車(たきやしゃぐるま)”』


 上方から落下するように相手を襲う縦回転斬り——これぞまさに、〝滝夜叉車〟なり!

 ——しかも今回は、事前に鎧の能力で溜めてた衝撃も同時に解放した、豪華〝激輪〟バージョン!

 さあっ、くたばりあそばせっ!


 グルルルルル——ズザザザザンッッッ!!!


 そして私は、見事にミノ二体を一撃で撃破したのだった。


 

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