SCENE194 アルカナさんの真の力
「みなさん、こんにちは。ダンジョンマスターのウィンクです」
『こんらみあ~』
『ウィンクちゃんだーっ!』
『なんか久しぶりだな~』
僕がいつものように挨拶をすると、みんながすぐに反応を見せてくれる。嬉しいんだけど、なんかものすごくむず痒いような気がする。
だけど、僕はいつものように配信を行う。
「さて、本日の配信ですが、アルカナさんが何かお見せしたいことがあるそうで、配信のメインを交代いたします」
『うん?』
『アルカナって、確か樹海ダンジョンのボスだったやつだよな』
『一体何を見せてくれるんだ?』
視聴者のみんなが、なんとも騒がしくなっている。一応死霊使いのリッチだということは、紹介しておいたはずなんですけどね。まあ、僕もよく能力を知らないんだけど。
そんなわけで、僕はアルカナさんへと視線を向けている。
「みなさま、お久しぶりですわね。あたくしはアルカナ・リッチモンド。死者を操るリッチですわよ」
『相変わらずすごい格好をしてるな』
『恥ずかしくないん?』
「よ、余計なお世話ですわよ。ダンジョンマスターなのですから、それなりに目立つ格好をするのは当然ではございませんこと?」
『まあ、そうかもね』
まったく、みんなのアルカナさんの扱いが軽すぎないかなぁ。ほらぁ、アルカナさんが怒って震え始めちゃったじゃないか。
「んもう……。これを見てもそんなことを言ってられますかしらね」
アルカナさんは、衣織お姉さんを呼んで、二股の槍を僕たちが囲んでいたテーブルの上に置いてもらっている。何をするつもりなんだろうかな。
「死霊術を得意とする、リッチモンド侯爵家の秘術ですわよ。とくとご覧なさい!」
配信ドローンに向けて言い放ったアルカナさんは、二股の槍の上に手をかざしている。
マナを練り始めたかと思うと、なにやら詠唱をし始めていた。
「魂を司るリッチモンド侯爵家が長女アルカナが命じる。物へと宿りし魂よ、今ここに我の呼び掛けに応え、その姿を現せ!」
魔法陣が浮かび上がり、まぶしい光を一瞬ながら放つ。
その後、僕たちの目の前で驚くべきことが起きた。
「うん? どこだ、ここは」
全身をうろこに覆われた筋肉のすごいモンスターが姿を現した。
「さ、サハギール? ど、どういうことなんだ」
衣織お姉さんがものすごく慌てた様子で反応をしている。ということは、目の前のこの人物が、衣織お姉さんが倒した蜃気楼ダンジョンのボスモンスターっていうことなんだろうか。
「おや、衣織ではないか。だが、ここは蜃気楼ダンジョンではないな。どういうことなのだ?」
『おいおい、なんだこれは』
『これは降霊術か?』
『そういや、リッチって死霊使い系のモンスターの上位クラスだったよな』
『つまり、死んだ奴を呼び寄せたってことなのか?』
コメント欄もものすごい勢いで目の前で起きたことに反応している。
ちなみに、この状況には僕も驚いているよ。探索者デビューもしてなかっただけに、僕には知らないことが多すぎる。
「おお、サハギール殿、お久しぶりですな」
「誰かと思えば、バトラーではないか。本当に久しいな。ふっ、元気そうでなによりだ。どうだ、昔のように一戦交えてみないか?」
「はははっ、死したものを相手となると、ちょっと勝手が違うというものですぞ。今のところは、遠慮をしておこうではないですかな」
「ふむ。それは残念だな。一時期戦鬼としてその名を異界に知らしめたバトラーと戦えぬとはな」
「ふっ、その呼び名は懐かしいですな」
なんかものすごく懐かしそうに話をしているよ。バトラーはこのモンスターのことをよく知っているみたいだ。
「ウィンク様、この方が先程話題に出ていましたサハギールです。爵位もない平民の方ですが、その名は広く異界にとどろいていらっしゃる方です」
「えっ、そんなにすごい人なの?!」
「ええ。それは半魚人という種族ながらも、水域ではない場所でも一個師団を壊滅できるほどの実力の持ち主ですよ」
「え、ええええっ?! って、師団って?」
ラティナさんやバトラーから聞かされて僕は驚いたものの、よく分からない単語を聞いて思わず勢いで尋ねてしまう。
なんでも、モンスターたち五千体くらいからなる一団をも簡単に撃破してしまうほどなのだとか。いや、強すぎない?
僕はおそるおそる顔を向けるものの、サハギールという人は胸を張っていて、衣織お姉さんと話をしていた。
「おや、なんだか体が維持できなくなってきたな。なんだ、せっかく俺様が復活したというのに」
そうかと思っていたら、サハギールさんの体がなんだか不安定になってきた。
「申し訳ございませんわ。あたくしの魔力が不足しておりまして、これ以上の維持は厳しいようですわね」
「ふむ。リッチモンドの血を濃く受け継いでいるからといっても、まだまだ子どもというわけか。まあよい、今回はバトラーに会えただけでもよしとしよう。また必要があれば、いつでも呼んでくれ。俺様は何度でも蘇ってやろう。ぐわっはっはっはっ!」
サハギールさんは大声で笑いながら、その姿を消してしまっていた。
その直後、アルカナさんがとても調子が悪そうに倒れてそうになってしまったので、僕はキリのいいところで配信を終わることにした。
まさかアルカナさんにこんな能力があるだなんてね。
僕は、まだまだ一緒に住んでいる人たちのことを知らなすぎるようだった。




