SCENE193 やることを終えたお茶会で
ダンジョンに衣織お姉さんが尋ねてきた。
先日の話では、新しいダンジョンに挑戦するというような話をしていたんだけど、無事に攻略できてきたんだろうかな。
でも、なんか微妙に疲れているように見えるんだけど、大丈夫かな。
なんか話があるみたいなので、僕たちは話をするためにテーブルを引っ張り出して用意をする。
セッティングができると、僕たちは衣織お姉さんと日下さんを呼んで、テーブルを囲む。
少し遅れてバトラーがやって来ると、紅茶とお菓子を用意してくれる。
「さて、いろいろ話をしたいことがあるんだが、どれから話をしようかな」
衣織お姉さんが腕を組んで考え込んでいる。
僕たちは衣織お姉さんをじっと見つめながら、何を話してくれるのだろうかとじっと待っている。
僕たちからの視線を感じている衣織お姉さんだけど、なんかまったく動きがない感じだ。一体どうしたんだろう。
「まぁいい。私からの話は重いからなぁ。それに長引きそうだ」
両膝をパンと叩いて、衣織お姉さんは何かを決めた感じだ。僕にはわけが分からないな。
「瞬、テストの結果はどうだった」
テーブルに肘をつきながら、僕へと話を振ってきた。えっ、それを聞いてくるの?
とはいえ、衣織お姉さんは僕のことを気にしすぎるところがあるから、こうなるのは当然かな。
なので、僕は素直に答えることにする。
「テストは合格だったよ。でも、二学期と三学期は授業出てなかったから、持ってきてもらった教科書を元にバトラーに勉強見てもらってどうにかしたよ」
「いやはや、この世界の内容というのも、なかなか面白いものでしたぞ。長らくこのダンジョンの中で、主を待ち続けたかいというものがあるものですぞ」
僕がちらりと視線を向けると、バトラーはとても得意げに話をしている。
そんなに僕のことを買ってくれているのかなぁ。いや、どちらかというと僕をダシにしてる?
いまいちバトラーの真意がつかめないなぁ。
「そうかそうか。無事に中学は卒業できたか。それはよかった」
僕の答えを聞いて、衣織お姉さんはとてもほっとした様子を見せていた。まるで自分のことのように心配していたみたいだ。本当に、衣織お姉さんってば……。
あまりにも僕のことに対して反応を示すものだから、僕はどうしたらいいのか困る時があるよ。
とりあえず、僕の話は終わったから、今度は衣織姉さんの話を聞かせてもらうよ。
「衣織お姉さん、ダンジョン攻略はどうだったの?」
僕は思い切って聞いてみる。そしたら、衣織お姉さんの表情が急に曇ってしまった。どういうことなの?
そうかと思うと、衣織お姉さんは、自分の後ろにあった布に包まれた何かを取り出してきた。
「バトラー、これが何か分かるか?」
衣織お姉さんがそういって布から取り出したのは、先端が二つに分かれた槍だった。なんというか、さす股みたいな感じの武器だな、これ。
「衣織殿、これはどちらで手に入れられましたかな?」
「今回攻略した蜃気楼ダンジョンのボスが持っていたものだ」
「ふむ、そうですか……」
バトラーの反応からすると、なんだか知っているような感じがするな。衣織お姉さんはやはりかというような表情をしている。
ねえ、待って、一体何がどうなってるのか、説明してもらえないかな。
二人の様子を見ながら、僕はあたふたとしてしまう。
「落ち着いて下され、プリンセス。これは、我の旧友が持っていたものですぞ」
「えっ、そうなの?」
「はい。我は執事の道に進みましたが、彼は戦場から離れたくないといいまして、その餞別として、我が贈ったものでございます」
「なるほどな。それでサハギールはバトラーのことを知っていたのか。ただ、直接知っているような言い方をしてはいなかったがな」
「左様でございますか。ふっ、なんとも彼らしいといいましょうかな」
バトラーは、衣織お姉さんの話を聞いて、悲しげな表情を浮かべながら懐かしそうに笑っていた。
ところが、槍を見ていたバトラーは、そっと衣織お姉さんの前へと槍を押し返している。
「この槍は、衣織殿がお持ちくださいませ。彼が託したのであるならば、正当な保持者は衣織殿でございます。調べてもらえれば分かりますが、この槍には水属性を増幅させる力がございますので、使いこなせれば戦術に幅が出てよろしいかと存じますぞ」
「そうか……。友人たるお前がそういうのであれば、私が受け取っておこう」
槍を受け取ることになった衣織お姉さんは、じっと見つめながら槍を手に取っていた。その時の表情は、とても悲しそうな感じである。
その様子を見ていた僕たちも、なんだかいたたまれない気持ちになってくるというものだ。どうしたらいいのだろうかと、僕は考えてしまう。
そんな中だった。突然、アルカナさんが僕に提案をしてくる。
「ウィンク様、ちょっとよろしいでしょうか」
「ええ、なんですか、アルカナさん」
「こういう時こそ、あたくしの能力の見せどころだと思いますのよ。ですので、今すぐにでも配信の準備をして下さいませんでしょうか」
椅子から立ち上がり、僕にずいっと顔を近付けながら、アルカナさんが自信たっぷりに何かを言い始めている。
その勢いに押されてしまった僕は、アルカナさんに言われるがまま、配信ドローンを準備することになった。
一体、アルカナさんは何を始めようというのだろうか。




