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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE191 勝者の凱旋

 その日、ダンジョンがまた一つ消えた。もやのかかっていた空間は、ざあっと晴れ渡る。

 だが、私はまったく顔を上げることができなかったな。


「衣織、気持ちはわかるが、陸に戻って報告をしないといけない。配信をしていたとはいえ、詳細な記録のために聞き取りもあるんだからな」


 剛力さんから声をかけられる。

 分かっている。それが探索者としての務めなんだからな。


「おい、衣織?」


 私はすぐに動かなかった。

 私はポケットから何かを取り出し、せめてもの手向けにと、それを海に撒いた。


「いずれまた、心ゆくまで戦おうじゃないか。そっちで待っていてくれ、サハギール」


 ようやく心に区切りがつくと、到着した時に船頭が渡してくれたゴムボートへと乗り込んだ。

 私は、サハギールの形見となってしまった二股の槍をぎゅっと握りしめ、剛力さんと色とともに、陸地へと戻っていった。


 救難信号を出していたこともあり、しばらくすると陸上からダンジョン管理局所有の船が迎えに来てくれる。

 ゴムボートから小型船へと乗り移り、私たちが乗っていたゴムボートは回収される。

 詳しい報告は陸に戻ってからということで、船の中ではボスとボスドロップについてだけの報告になった。

 ダンジョンが消えてしまうと、二度と挑戦することのできないボスの情報はとても希少だ。現在、どんな物品が出回っているかという情報は、管理局として把握しなければいけないので、こうやって報告が義務付けられている。

 なので、いくらでもドロップ品を集められる瞬やセイレーンといったボスモンスターはとても珍しい。


「ボスの討伐及び、ダンジョンの消去、本当にお疲れ様でした。宿をご用意しておきますので、今夜はそちらでゆっくりとお休み下さい」


「ああ、そうさせてもらおう。ちょっとばかり厄介なダンジョンだったんでな」


 小型船に同乗している職員から声をかけられると、剛力さんは私の方に視線を送りながら答えていた。

 やはり、サハギールのことでずいぶんと私は落ち込んでしまっているようだな。こんな状態では、瞬に会いに行くわけにもいかない。あいつは私のこと気にかけ過ぎるからな。


「そういえば、瞬はもう中学校最後のテストを受けている頃だろうか」


 瞬のことが頭をよぎった瞬間、私はつい瞬のことを気にかけてしまう。


「お前はな……。落ち込んでいる時でもウィンクのことを気にするのか。よっぽど大事にしているんだな」


「当たり前だ。弟のようなやつなんだからな。だが、行くとなると、サハギールのことをバトラーに報告しなきゃいけないな。知り合いのようだし」


「そうなのか。そういえば、知っているかのような反応をしていたな。だが、バトラーの方が知っているとは限るまい。有名人ならなおさらだろう」


「……そうかも知れないな。だが、話をしておいた方がいいだろう。その方が、あいつも喜ぶと思うんだ」


 私の話す内容を聞きながら、剛力さんはなんとも困った表情を浮かべていた。

 なんて顔をしてくれるのだ。まるで私が間抜けとでも言いたいのか。


「誰も間抜けとはいっていないだろうが。どうしてこの流れでそうなるんだ」


「バカなっ。何も言っていないのに……」


「長い付き合いだからな、なんとなく分かるんだよ。……よっぽど、サハギールとは馬が合ったようだな、衣織」


「……そうかも知れないな。まさか、あんなに呆気なく終わってしまうとは思わなかった。できることなら、また戦いたかったというものだ」


 私はそうつぶやくと、船室の壁に思いっきりもたれかかる。

 剛力さんといい合ったことで、ちょっと疲れが出てきてしまったらしい。


「陸に着いたら起こしてくれ。さすがに疲れた」


「ああ、あんまり長くはないが、少しは休んでおけ」


 私は形見となる二股の槍をしっかりと握りしめたまま、少し眠ることにした。


 しばらくすると、私は色によって起こされる。

 どうやら、陸に着いたようだ。

 今日は管理局が用意してくれた宿で泊まることにはなってはいるが、その前にダンジョン管理局での聞き取りが待っている。

 いつもなら勇んでいくところだが、今日はなぜか気が重い。さっさと休みたい気分だ。

 だが、ダンジョンボスと直接戦ったのは私だけだしな。ドロップ品も全部私が持っている。となれば、ダンジョン管理局に付き合わないわけにはいかない。

 港からバスへと乗り換えた私たちは、ダンジョン管理局へと向かっていった。


 ダンジョン管理局での私は、本当にただ淡々と起きたことを管理局の職員たちに伝えていた。

 ただ、ダンジョンボスであったサハギールのことについてはちょっと熱が入ってしまったかもしれないな。

 認めたくはないが、あれだけ苦戦したのはパラダイスの鬼崎以来だ。ああ、認めたくないうのは鬼崎の強さの方だ。勘違いしないでくれ。

 それにしても、今回もラティナの護石に助けられたようなものだな。ダンジョンマスターであるロックウェル伯爵の娘だが、その能力はなかなかに侮れない。本当に、異界のモンスターというのは分からない連中ばかりだ。

 いろんなことを思いながらダンジョン管理局の聞き取りを終えた私は、部屋でシャワーを浴びる気力もなく、そのままベッドで泥のように眠ってしまったのだった。

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