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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE185 世の中甘くはないんだね

 世間ではバレンタインが近付いてきた頃だった。

 この頃ともなると、僕たち中学三年生は受験で忙しくなり始める。だけど、ダンジョンマスターとなった僕はまったくそんなこととは関係なくなっていた。

 勉強しなくていいというのは気楽ではあるものの、やっぱり、普通の世界とは切り離されちゃったんだなと、なんだか寂しく思えてくる。


「ウィンク様?」


「あっ、ラティナさん」


 僕がちょっとしんみりしていると、ラティナさんが気になったのか、そっと声をかけてきた。


「どうなされたのですか。少しばかり元気がなさそうに思われますけれど」


 聞かれた僕は、困ったような笑顔になってしまう。

 大丈夫とは言いたいけれど、ちょっと気持ちが凹んでいるのは事実なので、反応に困ってしまったからね。

 僕が反応に困っていると、ダンジョンに誰かがやってきた反応がある。


「あっ、この反応は谷地さんたちかな。ちょっと出迎えてくるね」


「えっ、ウィンク様?」


 僕はごまかすようにしながら、ダンジョンの入口へと向かっていく。


 ボス部屋と管理局の人たちの部屋とを結ぶ短絡路を通って、僕はダンジョンの入口までやってくる。

 顔をのぞかせれば、そこには僕のダンジョンの担当である谷地さんと日下さんの二人がやって来ていた。


「こんにちは、谷地さん、日下さん」


「はい、こんにちは、ウィンクさん」


 すっかりと顔なじみになっているので、挨拶を交わせば、そのままボス部屋へと直行する。

 本当ならキラーアントのいる部屋を通って三階層に分かれたダンジョンを進まないといけないんだけど、短絡路を通ると、一瞬でボス部屋にやってこれる。

 ただ、この短絡路を通れるのは、ごく一部の人たちだけ。しかも、僕がいないと使えないからね。つまり、信用の証ってわけだね。まあ、谷地さんと日下さんは僕がいなくても通れるんだけど。

 ボス部屋にやってきた谷地さんは、手に持っている紙袋を差し出して、僕に声をかけてきた。


「これは差し入れです。みなさんで召し上がって下さい」


「あっ、これはどうも」


 紙袋を受け取って中身を確認する。赤茶色の包装のされた四角い箱だった。

 うん、いや、まさかこれってねぇ……。


「ああ、スルーしておいていいですよ。どうせ魅了にかかっているんだと思いますから」


「お、おい、日下……」


「ああ、やっぱりそうですか。こんな高そうなものより、僕たちだったらファミリーサイズのお菓子でも大丈夫でしたのに」


「あ、いや……、こほん」


 僕たちの反応に、谷地さんはとても困っているようだった。

 うん、バレンタインのチョコレートだよ、これ。さすがの僕でも気が付いたな。

 僕は受け取った差し入れをバトラーに預けると、改めて谷地さんたちと向かい合う。


「立ち話もなんですから、座ってお話しませんか?」


「そうですね。そうさせていただきます」


 そんなわけで、僕たちはいつものように、テーブルを囲みながら話をすることにした。


 谷地さんたちからは、いろいろと情報を聞くことができた。

 ひとつは衣織お姉さんのこと。

 今現在、衣織お姉さんは海辺のダンジョンに挑戦中らしい。蜃気楼ダンジョンとか言ってたっけか。日本海にあるダンジョンで、樹海ダンジョン並みに魔法系のモンスターがあふれているんだとか。

 攻略は進んでいるけれど、ダンジョンコアの破壊にまでは至っていないとのことらしい。

 攻略が成功するかどうかは別として、無事に戻ってきてほしいなって思う。僕のうろこもだいぶ渡してあるから、それほど苦戦しないとは思うけど、やっぱり心配だよ。

 報告を終えた谷地さんは、もうひとつ僕に教えてくれた。

 それは、僕が半年近く前から通えなくなってしまった学校のこと。ダンジョンマスターになってしまったとはいっても、僕はまだ学校に在籍しているからね。

 で、谷地さんの話だと、期末テストだけ受けてもらって、それで合格できれば卒業はさせてもらえるらしい。


 ……て、テストぉっ?!


 今さらテストだなんて言われても困るんだけどなぁ……。

 とはいえ、中学校中退とかいう称号を押し付けられても困るわけで、僕はものすごく取り乱してしまっている。

 今は二月中旬のバレンタインの頃だから、期末テストは半月もしないうちにやってくる。ちょっと急すぎて困るんだけどなぁ……。

 とはいえ、学校の決定事項らしく、中学校卒業の称号を得るために、僕は渋々その条件を受け入れたよ。

 はあ、まさかこの時点で勉強が必要になるだなんて思ってもみなかったなぁ……。とはいえ、高校以降は行かなくていいから、最後くらいは頑張ってみるか。


 すべての話を終えると、谷地さんと日下さんはさっさと引き揚げていってしまった。あれっ、話していくだけで終わりなの? 意外と薄情じゃないか。

 大きなため息を吐いた僕は、ゆっくりと後ろを振り返る。

 振り返った先では、なぜかバトラーがにこやかな表情をして立っていた。


「バトラー?」


「お話は伺っておりましたぞ。さぁ、プリンセス。勉強を始めましょうか」


「うわぁ……。バトラーがものすごくやる気になってるぅ……」


「頑張って下さい、ウィンク様」


「ダンジョンマスターなるもの、勉強はできて当然ですわよ」


 ドン引きしている僕に対して、ラティナさんとアルカナさんはただただ励ましてくるだけだった。

 うん、こうなったら頑張るしかないね。

 僕は諦めて、テストをクリアするために勉強を頑張ることにしたよ。

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