行方不明
76話
魔族の一種族である鬼人ラクシャーサの村ではラクシャーサの女性達が慌てふためいている様子であった、そんな状況のところへラセツが帰ってきた。
「どうした!?そんなに慌てて!」
ラセツは年配のラクシャーサの女性を捕まえて理由を聞いてみた。
「これはラセツ様!実はリンと遊んでいたであろう子供たちが居なくなってしまったのです!今、村の全員で探しているところです・・・」
「なにっ!リンと子供たちが居なくなった!それは本当か!?」
ラセツは女性へ驚きと怒りを表せながら問い返した。
「申し訳ありません!いつもの様に子供たちと仲良く森の中で遊んでいたので、つい目を話してしまいました・・・」
「っく!それで、どの辺りで遊んでいたのかは解っているのか!?」
ラセツは冷静さを取り戻し、女性へ聞いた。
「はい、森の中の沢あたりで遊んでおりました!今、男どもが必死に探しております」
「そうか、わかった!俺も沢へ行ってみる。お前達は落ち着いて子供たちが戻ってきた時の準備をしておいてくれ!」
「はいっ!」
ラセツはラクシャーサの女性へそう言うと沢の方へ走って行った。しばらくして沢の辺りに着くと捜索を行っているラクシャーサの男性が居た。
捜索していたラクシャーサの男性はラセツに気が付き、近づいて報告を行った。
「ラセツ様!大変申し訳ありません!今、総出で探しているところです!」
「そうか!どの辺りで居なくなったかは解っているのか!?」
ラセツは怒りを現さずに捜索を行っているラクシャーサの男性へ問い掛けた。
「はい!この辺りで遊んでいたのは水汲みに来た者が見ていたので解っているのですが、ここからの足取りは解っておりません」
「今は20人態勢で沢の上流と下流を捜索しております!」
「ふむ、それで、リンの他に子供は何人居たのか解っているのか?」
ラセツは魔人に攫われたのか、それとも沢に落ちたりした事故であるかの判断を行おうと状況を詳しく聞いてみた。
「はい、エルフの娘と遊んでいた子供は5人と聞いております」
捜索していたラクシャーサの男性が答えた。
「ふむ、すると沢へ落ちたとは考え難いな・・・、6人全員が流されるような川ではないからな・・・」
ラセツがそう言っているところへ沢の上流から二人のラクシャーサの男性が降りてきた。その2人がラセツを見つけると慌てた様子で走り寄ってきた。
「ラセツ様!上流で子供たちの痕跡らしきものを見つけたと連絡がありました。下流の者達を集めなおして捜索するために降りてきたところです!」
走り寄ってきたラクシャーサの男性はラセツへ簡潔に報告を行った。
「そうか!俺も上流へ行こう!案内してくれ!それから、残った2人は下流の者達を呼んできてくれ!」
ラセツは降りてきた1人に道案内を命じ、残った2人に下流の者達を呼びに行く様に命令した。
ラセツが上流へ走って行くと、少し開けたところにラクシャーサの男性2人が話し込んでいた。そこへラセツが話し掛けた。
「状況は!?」
ラセツに声を掛けられたラクシャーサの男性は驚きながら答えた。
「はいっ!!ここに子供たちの荷物がおいてありました!今、この辺りを探しております!」
ラセツはしゃがみこんで子供たちの荷物を確認した。そこへ辺りを捜索していたラクシャーサの男性が走り込んできた。男性はラセツの姿を確認すると、真っ先にラセツの元へ走り込んで報告を行った。
「ラセツ様!見つかりました!子供たちが居ました!こちらです!」
男性は報告と同時に子供たちのところへラセツを連れて行った。ラセツは無言でラクシャーサの案内に従った。
しばらくすると、ラクシャーサの子供たちと捜索していたラクシャーサの男性たちが固まって居るところに着いた。ラセツはリンの行方と状況とを子供たちを見つけたラクシャーサの男性へ問い掛けた。
「ご苦労!それでリンは?エルフの娘の姿が見えないが、どうした?」
「はっ!今子供たちに聞いていたところです・・・、しかしながら泣いていて話を聞ける状況ではありませんでした・・・」
ラクシャーサの男性が答えるとラセツが直に子供たちへ聞いてみた。そこへ他で捜索を行っていたラクシャーサの男性たちが集まってきた。
「怖かったであろう、もう大丈夫だ!落ち着いて教えてほしい。リンは、エルフの娘はどこに行った?誰かに連れて行かれたか?」
ラセツは一番年長であろう子に優しく聞いた。すると年長の子供は泣くのを抑えて話し始めた。
子供の話によると、沢で遊んでいたが、疲れて休んでいたところへ魔族の男性2人が話し掛けてきたとのことであった。
その2人はリンへ一緒に来るようにと要求したが、ラクシャーサの子供たちがそれを阻止していたそうだ。
魔族の男性2人は初めの方は優しく話し掛けてきたが、リンが同行を拒否し、ラクシャーサの子供たちが同行を反対していると、少しずつ態度が乱暴になってきたそうだ。その状況にリンはラクシャーサの子供たちの危険を感じたので同行を受け入れたが、子供たちは尚も反対してリンたちを追って行ったそうだ。
「そうか!リンを助けようと努力してくれたんだな!さすが我がラクシャーサの一族だ!ご苦労であった!」
ラセツは話したラクシャーサの子供の頭を撫でながら労いの声を掛けた。すると子供は泣き止んで落ち着いた様子だ。それを確認したラセツはリンを連れ去った者のことを聞いた。
「ところで、リンを連れて行った魔族はどんな姿をしていた?翼の生えた硬い皮膚の者たちか?」
するとラクシャーサの子供が首を横に振りながら答えた。
「ううん、違うよ!翼なんか生えていなかった・・・。牛さんとお馬さんの顔をしていた」
「牛と馬の顔!?」
集まって来ていたラクシャーサの一人が声を上げて驚いていた。




