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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
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鬼人族

37話


 優司達とオーガのヤマト、ゴブリンのムツが話しあいをしている。


「一つ教えてくれ。なぜ魔族に敵対する?魔人達を追う理由は何だ?」


 ヤマトが怪訝な表情で聞いてきた。優司は少し警戒しながら様子を見る様に答えた。


「知らないのか?同じ魔族だろう?」


「確かに、魔人は私たちと同じ魔族ですが、鬼人と魔人では価値観が違う様です。同じ魔族なので色々なしがらみや義理がありますが、親しい仲間という訳ではありません。」


 ヤマトではなく、ゴブリンのムツが丁寧に答えた。


「そうなんだ!正直に言うと今回の協力も義理と偵察が目的だった!」

「やつらの首領であるアスモデウスが不穏な動きをしている様子があるので、それを探りながら義理を果たす様にと我らがアラハバキ様の命令だった!」


 ヤマトが正直に全てを話した。優司はヤマトに律義さを感じ取っていた。それがヤマトを殺さなかった一番の理由だ。

 優司も正直に話してみて、どのような反応をするかを見極めることに決めた。


「では、正直に話そう。奴らが連れ去ったリンのこととマリアのことを」


 そう言って、優司達は全員でヤマトとムツに今までの経緯を話し始めた。するとヤマトが憤りながら言い放った。


「やはりかっ!アラハバキ様の予感が当たっていた!奴らは天族と戦をするつもりだ!」

「くそっ!何としても止めなくては!」


 その様子をダグザが少し驚いた様子で見ていた。そして、疑問をヤマトに投げかけた。


「その様子じゃと、天魔大戦をさせたくない様ですな?鬼人達にとっても迷惑なのですかな?」


「その通り、迷惑この上ないことです。天魔大戦からですから、魔族全体の印象が悪くなったのは・・・。」


 ムツが冷静にダグザの問に答えた。するとヤマトが魔族の内情を話し始めた。


「別に、魔族全体が天族を敵視している訳ではない。特に我々鬼人族は天族に恨みも敵意も全くない。」

「それは天族も同じで一部の天族、唯一神を名乗る氏神の神霊とその氏神の系列である天使族のみが魔族を悪として見ているだけだ。」

「魔族では神霊サタンを氏神とする魔人達と天族同士での争いに敗れて魔国に逃げて来た元天族系の神霊、それを信奉する元天族。それから天使族の中で反抗を行って堕天させられた元天使族達が天族を敵視している」


「なるほど、魔族や天族には氏神という信奉する神霊が居るらしいからなぁ・・・。それらの争いが原因なのか・・・。」


 テュールが考えながら呟いた。優司は未だ知らないこの世界の内情があるのだと理解した。


「・・・氏神・・・。確か、元の世界では集落など同じ地域に住む人々が祭る神様だったよな・・・。ということは、こっちの世界では各種族の神様みたいな感じかな・・・。まぁ、当たらずも遠からずっていったところだろ・・・。」

「ヤマト達の氏神は天族を敵視していないってことなのかい?」


「その通りです。我らが氏神で在らせられる神霊スサノオ様は天族を敵としては見ていません。」

「そもそも、天族と魔族の信奉する氏神は世界の均衡を保つ維持と改革をそれぞれが担っています。役割により意見が対立することはありますが、敵として滅ぼす相手ではありません。」


 ムツがしっかりとした説明をしてくれた。


「なるほど、良く解った。君達の立場を十分理解できたよ。もしかしたら魔国で出会うかもしれないから。その時はよろしく。行っていいよ。」


 優司はヤマト達に魔族全体への敵意は全くなく、リンの奪還だけが目的であることを伝え、魔国に戻る様に促した。しかしながら、ヤマトが食い下がってきた。


「優司殿、あなたは俺の恩人である。よって受けた義は義によってしか返せない。リン殿の奪還に協力させて欲しい。」


 ヤマトが丁寧に頭を下げてリン奪還の協力を申し出てきた。するとムツも同じように協力を申し入れてきた。


「私からもお願いします。是非、協力させてください。」


 するとテュールとトール、ルイやカイなどの亜人たちが優司の手を引いてきた。少し声を落としてテュールが意見を言ってきた。


「優司、鬼人族といっても魔族であることに変わりはない。あまり鵜呑みにして信じすぎるのも良くないと思うんだ・・・。」

「ここは丁寧にやり過ごして断るのが賢明だと思うが・・・。」


 他の亜人達はテュールの意見に賛成の様だ。すると、ヤマトとムツが近づいてきた。どうやら聞こえてしまったらしい。


「そのドワーフの言うことはもっともなことだと思う。よって嘘偽りのないことを証明する誓いを立てよう。」


 そういうや否や、ヤマトは天を仰ぎながら呪文の詠唱を始めた。


「我らが神、鬼王スサノオよ!我オーガのヤマトは優司より受けた義を義によって返す。その証として我が心臓を優司に預ける。」


 そう言った途端、ヤマトは右手を自分の胸に突き刺し、自身の心臓を取り出した。そして、その心臓を小さな袋に納めて優司に差し出した。


「俺が裏切ったと思ったとき、この心臓を潰してくれ!そうすれば俺は絶命する。」


 優司を含めた亜人達は、目の前の状況に唖然とした態度であった。するとゴブリンのムツも同じように心臓を捧げてきた。


「私のもお預かりください。私も義を持ってお答えしたい。」


 優司は一息ついてからヤマトとムツに微笑みかけた。


「わかった、お前たちの覚悟、俺がしっかりと受け取ろう。」

「ところで、ヤマトは解るけど、ムツはどうしてだい?」


 優司の問にムツが答えた。


「ヤマトを殺さないでくれたからです。このヤマトは我ら鬼人族の英雄です。その英雄が死ねば悲しむ鬼人が多くいます。私もその一人です。」


 優司はヤマトを殺さなかった自分の判断が正しかったことを確信した。もし、ヤマトを殺していたら鬼人族全体を敵にまわしていたであろうことを、ムツの言葉ではっきりと理解した。

 今では味方となってリン奪還の協力を申し出てくれている。


「ありがとう。それではリン奪還の助力を頼む!」


 優司の言葉に誰も文句を言う者は無かった。ルリが一言だけ微笑みながら呟いた。


「情けは人のためならず。ねっ!」

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