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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
31/86

ヒュドラ退治

30話


 トールがヒュドラの説明と戦う方法を話している。


「ヒュドラは9本の首がある大蛇のことだ。大きさにもよるが、鎌首を上げると2メートルから3メートぐらいになるだろう・・・。体は爬虫類独特の硬い鱗に覆われているから刃物が通じづらい・・・。さらに、毒霧のブレスを吐くので注意が必要だ・・・!」

「弱点だが、9本の首があるが、体は一つなので首の行動範囲は狭い。まぁ、9匹の同じくらい大きい大蛇と戦う方が大変だろうな・・・。その他は蛇と一緒だ!毒霧と咬まれることに注意して攻撃すれば何とかなるだろう・・・。ただ、体の小さい者は一飲みなされるので要注意だぞ!」

「ダグザよ!?解毒か耐性の法術は持っているか?」


「もちろんですじゃ!どちらもありますわい!」

「モンチも解毒はできるじゃろぅ?」


 ダグザはトールの問い掛けに答え、モンチに確認した。


「はい、大丈夫です。」


 モンチは落ち着いて答えた。モンチはこの旅をすることで大きく成長したように思われる。特に法術の勉強を熱心に行っている様であり、ダグザに一生懸命に教わっている姿を度々見ることがある。

 あるとき優司が何故に法術を熱心に勉強するのかを聞いてみたところ、マリアを救えなかった自分自身が許せないそうだ。


「あんな思い、二度としたくない!」


 そう言って、法術の勉強に集中していた。後悔がモンチを成長させている様だ。


「毒耐性の法術と解毒があるなら、毒霧は気にしなくて良いなぁ。あとは咬まれることに注意すればいい!戦い方だが、一つの首に2人以上で対応する。そうすることによって体が動かなくなる。その動かない体に魔法と弓で攻撃する。槍などの刺突も有効だ!鱗の間に滑り込むからな!首の付け根のところに心臓があるから、そこを突ければ一発で倒せる。鱗と骨を掻き分けてな!」

「注意することは、首を相手にする者は無理に倒そうとしないことだ!あくまでも首の注意を引き付けること。倒すのは体の担当者に任せる。なぁに、体が一つなので、体が死ねば9本の首も死ぬから!」


 トールは笑いながら話を締め括った。


「・・・もっともな戦い方だな!確かに9本の首があっても1匹の蛇だもんな・・・。それに心臓が一つなら9本の首を落とすより楽だもんな・・・。」

「トール、それなら担当も決めてくれないか!?誰がどの首を相手にするかなど、決めておいた方がいいだろう!?」


 するとトールが話しだした。


「そうだな!真ん中の首が一番大変だから俺がやろう。優司は向かって左端、テュールは右端に行ってくれ。それぞれワーウルフ達を指揮して欲しい。出来る限り首を左右に広げる様にするんだ!そうすればヒュドラは動けなくなるから!」

「ダグザとルイ、ルリ、サラは魔法と弓で胴体を攻撃、カイとヘパイスト、フェンリルとヤタは後方支援に回ってくれ!」

「リュカオーンは長い槍を使えるから、出来る限り早く心臓を突いてくれ!」


 トールの指示に全員が気合を入れて答えた。



しばらくすると、前方から何かが近づいて来る気配がした。よく見ると9本の首を持った大蛇が現れた。ヒュドラだ!ヒュドラは我々に気づくと鎌首を上げて威嚇してきた。高さは2メートルを優に超えている。

 優司達は打ち合わせ通りに展開しようとした時、ヒュドラの上方の空間に雷の様な光が出始め雷雲が発生した。

 全員がその光に気を取られた瞬間にアピスが大きな雄叫びを上げた。刹那に雷がヒュドラ目掛けて落ち、ヒュドラに直撃した。ヒュドラは黒焦げになって絶命していた。

 戦闘態勢に入っていた全員が驚き、あの大きな雄叫びを上げた牛の妖獣とは思えないほど落ち着いて無表情なアピスを見た。

 優司がアピスに近づいて話し掛けた。


「あの雷はアピスの力か!?凄いじゃないか!一撃でヒュドラを倒すなんて!」


「あら!知らなかったの!?アピスには朝飯前よ!」


 サラが自分の手柄の様にふんぞり返っている。


「役牛じゃなかったんだ・・・。」


 テュールが呟いた。


「もう一匹いる・・・。」


 みんなが驚いてアピスを見た。


「もう一匹いるから・・・。ヒュドラ。」

「雷のエネルギー貯めるから、時間稼いで・・・。」


 アピスが倒したヒュドラの方向を見据えながら呟いた。見るともう一匹のヒュドラがこちらに向かってきていた。

 全員が我に返り、担当されていた行動に移った。優司は野太刀を抜いて左に回り、テュールは戦斧を携えて右へ回った。トールとリュカオーンがゆっくりと真ん中の首の前へ歩いて行った。

 ダグザが素早く広範囲毒耐性の法術を掛けて全員を保護した。ルイが火の矢でヒュドラの顔を射ると、ルリもファイアーボールをヒュドラの顔めがけて放つ。

 各々が予定の自分の役割の戦闘を行っている。しかしながら、当初予定の心臓を突く必要は無く、アピスの電気エネルギーが溜まるまでの時間稼ぎだ。

 そうしているうちに、ヒュドラの頭の上に雷雲が発生しだした。


「もう大丈夫、みんな離れて。」


 アピスが呟いた。そばで聞いていたフェンリルとヤタ、ヘパイストが大音声で全員へ知らせた。


「みんなヒュドラから離れて!雷が落ちるぞ!!」


 それを合図にヒュドラの近くにいた者たちは素早く散開した。

全員がヒュドラから離れた瞬間にアピスが雄叫びを上げて雷を落とした。

前回同様、雷はヒュドラに直撃し、ヒュドラは黒焦げになった。


「ヒュー!すさまじいな!」


 テュールが黒焦げのヒュドラをみて呟いていた。



全員がアピスの力を称賛していた。アピスの能力のおかげで怪我人は一人も無く、ヒュドラを2匹討伐することができた。

全員が意気揚々とワーウルフの里へ帰り始めると、アピスが一人呟いた。


「俺、言っていた・・・。俺、聖獣って・・・。雷、使えるって・・・。」


 息を吐くような呟きだったので、誰の耳にも入っていないようであった。

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