ギガース
23話
優司達が出発する少し前のちょっと離れたところ。
「兄貴!兄貴っ!あいつら出発の準備をしてやすぜ!どうしやす?」
「ん~っ!まぁ、後を付けるか・・・。」
「あいつらの後を付けて、どうするんですかい?」
「そりゃあ、決まってんだろう・・・!あれだよ・・・。」
「あれってなんです?」
「あれは、あ、あれだ!あれだよ!」
「よく解りやせんが・・・。」
「あいつらの荷物を奪うんですかい!?」
「そ、そうだよ!兄弟達の形見を奪い返すんだよ!」
「形見!?形見なんて今まで一度も気にしたこと無いでやすよ・・・。」
「う~ん、死んだ兄弟達は高価なものは持っていなかったでやすし・・・。」
「いったい、どうしてでやんす!?」
「う、うるさい!とにかく先回りして様子を見るぞ!」
「へいへい・・・。」
2人のコボルトが優司達の一行の様子を伺いながら後を付けていた。
「このまま行くと奴らワーウルフの里に寄るんでやすかね?」
「さぁな!とにかく様子を見るぞ!」
「おい!ちょっと待て!」
「なんでやすか!?」
「しっ!静かに!聞こえないか!足音が・・・。」
2人のコボルトは耳を澄ませた。するとズシンっという足音が近づいて来るのが解った。
「ありゃぁ、なんでやすか!?」
「ばかっ!隠れろ!ありゃギガースだ!」
「えっ!?ギガース!?ギガースって巨人の化け物ですかい!?」
「そうだよ!その化け物だよ!あの巨人は知能が低い分、かなり凶暴だぞ!」
「このまま行くと、やつらと鉢合わせしますぜ!どうしやす!?」
「どうしやすって、おめぇ・・・。様子見だ!」
「様子見ですかい?」
「様子見だ!」
「兄貴・・・。仲間になりたいなら知らせてやっちゃぁいいんじゃないですかい?」
「バカっ!誰が仲間なんかに!あいつらは兄弟達を殺したんだぞ!」
「そうですけど・・・。兄弟っていっても同じ盗賊稼業ってだけでやすぜ!」
「うるさい!まぁ、向こうが頭を下げて仲間になってくれって言って来れば、考えてやってもいいがな・・・。」
そう言いながらギガースが通り過ぎるのを隠れながら待っていた。
一方、優司達の方でもギガースが近づいて来るのに気が付いたようである。
「ちょっと待ってくれ!」
「んっ!どうしたんだ!?優司?」
テュールが訪ねた。
「前から何かが近づいて来る様な気がするんだ・・・。」
「なにか、邪悪な何かが・・・。」
前方の森の中のから非常に大きなものが姿を現した。3メートルは優にあると思われるそれは、優司達を見つけ、真っすぐに襲い掛かってきた。
「ギガース・・・!」
ヤタが呟いた。
優司が一人、野太刀を抜きながら前へ進み出た。
「優司!?」
「優司!」
テュールとヤタの呟きを背に、優司は野太刀を左半身の右脇構え携えた。
ギガースは優司に近づくと、右手を薙いできた。右足を前に出し、俯くような状態である。
優司は攻撃してきたギガースの手を野太刀で斬った。刀であっても野太刀であっても木ノ葉流舞は変わらない。むしろ、野太刀の様な重量のあるものを持つ方が勢いが付いてキレが増す。
左足を左斜め後ろ側に『ズラし』、右足を出しながら体の『反し』を行う。ギガースの打ち出す手に向かって進む様な感じである。
さらに右足を後ろに下げ、反対に体を反して振り向くと同時に、ギガースの右足の膝を膝裏から斬り払った。
膝裏を斬られたギガースは、崩れる様に倒れこんだ。すかさず更なる反しを行い、ギガースの首を斬り落とした。
ギガースが襲い掛かってきてから数分の出来事であった。
その場にいた全員と、少し離れたところで見ていたコボルトは沈黙していた。
優司がみんなの元に戻り、全員に声を掛けた。
「さあ、行こうか」
「いや・・・。すごいな・・・。ギガースを一人で倒すとは・・・。」
テュールが溜息をつきながら話した。
「いやはや、凄い技、凄い剣ですな・・・。」
ヘパイストも後ろで溜息をついていた。
「ちょっと待て・・・!どうやら囲まれた様だ!」
優司は全員に注意を呼びかけた。すると、ゆっくり数人の何者かが取り囲むような形で近づいてきた。
「ギガースを一人で倒すとは・・・。見事だ!君達は何者だ!?」
リーダーらしき者が声を掛けてきた。見ると人間の体に濃い獣の毛を生やし、狼の顔を持った種族であった。
狼の顔をした男は、警戒をしていたが、友好的な感じもしていた。




