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魔王へのレクイエム  作者: 浜柔
第六章 勇者として
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第七十八話

 クケーッ! クケーッ! クケーッ! クケーッ! クケーッ!

「ひゃーっははは! 死ね死ね死ねぇ!」

 \どっかん/\どっかん/

 エミリーは絶好調。しかしリリナが水を差す。

「ちょっとエミリーさん! 一羽くらい通してくださいな!」

「あんだよ、めんどくせぇなぁ。どうせ料理するのはあたしじゃねぇか」

「そうはおっしゃいますけど、エミリーさんは食べたくないのですか?」

 エミリーは口を窄めた。

「……ちっ、しょうがねぇな」

 次々に襲い来る怪鳥をゴンドラから離れた位置で撃墜していたエミリーは、舌打ちをした後で肉付きが良さそうな一羽を選び、手加減攻撃をしてゴンドラの上に誘導する。上でなければ近づける意味が無い。

「おい! 行ったぞ!」

「任せろ!」

 オリエが申し訳程度にだけ隠れたおっぱいをたゆんと揺らしながら跳躍し、正面に迫る怪鳥の首を目掛けて剣を振る。ところがその瞬間に怪鳥が上へと方向転換した。狙いを外れて怪鳥の腹を両断する剣。怪鳥は臓物を、内容物諸共撒き散らしながら甲板に落ちる。

「てめぇ! 腹は斬るなっていつも言ってんだろが! そんなにしちまってどうすんだ!?」

「仕方がないだろう。こいつが急に方向転換したのだから」

 オリエは怪鳥を指差しながら主張した。だが、エミリーには通用しない。

「手抜きしねぇでしゃんとやりやがれ!」

「ぐ……」

 オリエは言葉に詰まる。気楽に剣を振って失敗したのは事実なのだ。完全にエミリーに見透かされていた。

「もう一羽やっから今度は失敗するんじゃねぇぞ!」

「う、うむ……」

 そしてエミリーがまた一羽の怪鳥をゴンドラの上に誘導したところでオリエは跳躍、横を通り過ぎようとする怪鳥の首を目掛けて剣を振る。今度の怪鳥はオリエから遠ざかるように方向転換をする。またも腹を斬り裂きかけた剣をすんでのところで止め、剣を返して翼へと振り抜く。

 クケーッ!

 バランスを崩して錐揉みする怪鳥。その頭を、オリエは再度跳躍して斬り飛ばす。怪鳥は首から血を噴き出させながら甲板に落ちた。

「おーし、やりゃあできるじゃねぇか。これでリリナも文句ねぇな?」

「ええ」

 答えながらオリエを見るリリナ。オリエは渋い顔だ。エミリーが一応褒めているつもりでいるのが解っていても嬉しくはない。

「ほんじゃ、残りをさくさくっと片付けるぜ」

 \どっかん/\どっかん/

 程なくしてゴンドラを襲っていた怪鳥は全て沈黙した。

 すると静かになったのを見計らって、ノルトが船室の入り口から顔を覗かせる。

「終わりましたか?」

「おー、終わったぜ」

「いやあ、助かりました」

 怪鳥が群れを成して襲って来た時は肝を冷やしたノルトであるが、エミリーにとっては肩慣らしにもならない程度だった。

「何てことねぇよ。それよりゴンドラを下ろすぞ。汚しちまったしな」

「はい……」

 甲板の上を改めて確かめたノルトは、血と臓物でぐちゃぐちゃな甲板の惨状に眉尻を下げた。

 エミリーが地面が平ららしき場所を火魔法で焼き払い、更地になったのを見計らって水魔法で消火する。この水魔法は大量の水で敵を押し潰す攻撃魔法だが、火事の消火にも役立つ。ただ、エミリーの場合は火魔法に比べると貧弱で、数回放って漸く火が消えた。

「仕方ねぇだろ! あたしは水魔法が不得意なんだよ!」

 誰に向かっての弁明かは知れない。

 地上に降りたら怪鳥の解体。腹を割いてしまった方は手羽肉とモモ肉だけを切り離して残りを捨てる。もう一羽は手羽肉が片方損なわれているが、残りの全ての肉を枝肉にする。

 女三人が怪鳥の解体をしている間にノルトは甲板の掃除だ。

 肉を捌き終わったら、女三人が血塗れになった身体と服を洗う。ノルトは船室で待機だ。

 その後で、湿った髪を拭きながらエミリーはノルトに問い掛ける。

「で、今日はまだ進むのか?」

「いえ、もう日も沈みそうですし、今日はここに泊まりましょう」

「おう。んじゃ、あたしはこっちを頑張るぜ」

 エミリーが肉の下拵えをし、その肉を焼き始めた頃、寝ていたクインクトが起き出してくる。クインクトが夜の見張りをするので昼夜逆転の生活になっているのだ。その代わりのようにして、リリナがゴンドラの航行を担っている。リリナは暇なのだ。

 香ばしい匂いに誘われて、クインクトが甲板の縁から顔を出す。

「いい匂いだな」

「ちょうど焼き上がる頃合いだ。早く降りて来い」

 オリエが大きく手招きをした。


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