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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE5 『胎動する〝絶望〟(たいどうする〝ディスペア〟)』
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第280話 跡地

駅前で待ち合わせをした優希人と美那は、手を繋いだまま【ミラージュ】の辺りまで戻ってきた。


「……待ち合わせした意味あったのか?」


ふとそんな声を漏らした。


「もう! わかってないな、優希人は」


隣を歩く美那が頬を膨らませている。


「恋人同士のデートっていうのはね、特別なんだよ。お化粧したりお気に入りの服を着ていつもとは違うボクを見てもらいたいし、待ち合わせだって玄関先とか学院の下駄箱とかそんな色気のない場所じゃなくて、どこか普段滅多に行かない所へすぐ行けるように駅前にしたし……」


その割には戻ってきたけどなと優希人は思ったけど口には出さない。


「そりゃあたしかにボク達は学校に行くにもどこかへ出かけるにもたいてい一緒だったけど、もうこれまでとは違う。ボク達はただの幼馴染みから卒業したんだよ」


「何をするにも一緒だったからな。そのせいかいまいち実感が湧かないんだよな。手だって昔はよく繋いでたし」


「でもさ、それって小学校入る前とかでしょ。入ってからどんどん減ってったし。優希人はボクと手を繋ぐのイヤ?」


「そんなわけないだろ。こうして繋いでると昔を思い出すけど、でもその時とはまた違ってドキドキするっていうか。まあ、ぶっちゃけ嬉しい」


「うんうん。すこしずつ素直になってきたね。その調子でもっとデレてね。っとここ、ここ」


「ここは……」


【久遠舘学院】は山を登っていく坂の途中に建っている。それでも全行程から見たら玄関口辺りになるわけだが、その学院敷地手前のy字路の脇に坂とは真逆に下へ向かっている、長いが緩やかな階段がある。その先は霧園温泉街へと続いている。


島に人が住み始めた頃から湧いていて、次第に温泉を中心に島が栄えていったという経緯がある。


「懐かしいな」


優希人がこぼす。

彼が〝こちらの世界〟に来て二年と少し経つ。しかし三週間ほど前までは記憶が無かったために、この場所を訪れても何の感慨もわかなかった。


「ボクはそこまで懐かしくは思わないけどね。だってついこの(・・・・)間まで(・・・)通ってた道だもん」


そう。その階段はかつて二人の通学路だった。


「こう見ると、違う世界だなんて思えないよな」


「うん」


手を繋ぎながらゆっくりと階段を降りていく。


「もうすぐだね」


緊張しているのか美那の手に力が入る。


「ってことは行き先は……」


「うん」


やがて階段が途切れて視界が開けた。


「これは───」


二人の目にまず飛び込んできたのは、こじんまりとした赤い鳥居。そしてその奥に小さな社が建てられていた。


「神社……だよね?」


敷地としてはそれほど広いわけではない。ちょうど二人の家を合わせたくらいのおよそテニスコート三面分(穂村家の道場の敷地含む)くらいの広さだ。


敷地の奥に真新しい社があり、参道の脇に遊具が見られることから公園としての役割も備えているようだ。


「ねえ、あそこ」


美那が社の傍に掲示板のようなモノが立てられているのを指さした。


「行ってみようか」


そして掲示板の目の前までやってきた。


「えっとなになに……。『ここには2012年の飛行機事故で亡くなった二組の家族が住んでいました。彼らの魂の安寧と、凄惨な事故が二度と起きないように彼らを祀りここに社を建立しました』だって」


「なるほど。交通安全の御利益があるみたいだ。観光地がすぐ傍だしこれはこれで好都合なのかな」


「温泉街でお守り買って、ここでお参りするといいらしいよ」


美那がスマホで検索してその画面を見せた。


神社の敷地で売っていないのは、社務所を構えるほど大きくも広くもないためかと思われる。


「買ってくる?」


「……そうだな。遅くなったけどこの世界の俺達に挨拶しておこうか」


「うんうん。ちゃんと優希人と結ばれたから安心してねって伝えなきゃ」


「この世界の俺達も仲が良かったか分からないぞ?」


「だいじょうぶ! 梨遠姉が仲良かったって言ってたから」


美那は心底嬉しそうに微笑んだ。


「そうか。ならオレも伝えなきゃな」


ぼそっと呟く。


「え? なになに?」


「なんでもない」


恥ずかしかったのか優希人は誤魔化して歩き出す。手を繋いだままなので美那はちょっと引っ張られる形でついていく。


「どうせだから温泉街を少しぶらついてどこか店に入ろうか」


「今日もめちゃくちゃ寒いし、温泉入るのも手だよね」


「それはそれで帰りたくなくなりそうだな」


「え? お泊まり? もう、優希人ったら、ダ・イ・タ・ン」


「そこまでは言ってないが。機会を見て……な」


美那は一瞬目を見開いて、そして少し頬を赤く染めた。


「……うん」


そうしてふたりは温泉街へ向けて歩き出した。




つづく

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