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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE5 『胎動する〝絶望〟(たいどうする〝ディスペア〟)』
279/525

第278話 たまの休日

───一月十日 日曜日───


スマホのロック画面には『9:55』と表示されている。


「一〇分前はさすがに早かったか?」


穂村優希人は待ち合わせ場所である久遠舘駅前で呟いた。


「一緒に出かける時に待ち合わせなんてしたことなかったしな。この辺りの感覚がまだよくわからないけど」


今日は明星美那と出かける約束をしていた。早い話がデートである。

とは言え、かつては家も隣で通学時も一緒に外出する時も、玄関を出たところで合流を果たしてしまっていたので〝待ち合わせ〟という行動に疑問……とまではいかないものの戸惑いを覚えていた。


「ゆきと~!」


小さな駅前ロータリーの反対側で、大きく手を振っている美那の姿を見つけた。

優希人が手を振り返すと、彼女は満面の笑みを浮かべてロータリーに沿ってぐるっと駆けてくる。


「お、おまたせっ!」


優希人の目の前までやってくるとすぐに息を整え、またにこっと微笑む。わずかに上気した顔は寒さからか、駆けてきたからか、はたまた照れているからか。


「ま……待った?」


「……今来たところだ」


そう答えるのがベストだと、さすがの優希人でも心得ている。


今来たところではないことくらい美那は気づいている。何せ住んでる建物は同じで、待ち合わせ場所までの道のりも同じ。そして向かう自分の前方に姿が見えないのだから、自分よりも早く着いたことくらい分からないわけがない。


しかし受け答えを含めてお気に召したようで、美那の頬がさらに緩む。


「それと───」


「なに?」


美那の今日の服装を見る。

下は足首まで隠れる薄めのブラウンのフレアスカートに上はブラウンのニットを着てその上からベージュのフリースジャケットを羽織っている。

髪は下ろしていて、薄らと化粧をしているのが分かる。


普段化粧っ気がほとんど無く、動きやすい恰好を好む彼女が、この日ばかりはまるで別人のように見えた。もの凄い気合いの入れようだ。


「…………」


「優希人?」


呼ばれてハッとした優希人。


「わるい。ちょっと見とれてた」


「え? 見とれて……?」


美那の頬が少し赤みを増す。


「ああ。ずっと美那のことを見てきたつもりだけど、まだまだ知らないお前がいるんだなって」


「ボクだって女の子だからね。好きな人のためならどんどん可愛く綺麗になれるよ」


えへへとはにかむ美那。


「じゃあ、オレも負けないようにしないとな」


そう言って優希人は手を差し出した。

その手を美那はきゅっと握った。


「それで? 今日はどこに行くの?」


「どこと言っても、〝向こう〟と大差ないからな……」


「大アリだよ。だってデートだもん。〝向こう〟にいた時とは、恋人になる前となった後では全然違うの」


と美那は力説する。


「お、おう」


それにたじろぐ優希人。


「でもそうだね。どうせなら知らない所に行きたいな~」


少しだけ考え込む仕草をしてから、心当たりがパッと閃いたような顔をした。


「だったらあそこ行こう」


「あそこ?」


「うん!」


美那は繋いだ手を引いて歩き出した。




その頃【ミラージュ】では、榊原梨遠がとある人物と待ち合わせをしていた。


「お待たせしました」


ブレンドコーヒーを手に席に着く。その正面では待ち合わせ相手であるジョシュア・シェフィールドがノートPCを開いていた。


「いえいえ。仕事をしながらでしたので」


そう言ってノートPCを閉じた。


「失礼します」


二人の座るテーブルの所に女性スタッフ───天原羽衣がやってきた。


「頼む」


「了解」


梨遠が声をかけると、彼女は右手を人差し指だけ立てた状態にしてテーブルの真ん中をちょんと軽く叩いた。


「これで周りにお二人の話している内容は聞こえませんし、周りの音も聞こえません。このテーブルのことも気にならなくなるので、傍を通っても誰も気にしません」


「おお、たしかに」


ジョシュアが周りの音が聞こえないことに軽く感動していた。


「部外者が学院内や本部内に入るのには面倒な手続きがいくつかあります。なのでこちらの方がお互いに都合がいいでしょう」


「ええ。こちらは一応休暇中なので助かります」


「それではごゆっくり」


羽衣がテーブルから離れていった。


「彼女も【異能研】の?」


その後ろ姿を見送りながらジョシュアが訊ねた。


「はい。いつも助けられています」


梨遠はコーヒーに口をつける。


「それで先日ご連絡いただいた件ですが……」


梨遠が切り出すと、ジョシュアは視線を彼女に戻した。


「【異能研】代表・『龍宮(たつみや) 茉莉(まつり)』様は現在大変お忙しいらしく、今はお会い出来ないそうです」


「それは先日の流れ星の件ですか?」


娘さん(・・・)からお聞きのようですね。詳しくはお話出来ませんが、その通りです。代わりに話を聞いておけとのことなので、私でよろしければお伺いします」


「構いませんよ。貴女のことも()から聞いています。とても信頼出来る方だと言っていましたよ」


「それが本心なら光栄ですね」


と苦笑いを浮かべた。


「では早速ですが本題に移りましょう。私共(わたくしども)が今回お話させて頂きたいのは、この地に眠る巨大な隕石のことです」




つづく

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