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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE4『再来する〝終末〟(さいらいする〝ワールドエンド〟』
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第255話 再来する終末 その八

慧太郎は目を閉じる。


暗闇の中にぼんやりと灯る明かりが視える。

どうやらそれが〝(えにし)〟であるようだった。それは───、


(温かい、黄金色(こがねいろ)の光が視える。あれは……)


〝彼〟にとって勝手知ったる境内。その方角にあったのが御神木であるのをすぐ思い出す。そしてその向こうに、今頑張っている恭香達の姿が透けて見えた。


(どう言う理屈かは分からないけど、この空間の摂理から逃れている。宗十郎の結界と恭香の舞のおかげか……?)


そしてもう一つ、〝縁〟の繋がる先があった。


(これは……)


慧太郎の正面。

距離を考えると、そこに居るのは凛。そして〝応龍〟。


(真っ黒な靄に隠れた銀色の光。雲に隠れた月のようだ)


〝縁〟の〝力〟。

八澄に伝わる八つの真なる心の〝力〟。


それを一つに束ねる。


(ん……?)


手の中に温かな光がある。

慧太郎の手にしている、かつて咲夜から贈られた一振りの日本刀だ。


(これは……? 御神木と同調しているわけじゃないのか?)


よく視ると、それは彼のすぐ隣の気配とよく似ていて、そちらに同調しているのだと気づいた。そして、


(え……?)


ほんの僅かであるが、二つの温かな光と、月を隠す黒い雲───〝応龍〟と繋がっているようだった。


(そういえば『海の眷属』とまつり姉さんは言っていた。そして連れ帰るとも)


それに伴って〝応龍〟の様子が思い出される。


(〝応龍〟はまつり姉さんを恐れて……いや、畏れていた。それはつまり……)


茉莉であって茉莉でない〝彼女〟が何者か。

慧太郎の中でそれが定まりつつあった。


『けい…………ん』


ふと慧太郎の意識に入ってくるモノがあるのに気づいた。


『慧太郎さん……』


それは慧太郎を呼ぶ〝声〟だった。


(この声は……)


正面の暗雲に隠れつつある月に目を向けると、目が合ったような、心が繋がったような不思議な感覚に包まれた。


『私がこの子の心臓の代わりに埋め込まれている石っころだということは、既に聞き及んでいることと思います』


(はい……)


『そして〝応龍〟は、この石自身を核として封印しています』


(それも聞きました)


封印の術式とは、物理的にも霊的にも極めて強固な結界の内側に半永久的に閉じ込めておくことであり、結界を得意とする八澄の流派でも高度な部類に入る。


中でも霊的な〝力〟を持つ物質の内側に強大な〝力〟を持つ妖魔を封じ込めるには、物質自体を結界・封印の核とする場合が多く、その効力は術者の技量と物質の〝力〟に大きく左右される。


そして八澄の記憶と〝力〟を受け継いだ慧太郎には、彼女の言葉が何を意味するか、どういう結末に辿り着くかが、すぐに理解できた。


『〝レイン(わたし)〟と〝応龍〟はこの石の中で常にせめぎ合ってきました。普段は〝力〟を抑えられているものが、満月の晩になると〝応龍〟の〝力〟が増して表面に出てきてしまうのがいい例でしょう。そして今、この空間にいることで〝応龍〟の〝力〟が満月の比ではないくらいに増大し、私を侵蝕し、やがて飲み込まれてしまうやもしれません』


(そんな───! どうすればそれを止められる?)


自分が到達した考えが外れている可能性に一縷の望みをかける。


『方法はたった一つ』


(それは……?)


『〝蒼月石(わたし)〟を斬ることです』


(───っ)


彼女が示したのは、彼が考え、辿り着いた、最悪の方法とまったく同じものだった。


『〝蒼月石(わたし)〟を斬ることで一旦〝応龍〟は封印から解き放たれてしまうでしょう。ですがそれが最後のチャンスです。それを逃してしまえばヤツはこの空間の〝力〟を利用して、本当に(・・・)応龍(・・)になってしま(・・・・・・)うでしょう(・・・・・)


(でもレインも斬ることに……)


『そのお心遣いはありがたく思います。ですがそろそろ、この身体を本来の持ち主に返さなくてはなりません』


(凛に……)


『はい。本来、彼女こそが『レイン・アンネリーゼ・エーベルヴァイン』と呼ばれるべき真の人物なのですから。それに……』


レインは続ける。


『この龍はもう既に手遅れです。海神(わだつみ)は大海原への帰還を望んでおられるようですが、〝この龍(かれ)〟は闇に染まりすぎてしまった。たとえそれが、騙されて闇に身をやつすことになったのだとしても』


(騙されて……?)


『時間がありません。私の意識はもう───』


「…………やるしか、ないのか」


〝茉莉〟は彼の様子を静かに見守っている。


『神樹が光ったかと思えば、何やら妄言まで聞こえてきよる』


一瞬の違和感。


「今しがたの邂逅は、あのモノにとっての刹那だったようですね」


〝茉莉〟の一言で違和感それは跡形もなく消えた。


『ふん。エニシだか何だか知らぬが、所詮は矮小なるヒトの所業。神の眷属、いや、最早神となった吾に敵うモノなどこの世にはおらぬ』


〝応龍〟の全身から赤い月明かりすら遮るほどに闇が噴き出して、封印の器(りん)までをも飲み込もうとする。


「妄言ここに極まれり」


茉莉が闇に閉ざされた空を仰ぐ。


『なに?』


〝応龍〟が〝茉莉〟の視線の先を追う。


「貴方が小馬鹿にしたヒトの所業。そして〝(えにし)〟の〝力〟。決して侮れるモノではないと覚えなさい」


『なっ───!?』


赤い月夜に亀裂が走る。


「凛を返してもらうぞっ!」




つづく

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