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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE4『再来する〝終末〟(さいらいする〝ワールドエンド〟』
248/525

第247話 開演前

襲撃は夜であることが星明の未来視で判明したので、それまで各自準備をしておくこととなった。


舞を舞う恭香や茉莉、その他の面々も舞の準備を手伝う為に出払っている。


そして特に役割の無い慧太郎は、いつもの如く(・・・・・・)御神木の根元に座り、幹に寄りかかっている。


同じくする事の無い凛も、彼の膝を枕にして眠っていた。

慧太郎はその頭を優しく撫でている。


「慧太郎」


顔を上げると巫女装束の上に千早(ちはや)を纏い後は舞うだけとなった恭香が立っていた。


「もう準備は終わったの?」


「見ての通りよ」


彼の膝枕で眠っている少女を一瞥すると恭香はぶっきら棒に言った。


「ちょっと前までは普通の幼馴染だったのに……」


「うん?」


「その子が来てからメチャクチャよね」


「恭香?」


少し怒った風な恭香を慧太郎が見上げる。


「なんだか、慧太郎が知らない人間になっちゃったみたいに思えるのよ」


「僕は僕だよ」


「うん。分かってる。慧太郎は慧太郎。それは変わってないのも分かるの」


「じゃあどうしたっていうのさ?」


「それは、その……。慧太郎を……のは私だけ……のに……」


顔を赤くしながらボソボソと呟いている。


「恭香?」


「だからっ、その……」


「やっぱりここに居たのね」


恭香が何かを言おうとした所へ茉莉がやってきた。恭香と同じく巫女装束の上に千早を羽織っている。


「ま、茉莉様っ……」


「あら、お邪魔だったかしら?」


意地の悪い笑みを浮かべている。


「し、知りませんっ!」


恭香は走り去っていった。


「あらら。怒らせてしまったかしら」


「恭香も緊張してるのかな?」


「叢くんてば相変わらずね」


茉莉は額に手を当てて溜め息を吐いた。


「まあ、今に始まったことじゃないか」


「まつり姉さん?」


「ううん。なんでもないわ。それよりも本当叢くんはこの場所好きよね」


茉莉は御神木を見上げた。


「昔も言ったかもしれないけど、ここはとても落ち着くんだよ」


慧太郎も茉莉に倣うように見上げる。


「戦いの前に心を落ち着けようと思ったら自然とここに足が向いたんだよ」


「その子に膝枕してるのも心を落ち着けるため?」


茉莉がジト目で凛を見る。


「いや、これはいつもみたいについてきただけなんだけどね。ところでまつり姉さん、僕に何か用があったんじゃないの?」


「用という程のことじゃないんだけど、神楽殿に行こうとして叢くんの姿が見えたから声を掛けていこうかなと思っただけよ」


そう言って境内の外、海神浦(わだつみうら)の方を顔を向けた。


「護衛も無しで姉さん一人で舞うんだっけ?」


「ええ。【龍宮神社】に伝わる極秘の舞だからね。誰にも見られるワケにはいかないのよ。人払いの結界を張るくらいにね。それと一緒に破邪の結界も張ってるから心配いらないわよ」


「恭香にも見られたらいけないの?」


「ええ。あの子にはまだ教えてないわ」


「それほどの舞……。さしずめ、まつり姉さんの切り札ってわけだね」


「そういうことになるわね」


自信満々の満面の笑み。


「それじゃあ、そろそろ向こうで準備するから」


軽く手を挙げて茉莉が去って行く。


「こっちは任せて」


茉莉はそれに微笑んで応えた。




【龍宮神社】の拝殿と本殿は屋根付きの廊下で繋がっている。

無論、普段は立ち入る事は出来ない。

拝殿における祈祷の際に見える程度である。


そこは神楽殿も兼ねていて、現在、谷曇宗十郎を中心にそこでも舞の準備が進められている。


「床に五角形が描かれております」


宗十郎が言うと全員床を見た。


そこには宗十郎の言う通り大きな正五角形が描かれている。

直径七メートルくらいの円の内側に描かれた程の大きさだ。


その正五角形の本殿に一番近い頂点に宗十郎が立っている。


「儂から時計回りに星明殿、織村由梨(さくの)殿、木ノ花風花(すずか)殿、そして緋野士郎(あにうえ)。頂点にお立ちください」


四人は言われた通りに各頂点に立つ。


「あの……」


あぶれた麻衣が手を挙げる。


「辻川さんは現世でも前世でも、儂らのような〝力〟をお持ちではありませんので、どうか五角形の内側のお好きな場所に居てください」


「なら私の傍に居ればいいわ」


星明が手招きをした。


「は、はい」


「沙耶殿……辻川さんは儂らとは別に重要な役割がありますので」


「皆さんとは別に?」


宗十郎は頷く。


「それは巫女殿が参られてから説明いたします。他の皆様は足下に置かれています注連縄を、五角形の内側からお持ちになって下さい」


全員言われた通りにする。


「これは外側と内側を隔てる、いわゆる結界で御座います。如何なる事があろうとも離してはなりませんぞ。この内側に居ればあれば何が起ころうとも、何モノも危害を加えることは叶いません。もしこの五角形の結界が崩れてしまえば、恐らく外側で戦っている方々の命運は尽きてしまうことでしょう。ご存知かとは思いますが、それほどの強敵で御座います」


誰かの唾を飲み込む音が聞こえた。


拝殿の影から恭香が姿を見せた。


「辻川さん」


「は、はい」


呼ばれた麻衣は背筋がピンと伸びた。


「これからこの五角形の内側で、巫女殿が舞を舞います。どうかそれを見届けていただきたい」


「見届ける? それだけですか?」


「はい。貴女には我々のような〝力〟はありませんが、過去から繋がる(えにし)があります。巫女殿と貴女は幼少からのご友人。なれば貴女を通じて現代(いま)と過去の(えにし)を繋ぐ橋渡し役に相応しいかと」


転生者の中で唯一の一般人である辻川麻衣(さや)。彼女と、転生者ではない恭香には深い(えにし)がある。


その縁を麻衣を通して転生者達との縁を繋ぎ、敵と戦う者達の〝力〟とする。ということだ。


「……分かりました。私でもお役に立てるなら」


「十分ですよ。貴女が居てくれるだけで、儂は頑張れます」


「え? それって……?」


過去、宗十郎が沙耶に惚れていた事を知っている風花(すずか)由梨(さくの)士郎(せいくろう)の三人は笑みを浮かべる。


そこへ恭香が由梨(さくの)風花(すずか)の間から五角形の内側に入ってきた。


「何か楽しい話でもしてたの?」


そう麻衣に訊いた。


「楽しい話? なんで?」


「そこの二人ニヤニヤしてたから」


由梨(さくの)風花(すずか)を指差した。


「その話は後にした方が良さそうですぞ」


宗十郎がそう言うと、何処からか冷たく重い空気が流れてきた。


「巫女殿」


恭香も妖しい気配を察し、舞に集中して入るためにすっと目を閉じた。




つづく

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