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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE4『再来する〝終末〟(さいらいする〝ワールドエンド〟』
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第246話 専門家たち

「私が視た災厄の到来は、赤い月が浮かぶ夜。そして龍の復活」


星明が厳かに告げる。


「夜。それも月が昇ってこないことには分かりませんね。雲が出ていたり、急に赤くなったりするかもしれません」


「それでまつり姉さん。僕らはどう動く?」


茉莉は浅陽の方を見る。


「まず奴らを迎え撃つのは浅陽さんにお願いします」


「了解です」


真剣な表情の浅陽。


『例の件は頼んだぞ、浅陽』


「わかってるって」


「?」


独り言を言う浅陽に恭香は首を傾げる。


「そして叢く……慧太郎さんもお願いします」


「うん。わかった……」


「ちょっと待ってください、茉莉様!」


慧太郎が承諾したところに、待ったをかけたのほ龍宮恭香だ。


「慧太郎が戦う? 化け物と? いくらなんでも無茶です!!」


彼女からしたら至極当然の言い分だろう。


いくら当時の誰かの転生というのを百歩譲って認めたとしても、それが例え陰陽道の大家の跡継ぎだとか、例えば剣の腕が達人の域に達しようしたいたとしても、それを知っている筈もないし、頭で理解しろというのも無理からぬ事だ。


龍宮恭香からしたら彼は薄雲慧太郎でしかないのだ。


「恭香」


静かに幼馴染の名を呼ぶ声は、それほど大きなものではなかったが、興奮気味の彼女の耳に何の障害もなく吸い込まれていく。


「なによ、慧たろ───」


目が合う。


いつもの薄雲慧太郎───ではない。

見た目は同じ。

しかし何かが違う。


幼馴染を見ている筈なのに、まったく知らない人間と見つめ合っているような感覚がある。

それが彼の前世の人物であろうことはすぐに思い当たる。


慧太郎には無い力強い眼差し。

だけどとても静かで穏やかな、そんな人物像が浮かんだ。


「僕は……」


慧太郎が口を開いて、恭香はハッと我に返った。


「僕は、いや僕達は、この出来事を収める為に生まれ変わってきたんだと思う」


「慧太郎……」


「僕達の手で決着をつけなくちゃいけない。だけど……」


慧太郎の眼差しから恭香は目が離せない。


「今度勝てるという保証はない」


「だったらなんで戦うのよっ?! そんなの専門家に任せればいいじゃない!」


恭香は浅陽を指した。


「だったら尚更だよ」


「なんでよっ!」


「僕も専門家の一人だから」


「えっ?!」


驚愕の表情を見せる恭香。


「僕の昔の名前は八澄叢丞。八十年くらい前までこの辺りにあった結界に特化した陰陽道の家の跡取りだった」


緋野士郎が僅かに俯く。

彼は彼で思う所があるのだ。


「八澄って、あの〝封印守(はかもり)〟の……?」


「知ってたんだ」


「う、うん。茉莉様から何度も聞いたことがある」


慧太郎が茉莉を見ると、ニコっと笑顔を返された。


「そんなわけで僕も専門家なんだよ」


「───っ」


恭香は言葉に詰まった。


「そんな事を言ったら私達も専門家じゃないですか、恭香さん」


「私達も?」


「神を祀り、邪なるモノを鎮める。貴女に教えてきたのはそういう神楽です。お忘れですか?」


「あ……」


「だから貴女は、舞殿で魔を祓う神楽を舞って、直接戦う彼らの援護をしてください」


「私が……?」


「はい。次代の〝龍宮の巫女〟である貴女が」


「でも……」


恭香は尻込みする。


「心配いりません。強力な結界を張って、その中で舞ってもらうので」


「儂の出番ですな」


「お願いします、宗十郎ちゃん」


それを聞いた恭香はギョッとした。


なにせ、見た目が(・・・・)自分と変わりない歳の女性が、老人に向かってちゃん付けで呼んだのだ。


転生云々の話は先程聞いたが、まだ完全に理解したわけではないし、まだ目が慣れて(・・・・・)いない(・・・)


「ほっほっほっ。懐かしいですな」


老人の方も気にした様子はない。


「ん? 谷曇の家に結界術なんてあるの?」


疑問に思った慧太郎がそう訊ねる。

谷曇家と言えば、祈祷師の流れを汲む医術に長けた家だと記憶していた為だ。


「ありますとも。仮にも八澄の分家で(・・・・・・)すから(・・・)


「はい?」


返ってきた意外な答えに思わず慧太郎は訊き返した。


「そうか、やっぱりあんたは知らないんだな」


口を開いたのは緋野士郎だ。


「士郎?」


「俺もあの軍服の男に言われるまで知らなかったんだが、どうやら本家と分家は逆だったらしい」


「本家と分家が逆?!」


「ああ。昔二つの家でイザコザがあったらしい。その時に谷曇の方がのし上がって本家を名乗り出したようだ。まあ、下克上ってやつだな」


慧太郎は隣に座る風花(すずか)を見る。


「本当のようですよ。木ノ花の家で色々調べていた時に見つけたのですが、元々は私達───八澄の家が本家だという文献が存在しました。だから私もビックリしちゃいました」


「昔あんたに言われた通り、俺は本家であることを笠にきて我儘放題していた。真実を知った後も引っ込みがつかなくてそのまま……」


士郎はそのまま項垂れる。


「そうか」


慧太郎は感慨深げに漏らした。


「言われてみれば本家の人間が八澄家(うち)に修行に来るのは、なんだかおかしい気がするよ。僕達が本家に行く方が筋が通るし」


「ご納得いただけましたか?」


「うん」


意外な事実に驚いた慧太郎だが、老人の人懐っこい笑顔を見て昔に思いを馳せるのだった。




つづく

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