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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE4『再来する〝終末〟(さいらいする〝ワールドエンド〟』
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第191話 凛⑥

午後になって、電話で訳を話し剣術の稽古を休ませてもらう旨を伝えると、咲夜は叢丞の部屋まで乗り込んできた。


「叢丞……、お前〝力〟が」


そして叢丞を見るなり言った。


「さすが咲夜。やっぱり分かるんだ。僕自身はまだはっきりと分からないんだけど」


「ずっと〝力〟の無い生活をしてたんだ。少々使い方を忘れているのかもしれんな」


「そうなのかな……。まだ実感がわかないや」


叢丞にはまるで他人事のように思えてならなかった。


「それに関しては今後も視ていこう。それより、電話で言ってた事を詳しく知りたい」


「それは構わないけど、稽古の方はいいの?」


「それは父に任せてきた。というよりもむしろ父が聞いてこいと言ってな」


水薙の家では当主は直系の女性、伴侶となる男性はその補佐を務める決まりとなっている。その為、女性の地位が高い。


次期当主である咲夜は現当主の母の次に高く、事態の把握をする為に忙しい母の代わりに送り出された。


「ちょっと長くなるよ」


叢丞は縁側の障子を閉め切ると、颯季に話したのと同じ事を話した。


「……なるほど。その〝レイン〟という少女の封印と、お前にかけられていた封印らしき術が反応して、〝力〟が少しずつであるが解放され始めたと」


「そんなところだと思う」


「ふむ」


咲夜はあごに手をつき考え込む仕草をしている。


「その〝レイン〟……いや〝凛〟か。ひょっとしたら龍神伝説と関係があるかもしれないな」


「彼女もそんなようなことを言っていたよ。でも陰陽師じゃなくて魔術師だと名乗ったよ」


「魔術師……。欧州の術師か。だがその違いは大した問題じゃない。地下に封印されていたという時点で、お前の家の使命と重なる」


邪悪な妖魔を封印しそれを守り続ける八澄家の使命のことを咲夜は言っている。


「それは邪悪な妖怪だって聞いてるけど、彼女がそうは見えないよ」


「それは分からないぞ、叢丞」


「え?」


「何らかの機を狙っていて今は大人しくしているということも考えられる」


「そう、なのかな……」


「まあ、お前の見立てなのだから、そう間違ってもいないだろう」


龍を封じた陰陽師。


八澄家の地下に封印されているという邪悪な妖魔。


そして〝応龍〟をその身に宿し、地下に封じれらていたレイン。

一見、すべてが符合するようだが、叢丞はそれに納得出来ないでいた。


「それにしても〝応龍〟か」


「そう自分でそう名乗っていたと、レインは言ってたよ」


「なら、これからは少し警戒する必要があるかもしれないな」


「でも今は抑え込んでるって……」


「しかし、龍を封印した陰陽師は月に一、二度程度だが暴れたという言い伝えもある」


龍神祭の発端の一つである〝龍神伝説〟には続きがある。


暴れ回っていた龍を陰陽師が自らの身に封印した。しかし月に一度か二度、その陰陽師が化け物の姿になって暴れ回ったという物だ。


「それを知った陰陽師は自らを封印し眠りに就いた。最早疑いようもなく、彼女がその〝陰陽師〟だろう。そして彼女が暴れたというのはおそらく……」


「満月の晩、ということだよね」


妖魔───つまり闇の眷属の活動が満月になると活発になるというのは叢丞達の中では常識として存在する。


「その通りだ。そして十中八九、その妖気に誘いざなわれるようにして他の妖魔も姿を現わすだろうな」


「そしたら一番に狙われるのは……」


「真っ先に弱い女子供が狙われるだろうな」


同時に叢丞の頭に浮かんだのは、妹の涼香だった。


「だからと言って、彼女を殺してしまうというのは下の下だろうな。封印が解かれて〝応龍〟が復活してしうだろうからな」


「そんな選択肢は初めからないよ。だって彼女は自ら犠牲になって封印の器になってるんだから。彼女だって被害者には変わりはないよ。〝応龍〟のね」


「叢丞らしいな」


「そうかな」


二人は同時に微笑んだ。


「まあ、〝応龍〟への対策は追い追い考えるとしてだ、奴の妖気に釣られて出てきた連中なんだが……」


「ねえ、咲夜。そいつらは僕達でなんとかしない?」


「なんとか、とは?」


咲夜は真面目な顔で訊き返した。


「〝応龍〟をどうかしようとかはさすがに無理だろうけど、有象無象の妖魔なら今の僕達でも対処出来るんじゃないかな」


「……ぷっ、あはははははは!」


突然咲夜が噴き出して笑った。


「な、なんだよ。僕何かおかしなこと言った?」


「いや、悪い。そうじゃないんだ」


「じゃあなんだよ?」


とまったく同じ事を考えていたんでな」


「同じ事を? じゃあ何で笑うのさ」


「なんだか嬉しくてな。それで具体的にはどうするんだ?」


「そうだね……。まずは夜の見廻りかな」


少し考えるような仕草をしてから叢丞はそう答えた。


「それは肝要だろうな。そうだ、こんな事もあろうかと先日お前にやったあの刀。あれを使う時が来たようだな。お前のことだから使い所が無いと部屋にでも飾ってあるんだろう?」


叢丞の誕生日に咲夜から贈られた一振りの刀。ズバリ咲夜の言う通り使い所が今のところが無いので部屋に飾ってあった。


「そして幸いなことにお前の〝力〟も戻り始めた。勘を取り戻す為にも早速今夜からでも……」


突然咲夜が言葉を切ると、人差し指を口に当て縁側に面した障子を睨みつけた。


「咲夜?」


「しっ!」


静かにしろという合図で叢丞は口を噤んだ。その様子から誰かが話を盗み聴きしているのだと叢丞は察した。


そして咲夜は音を立てずに障子に近づくと、躊躇いなく一気に開け放った。


「ッ!?」


障子を開け放ったそこには・・・・誰もいなかった。


そこには居なかったが、叢丞が一歩部屋から出ると、隣の部屋との境目にある柱の所に居た犯人かれを見つけた。


「宗十郎?」


谷曇清九郎の弟、宗十郎。彼が少し顔を青くして立っていた。




つづく

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