第27話 二年目① 祈り
オルダートン侯爵邸。
一年が始まる、一月一日の朝。
サロンの大きな窓。
カーテンを開けて、朝日を取り入れる。
父、レジナルド、それからパーシー。
アデレインを含め四人で朝日を浴びながら、今年の祈りを始める。
朝日に『祈りの実』を透かし、琥珀色に輝くのを見つめた。
「お義母様、ヒューイ様がくれた祈りの実は、とってもキラキラしています」
「……そうだったわね。パーシーの実はヒューイ様が拾ったんだわ」
「パーシー、僕の実もキラキラしているよ。拾ってくれてありがとう」
「ああ、私のは大きいな」
「うん。お義祖父さまのは大きさを重視したの。お義兄様のはきらきらしているのがいいかなぁって」
「そうか。パーシー、ありがとうな」
父がパーシーの頭を撫でる。
以前は人見知りが強かったのに、ヒューイ様に撫でられ慣れたせいか、くすぐったそうにするだけで、受け入れるようになっていた。
(……悔しい)
アデレインではできなかったことを、あの人は容易くするのだ。
「お義母様?」
「……さぁ、祈りましょうか?」
「うん! 今年も素敵な一年になりますように」
パーシーの声に合わせて、アデレインたちは目を閉じ、小さく祈る。
そして、祈り袋に祈りの実を入れ、紐でぎゅっと締める。
アデレインの青い袋。ヒューイ様が施した刺繍。
これが今年一年、アデレインとともにある祈り袋。
(落ち着かないわ)
アデレインは思わずため息を吐いた。
* * *
「お兄様の実、とっても綺麗ね」
「ああ、パーシーが選んでくれたんだ」
「さすがパーシー様ですわね。でも、わたくしの実も素敵でしょう? 形が可愛いのにしましたの」
そう言って、クラリッサがヒューイに得意げに見せてくれたのは、ころんと丸みを帯びた実だった。
光に透かすと、真ん中がほんのりと琥珀色に輝く。
「ほら、ふたりとも騒いでいないで祈りますよ」
母上の声に、クラリッサが姿勢を正し、小さな掌でぎゅっと祈りの実を包む。
ヒューイも同じように掌で包んで、静かに祈る。
脳裏に浮かぶのは、愛しい人の姿。
彼女の大事なパーシー。
(どうかふたりと共にいられますように)
そこまで祈って、なんだかこれは祈りというより単なる願望だなと思った。
(……みんなが幸せでありますように)
毎年の祈りに、ふたりの姿も加えて、もう一度祈り直した。
そして、掌の中の実を、祈り袋へと仕舞う。
灰青色の祈り袋には、金の糸でヒューイのイニシャルとブランデルウッド公爵家の家紋が刺繍されている。
ヒューイの刺したのとは違い、でこぼことしていない。流れるような綺麗な刺繍は、まるで彼女のようだった。




