第17話 聴取
「で、アデレイン? どういうことなのかしら?」
コルネリアは、ヒューイ・ブランデルウッドを見送るとアデレインを振り返る。
夫はすでにコンスタンスを腕に抱え、パーシーを引き連れて部屋へと戻っていた。
「……どういうことと言われましても」
困ったように眉尻を下げるアデレインの腕を掴み、自室へと連行する。
その間もなにやら言い訳のような言葉が聞こえてくるが、ゆっくりと話を聞く必要があった。
侍女に紅茶の用意をさせてから、人払いをする。
ぱたりとドアが閉まり、足音が遠のいたのを確認してから、アデレインへの尋問を始めた。
「いつから恋仲に?」
「恋仲なんかじゃありません!!」
ヒューイ様からの婚約申し入れがあったせいか、アデレインは感情が高ぶっている。
先ほどもヒューイ様に向けて叫んでいた。
(そもそも……この状態がアデレインにしては珍しいと気づいていないのかしら?)
十六歳で婚約した時でさえ、アデレインは静かだった。
コルネリアがありとあらゆる抵抗をしても冷静に対応していたというのに、その彼女が、今、とても動揺して、他人に向けて声をあげたのだ。
(ヒューイ・ブランデルウッドね……)
評判が良いとか悪いとか、こちらで調査できる相手ではない。
筆頭公爵家の三男。下手に情報を集めて、公爵家の逆鱗に触れるようなことになってはならない。
(一応、旦那様に確認するとして)
ただ、コルネリアの主観としても悪い相手とは思えない。
家柄は言うまでもなく、顔もいい。仕事に関していえば、アデレインが庇うぐらいなので、まぁ問題ないのだろう。
そこにきて。
(可愛い……ね)
アデレインのことを可愛いと言ったのだ。
それだけでも充分、高評価なのに。
(パーシーと呼んだわ)
養子と言わず、敢えて子供と言ったのだが、彼は気にしないどころか、パーシーと呼んだのだ。アデレインの子供という属性で見ているのではなく、ひとりの人格を持った人間として捉えている。
「ブランデルウッド公爵子息様とパーシーは会ったことがあるのかしら?」
不思議に思ってアデレインに訊けば、その肩がびくりと震えた。
「文通をしているみたいで」
「は!?」
「ヒューイ様がパーシーに本を貸して下さっていて……」
「……なに、それ?」
驚いて声をあげれば、アデレインが目を逸らした。
「わたしだって断ったんです。でもすでに文通していて、パーシーには今友達がいないし、パーシーから文通相手を奪うのは気が引けて……だから、それはそのままにしていて」
「……なるほど? で、貴女まで捕獲されてしまったと」
「捕獲されてません!! っていうか、もう意味が分かりません」
アデレインは泣きそうでもあった。
完全に彼女の処理能力を超えていたのだろう。
(ふーん)
その様子を見ながらコルネリアは思った。
旦那様が持つ情報を確認し、ついでにパーシーにも聴取して、もしヒューイ・ブランデルウッドがコルネリアの期待に応えられるようであれば。
「全力で応援するわ」
「……お姉様?」
コルネリアは、アデレインを安心させるようにその背中を撫でた。




