PHANTOM NINTH
柴田幸佳は困惑していた。
泣き虫で弱虫でおとなしかった魔法少女・ファイが、まるで別人のように変わってしまっていたからだ。
顔つきも。雰囲気も。魔法のオーラも。
かえで先生の、「神の眼」のような能力で、酷い悪人達の所業を見たために、ファイは怒っているそうだったが、その怒り方があまりにも凄まじく激しく、尋常ではなかった。
そして、既に制裁した。二人の男達に。容赦無く、殺意を込めて。
武田隆。高橋智弘。
彼らの凄惨な末路を思い返すと、幸佳の背筋は寒くなった。
「・・・一体・・・どうしちゃった、の・・・?」
幸佳の質問に対して、ファイは顔を背けながら答えた。
「別に、どうもしていません!ただ、許せない魔物達をやっつける、という任務を遂行しているだけです」
「でも、あの人達は人間で」
「あんな奴ら、人間じゃない!」
ファイは叫んだ。使い魔の猫・メルが言った。
「ファイはね、今、解離しているんだよ」
「解離?」
「自分で、自分のコントロールが出来なくなってしまう状態のことだよ。頭がおかしくなっちゃうんだ。
今のファイはね、正気じゃないんだよ」
「メル、黙って!」
ファイは、携えていた魔法の杖で、使い魔の猫を、思いっきり叩いた。
「ファイちゃん、落ち着いて!お願い、落ち着いて!」
魔法の杖に取りついている、かえで先生が慌てて言った。
幸佳は、唖然とするしかなかった。
魔法少女・ファイの、あまりの変わり様に。
そして訝しむ。
どうして、解離してしまっているのか?
その疑問に対する答も出ないまま、、ファイは、三匹目の魔物を消すと言って、瞬間移動魔法を唱える。
「因果応砲!我らを運べ!」
次の瞬間、ファイ達が光に包まれ、彼らの姿は路地裏から消失した。
気が付くと、目の前に、スーツ姿の若い男が立っていた。
「な、なんだ、てめえらは!」
当然、男は驚き、声を上げる。
幸佳達がテレポートして来た所は、どうやら、どこかの倉庫の中らしく、幸か不幸か
幸佳達と若い男以外には、誰もおらず、監視カメラのような類のものも、無いようだった。
ファイは尋ねる。
「原浩作だな」
「だったら・・・なんだよ」
若い男は困惑しているようだった。
「お前のような魔物は消さねばならない」
ファイの手中の杖が、光を放つ。
数秒後。
伊藤愛という女に、ドラッグ「マイルド」を渡した男・原浩作の悲鳴が響き渡った。
数時間後。
幸佳は、恐怖で震えながら、質問した。
地獄の制裁を終えたファイに向かって。
「これから、ど、どうするの?」
「最後の魔物の所に行く!」
ファイは即答した。
メルは身構える。かえで先生は、ため息をつく。そして、幸佳は、「三つの物体」が入った鞄を抱きしめた。
・・・怒りに燃える魔法少女が迫っていることに、伊藤愛という女は全く気付いていなかった。
主人公・伊藤愛と、魔法少女・ファイや柴田幸佳達が一堂に会します。
最後の局面です。見てやってください!




