伊藤愛の診察
体を売る、売春業を再スタートして、数週間経過した、ある日のこと。
「検査結果が出ましたよ」
医者は、冷静な声で淡々と告げる。どちらかというと狭い病院の診察室で、固定された革イスに腰かけた愛はがくがくと頷いた。
「赤痢アメーバ症、カンジタ膣炎、毛ジラミ」
「はい」
頷くことしかできない。
「かなり、感染してますね」
「はい」
バカの一つ覚えのように応答しながら、自分を取り巻く世界が崩れていくのを認識している。
やはり、そうだったのか。
嫌な予感がして、病院に来て診察を受けてみたら、悪い予想は的中してしまった。
「粘膜が接触すれば感染するんですよ、本番行為がなくても」
「わかってます」
目の前の患者に向けられた、医者の冷静な表情が、うんざりしたようなものへと変わった。
伊藤愛と同じような患者の人々を、この男は、これまでにも大勢見てきたのだ。
「あのねえ、伊藤さん。あなた、本当にわかってるんですか?」
「わかってるっつってんだろ!」
固い椅子から思わず立ち上がって怒鳴り散らした。
激昂した愛にも、まだ若いと思われる青年医師は全く動じなかった。そして淡々と助言した。
「それからですね。HIV検査もした方が、宜しいかと」
「は?」
漫才をやっているような気分だった。
愛さんが、医者の男にキレている時、魔法少女は「あの男」の所に向かっていました。
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