恐るべき事実
一色小学校の正門に着いた。メルは、幸佳の方を振り返って、選択を迫った。
「さあ、どうする?ここで、引き返すか。それとも先に進むか。後者を選んだ場合、柴田さんは確実に辛いものを見る事になる。それが嫌だというんなら、ここで引き返すといいよ」
ファイも、幸佳の方を見ている。
「決めるのは、あなたです。柴田幸佳さん」
幸佳は、立ち止まったまま、動けなかった。
どうする。どうすればいい?
あの人の、優しく美しい笑顔が浮かんだ。
自分は、あの人が好きだった。ずっと、好きだった。初めて出会った日から、ずっと。
自分が、学校で辛い思いをしていると正直に告白したら、あの人は、自分を抱きしめて労わってくれた。あの人は、自分にとって癒しだった。そう思っていた。でも。
俯いていた幸佳は、顔を上げた。そして、はっきりと言った。
「行きます」
メルとファイは、この返事を聞いて驚いたようだった。
「本当にいいのかい?」
「メルちゃんの言った通り、辛いものを見る事になりますよ」
魔法少女と猫は、口々にそう言った。幸佳は、少し怯んだが、それでも頷いた。
「それでも、行きます」
その決然とした表情を見て、ファイとメルも、やがて了承した。
「わかった」
「行きましょう」
そして、二人と一匹は、校門をくぐった。
歩き続ける。グラウンドを突っ切っていく。見慣れていたはずの学校の風景が、この時は異次元世界のものであるかのように、幸佳には感じられた。それは、幸佳の頭が混乱しているからだった。まさか、あの人が、魔物の正体だったなんて。
信じられなかった。
信じたくなかった。
だが、そう考えると、全ての辻褄が合うような気がした。もし、自分の体調が悪くなった本当の理由が、真山ではなく、あの人に会ったからだった、としたら。あの人が、全ての元凶だったのだとしたら。幸佳は、胸の痛みが増してくるのを感じていた。それでも、歩き続けた。やがて、校舎の前の、広場に差し掛かった。
「あそこに、いる」
メルの声に導かれるようにして、幸佳は前を見た。ファイは、持っていたステッキを力強く握りしめた。幸佳は、目を見開いた。校舎の前に佇んでいる人物。「魔物」の正体。ソレは。
白石かえで、だった。
病気で休養していました、中田英二です。
この度、蘇りましたので、投稿させていただきます。




