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二回戦 第一ダブルス その3

 地田のショートサーブをハーフショットで返す。すかさず後ろから出てきた落合が上げてくる。ひなたがドロップ。コースは……地田のフォア側。相手の位置関係的に、今は地田のフォアがコート端、サイドラインの方。良い狙い!だと思ったんだけど、ここに来て地田が下からすくい上げるようにヘアピンで返してきた。マジ?!


 ……なんか三ゲーム目も中盤なのにキレが増してない?

 追いついてロブ……と見せかけてクロスのヘアピンで返球。これは我ながらかなり綺麗に決まったと思ったのに……。俺が打つのとほぼ同時、地田が横っ飛びに飛んだのがスローモーションで見えた。


 パ!


 ネット中央あたりでシャトルが相手のコートに入って、それを押し出すようにプッシュされる。まさに電光石火。


「っ!上げた」


 幸い俺のヘアピンはネットスレスレって言える位にはギリギリを攻めたから、相手の返球も完全に角度はつかなかった。ひなたがなんとか繋げてくれる。


 それを落合がドリブンクリア。さっきから相手の返球に攻めの姿勢が戻ってきてる。この長いラリー、取りたい。取らないと。


 飛び上がりスマッシュで返す。展開が速くコースを選んでいる余裕はない。ストレートに飛んだシャトルを、地田がサイドストロークで返球してくる。俺のスマッシュ、ちょっと角度が浅かったのかもしれない。咄嗟のバックハンドであんな刺すような勢いが出るんだから、やっぱり凄い選手なんだよな。


 頭は変に冷静であれこれ考えているのに、気持ちはめっちゃ焦ってる。それが返球に出てしまったんだろう。


 コキィン!


 なんとか追いついたものの、かなりフレームに近い所に当たったみたい。ただ、ふわふわと飛んだ球は運良くネットに当たって相手コートに飛び込んでいく。


「らぁ!」


 気合いの入った声と共に、飛び込んできた地田がラケットに当てた。


「ひなた!」


 前衛にいる相棒に対応を任せて、崩れた体制を立て直す。

 そこから数回前衛同士でヘアピンの応酬が続き、一度勢いに乗った地田から距離を取ろうとひなたがロブを上げた。


「アイ!」


 後衛の落合に、地田が声を張る。


 シュパッ!


 万全の体勢で打たれたスマッシュ。サイドラインギリギリのコースに、直前までアウトか迷ったんだろう。ひなたの返球が遅れた。

 浅く上がってしまったシャトルを、不敵な笑みを浮かべた地田が捉える。


 ドド!


 前衛からたたき込まれたスマッシュ。とりあえずラケットを動かしてみたものの、当たるはずもなく。ひなたのラケットもむなしく空を切った。


「8-10」


 うおー!と上がる雄叫び。雷山応援団もすっかり元気を取り戻している。

 続くサーブを地田がネットに引っかけてくれたおかげで、ひとまず一度流れを切ることが出来た。


「サービスオーバー11-8」


 大丈夫。相手に七点取られる前に、こっちは四点取れば良い。

 次のサーブは俺。レシーバーの落合に向けてサイドライン側にシャトルを飛ばす。ラケットを立てて前進したかと思うと、ネット前に落としてきた。でも少し浮いていたから、即前に飛んでプッシュ。決まった!と思ったものの、地田がなんとか拾ってくる。俺の頭上を越えた球を、ひなたがスマッシュ。すかさず落合が前に落としてくる。


 そのままひなたが前進して、低めの軌道で奥に返す。対する地田はドリブンクリア。俺とひなたのちょうどセンターあたりを通るシャトル。オーバーハンドストロークで返すなら、シャトルが自分から見てフォア側にあるひなたに任せよう。


「よろしく「……お願い」」

『あっ!』


 やっばい。お互い相手に任せようとしちゃた……。お見合いだ。


「ふ……!」


 どうにか追いかけて、相手コートに背中を向けたままバックハンドで下からすくい上げる。


 バシャ……!


 無情にもシャトルはネットにかかってこっちのコートに落ちた。


「サービスオーバー9―11」


 あと二点!あと二点!

 雷山応援団から降り注ぐコール。


『オゥイ!』


 相手ペアの声も明らかに先ほどまでより張りがある。

 落合のショートサーブが浮いた。流石にそれは見逃せない。


 パシ!


 もらえる点はきっちりかっちり取らせていただきますよっと!


「サービスオーバー12-9」


 ここ何回か長めのラリーを相手に取られている。だからこそ、こうやって瞬時に取れるところは絶対に落としたくないし、逆にこっちのミスで相手が簡単に点を取ることは絶対に避けないといけない。


 ひなたのサーブは地田のフォア側へ。


 パァン!


 乾いた音と共に打ち上がったシャトルは少し浅い。すかさずカットスマッシュで打ち込むと、ここまであまり見せてこなかったショットだからかわずかに地田の返球が遅れる。

 更に浅く上がってきた球を、思いっきりジャンプスマッシュで叩き込んだ。


 コン!


 固い音が響く。13-9、と騒がしい会場のはずなのに主審の声もよく聞こえた。良い、今すっごい集中できてる。


「しゃあ!」


 思わずガッツポーズ。ベンチでは青葉が跳びはねて喜んでる。


「ナイス、天野君」


 ひなたもちょっと安心した様子。これで、これで後二点!

 ところがどっこい、ここからが長かった。ひなたのロングサーブに対してドロップを打ってきた落合。当たりが悪かったのか、ネットを越えてからもあまり落ちずに飛んできたから、ほぼハーフショットみたいな感じになってた。予想外の軌道に面食らって俺の返球もワンテンポ遅れる。さっきのお見合い失点もちらついて、高く上げたくない一心ですくい上げるようにネット前へ返す。


 打ち返してから体勢を整えるために高く上げて時間を作る方が得策だったことに気づいちゃったけど、瞬時に最善の選択し続けるなんて無理。どうしたってどっかで綻びは出る。でもさぁ、よりにもよってこのタイミングじゃなくて良いじゃん。

 そのままヘアピンやドライブの応酬が続き、展開を変えようと俺がネットギリギリを狙ったシャトルは白帯に当たって落ちた。速い展開だからこそ変化を求めるならしっかり意図を持って丁寧にコントロールをする必要があったのに。「なんとなく」で打ったせいで今一番嫌な形での失点をしてしまった。「サービスオーバー10-13」って主審の声が、受け入れたく無いスコアを淡々と突きつけてくる。


 点差はあと三点。息つく間もなく地田が打ってきたのはドライブ気味の軌道を描くサーブ。負けじとこちらもドライブで返し、またもやドライブの応酬。うわ……これ上げて距離取った方が良かったな……。これじゃまた相手の得意な強打中心のラリーになっちゃう。そう後悔してももう遅く、そのまま押し切られてしまった。相手はスマッシュ以外でも重たい球ばっかりで嫌になる。


「11-13」


 いよいよ二点差。落ち着け落ち着け。相手はこちらに考える隙を与えずに押し切ろうとしてる。だから、それを防ぐために……。


「……コートを広く使お。大丈夫、あと二点取ればいいから」

「そうだよね。一度テンポを下げないと。三ゲーム目の最後の最後だから流石にちょっとキツイけど、時間を使ったラリー、だね」


 ひなたの大きい手が背中に触れる。危ない、一人で行き詰まるところだった。そうだ、コートは狭いようで広い。それを忘れず有効に使わないと。

 ショートサーブに対してひなたがロブを上げる。反応した落合はドリブンクリア。でもそれには乗らない。迷い無くハイクリアで返球。そこからは後衛の落合が打ってくるスマッシュ時々カットやドロップVS俺たち二人のレシーブという展開が数十秒続いた。さっきコーチが言ってた攻めてる方がしんどいって話、多分今みたいなラリーのことなんだろうな。ひたすら上げ続けたことが功を奏したのか、集中力の切れた落合から中途半端な一球が飛ぶ。


「ひなた!」


 すかさず前に出たひなたがプッシュ。地田が咄嗟に出したラケットに運悪く当たったものの、またフラフラ返ってきた球を今度こそひなたが叩き込んでくれた。


「ナイスショットォー!ひなた!!」


 さっすが。こういう粘る展開に関してひなたほど頼もしい奴はそういない。


「サービスオーバー14マッチポイント11」


 これで、あと一点。首筋どころか顔や足まで汗まみれ。まだ二回戦とは信じたくない。サーバーは俺、レシーバーは地田。良い感覚のまま次に、と思って間髪入れずに放ったショートサーブを、すかさず叩いた。

 流石にそれはネット!と確信していたのに、何のイタズラかコルクが白帯で何度か跳ねるとこっちのコートに落ちてきた。


 コォン。


 最っ悪だ。

「サービスオーバー12マッチポイント14」

「しゃあ!!」


 主審の声に重なるように、地田の雄叫びが響く。ちくしょう、とことん流れが向こうに行ってる。

 続く落合のショートサーブ。俺はアウトだって判断して取らなかったし、隣で見てたひなたもそう判断したようだった。


「イン!13マッチポイント14」


 しかし、審判の判定はイン。ギリギリオンラインだったのか?いや、そうは見えなかったけど……。こんな地方の大会、それも決勝や準決勝じゃ無い限り資格を持った人じゃなく学校持ち回りで審判をする。うちの場合人数少なすぎて戦力外通告されてるけどね。話を戻して、生徒で審判資格を持ってる人なんてあんまいないから、当然ミスだって少なからずおこる。それがちょうどこのタイミングだったのかもしれないけど、そりゃあいくら何でも間が悪すぎやしませんか?

 俺の体でシャトルが審判からは見えづらくてそう判断したのかもしれないし、実際俺たちが気づかなかっただけでちゃんと入ってただけなのかもしれないけどさ……。えーいやめやめ!今考えることじゃない。


「さっき点取れた時みたいに、しっかり時間使ってこう!でも、いけるって判断したら思いっきりいこう!俺も狙えるときはガンガン狙ってみる!」


 低い位置でひなたと手を合わせ、相手のサーブに備える。


「……ストップ!」

『よし!』


 落合のショートサーブをひなたがハーフショットで返す。後衛の地田が、反応して前に踏み出してすかさずサイドショット。運良く俺が当たりをつけていたところに飛んできたから、余裕を持って前に落とす。対して落合はロブ。それならばと、中盤以降上手く使えていなかったジャンプスマッシュを打ち込む。二人の真ん中に差し込んだ球を落合が捌いてきたけど、体勢は万全じゃない。このゲーム、地田は一度ミスしてからは、持ち直した後も全くといっていいほど後衛からスマッシュを打ってきていない。ならばここは……!


 パアン!


 高く高く、思いっきりクリア。ほら、打ってこい。

 一瞬の躊躇の後、覚悟を決めた様子で動き出す地田。


 バァン!


 今日一番の音と共に放たれたスマッシュが向かったのは……


 コン!


 相手にとっては残念なことにラインの外側。


「アウト!」

「ゲーム。マッチワンバイ晴風高校。12-15、15-9、15-13」


 よかったぁ。勝っっっったぁ……!


長かった……息苦しい展開でした!

それでも無事勝利!

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