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出会い

通路の先に広がっていたのは、これまで通ってきた場所とは比べものにならないほど大きな空間だった。


入口の手前で足を止め、ランタンを掲げた。


天井は高く、岩肌から無数の鍾乳石が垂れ下がっている。部屋の中央には大きな水たまりがあり、天井から落ちる水滴が静かな波紋を広げていた。


ぽっ……ぽっ……と水滴の中にズロリと背後から、何かが擦れる音がした。


振り返る。


暗闇の中で、何かが動いた。


「誰か……いるのか……?」


返事はない。


そのかわりに、その奥に――何かがいた。


「……え?」


最初は、岩の塊かと思った。


だが、ランタンの明かりが届くにつれて、それが生き物であることが分かった。長く太い胴体が床を這い、濡れた鱗が鈍い光を反射している。頭部には鋭い牙が並び、暗闇の中で二つの目が赤く光っていた。


大蛇のような魔物だった。


ノアは息を呑んだ。


本で読んだことのある魔物のどれにも似ていない。少なくとも、これほど巨大な生き物が遺跡の奥に潜んでいるなど、想像もしていなかった。


「う、嘘だろ……」


後ずさろうとした、そのとき。


足元で小石が転がった。


カラン、と乾いた音が広い空間に響く。


魔物の頭が、ゆっくりとこちらを向いた。


「――っ!」


目が合った。


次の瞬間、魔物は大きく口を開き、地面を震わせるような咆哮を上げた。鋭い牙の隙間から、ぬめった息が漏れる。ノアは反射的に身を翻したが、魔物の巨体は想像以上に速かった。


床を這う胴体が一気に伸び、ノアの逃げ道を塞ぐ。


「うわっ!」


ノアは横へ飛び退いた。直後、先ほどまで立っていた場所に魔物の尾が叩きつけられる。石床が砕け、破片が頬をかすめた。


「なんなんだよ、こいつ……!」


逃げなければ。


頭では分かっていた。けれど、足が思うように動かない。あまりの恐怖に身体が強張り、握っていたランタンを落としそうになる。


魔物が再び頭を持ち上げた。


今度こそ、逃げられない。


ノアは目を閉じかけた。


その瞬間――。


「伏せて!」


澄んだ声が、空間に響いた。


次の瞬間、ノアの目の前を金色の光が駆け抜けた。


眩しさに目を細める。光は魔物の頭部に直撃し、轟音とともにその巨体を横へ弾き飛ばした。魔物は壁に叩きつけられ、岩の破片を撒き散らしながら低く唸る。


「え……?」


何が起きたのか分からず、ノアは呆然と立ち尽くした。


やがて光が薄れていく。


その中に、一人の少女が立っていた。


年の頃はノアと同じくらいだろうか。白く長い髪、髪の端は淡い光を受けて金色に見えた、白い肌には不思議なほど透明感がある。身にまとっている衣服も、どこか古めかしい意匠をしていた。


少女はノアの方を振り返ると、ほっとしたように小さく息をついた。


「怪我はない?」


「あ……えっと……」


ノアは言葉を失っていた。


つい先ほどまで、自分は巨大な魔物に襲われていた。そこへ突然、少女が現れて助けてくれたのだ。状況を理解しようとしても、頭が追いつかない。


「あ、ありがとう……。君が助けてくれたの?」


「ええ。間に合ってよかったわ」


少女は穏やかに答えた。


「グギ……ググ……」


魔物の唸り声をあげている、まだ微かに息があるようだ。


少女は魔物を一瞥すると、静かに左手を振った。


その手の甲から光が走る。


次の瞬間、魔物は光に包まれ、跡形もなく消滅した。


「あの、君は……?」


「私?…アリアよ、よろしく」


少女は手を差し出した。


「あっノアです、よろしく」


ノアは差し出された手を迷うことなく掴むのであった。


やっと出会うとまで書けました…ここからお話しがスタートできます

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― 新着の感想 ―
ノアとアリアが出会うところまで、ひとまずお疲れ様です。 読んでいると自然と風景が浮かんでくるような情景描写が素敵だと思いました。 今後の執筆も楽しみにしております。
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