記憶を失いし少女-アリア-
アリア、少女は自らをそう名乗った。
よろしくと挨拶を交わしたものの、未だに混乱していたノアは恐る恐る少女に問いをなげる。
「助けてもらったところ悪いんだけど……君はいったい……」
「……わからない」
「え……?」
「よく覚えていないのよ。気がついたら、ここにいたの」
「もしかして……幽霊とかじゃないよね……?」
ノアは少女の足を覗き込んだ
「失礼な、ちゃんと生きてます!」
「あっそれは失礼しました……」
ノアは謝るのと同時に目を逸らしたが、話を続ける少女に再び目をむける。
少女は少し考えるように目を伏せた。
「気づいたらここにいて、記憶に残っていたのはアリアと言う名前だけ。とりあえず、ここを出たいなーと思って、彷徨ってたところに、蛇に襲われそうな貴方を見つけたの」
「君は黄金の龍の関係者なのか?」
龍という単語に反応したのか、少女はハッとしてこちらを見た。
「何それ?……というか私の話ばっかり不公平だわ、詳しく教えてちょうだい……そもそも貴方もなんでこんな所にいるのよ?」
「おっおぅ……俺はこの遺跡を調べに来たんだ。黄金の龍の伝説に関係がある場所だって聞いて依頼があってね」
「黄金の龍?」
アリアは不思議そうに首を傾げる。
「知らないのか、そっか記憶がないって話だし……話すと長くなるかも」
「構わないわ、話して」
「わかった……その前にっと」
ノアはリュックを漁り、手のひらに乗る程度の布包を取り出し、アリアに手渡した。
「?」
「カンパンと干し肉が入ってる。こんな物しかなくてわるいけど助けてくれたお礼、食べながら話そう」
「ありがとう!受け取るわ」
「どういたしまして」
アリアは布包を受け取るとそそくさと側にあった岩に腰を掛けるなやいなや袋をほどきカンパンをぽりぽりと食べた始めた。
ノアはその場にストンと座り、何処から話すかと少し考えた後、自分が今まで調べた伝説の内容と、ここまで辿り着いた経緯を話し始めた。
◇
「……とまぁ、伝説を調べるのが趣味でさ、たまたまヴィクトルさんに依頼貰い受けてここまで来たんだ」
ここまでの旅路を纏めるように話していたらいつしか天井を見つめていたノアは、感想でも聞こうかなとアリアを見た。
「むぐぐぐぐ……」
そこには干し肉と戦っている少女がいた。噛みきれないらしい。
「あれっ……聞いてた?」
ノアが問うのと同時にブチッっと干し肉が切れる音がした。
「ムグムグムグ………ゴクン……聞いてたわ。ここは黄金の龍が最期に訪れた、そんな曰く付きの場所。貴方はそんな伝説が好きで、かつ依頼を受けてたので調べに来た」
意外にもちゃんと聞いていたらしい。
「何か知っていることはあった?」
「いいえ、やっぱり何も思い出せないみたい」
「そっか……」
「とりあえず私はここから出たいの。外に出れば何か思い出すかもしれないし……貴方、出口まで案内してくれない?」
「え?」
「正直迷ってて出られないのよ。貴方、この遺跡の外から来たのなら、出口までの道を知っているのでしょう?」
「そうだな。とりあえず遺跡も見つけたことだし、今日はそれで満足して一度出るのもありか。わかった、案内するよ」
「決まりね」
ノアはアリアと名乗る少女を連れ、出口に向けて歩みを進めるのであった。




