掏替えられた姿
「赤ワインを密かに持ちこみ、メルモット嬢のふりをして盟杯に参加し、本物の彼女に毒を盛った人物。それは、あなたですね。――アリシア・ファルコナー嬢」
わたしが名指しすると、ファルコナー嬢は青ざめた顔で凍りついた。
一瞬の静寂のあと、真っ先にそれを破ったのはヴェンディス令息だった。
「これは傑作だ。モリアーティ家はご当主だけでなく、ご令嬢までファルコナーと対立するつもりらしい」
「ジャクリーン嬢、ことと次第によってはファルコナー侯爵家として厳重に抗議するが、それを覚悟してのことだね?」
ファルコナー侯爵が厳しい顔つきで告げる。
だが、ここで引くつもりはない。わたしとて、安易な思いつきで彼女の名を挙げたのではない。これまでいろいろと調べてきた結果、最終的に彼女へたどり着いたのだから。
「ええ、もちろんです。……わたくしはまず疑問でした。ファルコナー嬢は先ほどから、消毒液の匂いがなさっている」
「それがどうしたというのです? 娘は昨日、毒の針に刺されたのですよ。それも、あなたのお父上によって!」
夫人は令嬢をかばうように抱きしめながら、ほとんど叫ぶように言った。
……やれやれ、すっかり悪役だな。
「香水はどうしました?」
「……え?」
「この国の貴人であれば、香水をつけるのは嗜みでしょう。まして、あなたは昨日カトレアのようなドレスをなさっていた。身につけていたパリュールもカトレアをモチーフにした、見事な意匠でした。ならば、香水も同じくカトレアの香りをまとっていたはずです。我が国では、ドレスと装飾、それから香水のモチーフを統一するのが伝統であることは、あなた方もご存知のはず」
「それは……」
ファルコナー嬢はうつむき、震える手を強く握りこむ。
レストレード警部が戸惑うように口を挟んだ。
「ま、待ってくれモリアーティ嬢。話が読めん」
「――パフュームボトル、ですね?」
ホームズがこちらをじっと見つめる。
この反応からして、おそらく彼もその可能性には気がついていたのだろう。
「そうです。おそらく彼女はパフュームボトルに赤ワインをつめて持ちこんだ。だから香水のつけ直しができず、今はほとんど消えてしまっているのでしょう。しかし、邸宅では一度つけているはずです。侍女が身の回りを世話しますからね。わたくしは先ほど、盟杯で見たメルモット嬢からは甘い花の芳香のなかに柑橘の皮を思わせる爽やかさのある香りがしたとお伝えしましたが、まさにカトレアの特徴と一致します」
「では、やはり盟杯にいたメルモット嬢は彼女の変装だと?」
「ええ。そして入れ替わる前、あらかじめメルモット嬢にワインを飲ませておいたのでしょう。計画前の景気づけだとか、理由はなんでもいい。そして、わたくしの前で必ず毒見をするよう言い含めておく。相手の警戒心を解くためだとか、そんなところでしょう。これで彼女は遠隔的に毒を盛れます。事前に飲ませていた赤ワインに混じって凶器がわからなくなるうえ、我が家に疑いをかぶせられる」
「でたらめです! そ、そんなの、あなたの証言だけでしょう! アリシアを陥れるおつもり!?」
こちらを睨む夫人の腕のなかで、ファルコナー嬢は怯えたように震えている。
だが、追及をやめるつもりはない。
「では、ご令嬢の手荷物を警察に調べさせていただきましょう。パフュームボトルからなにも出なければ、彼女は潔白です」
「もちろん、構いませんとも。ね、アリシア?」
ファルコナー嬢はびくりと震えたあと、視線をさまよわせた。
そこでようやく、夫人が不安げな顔になる。
「……アリシア?」
「おい、ファルコナー嬢の荷物をここへ持ってきてくれ。侍女が預かっている身の回り品もすべてだ」
レストレード警部が指示を飛ばすと、警官たちがすばやく部屋を出ていった。
それからしばらく、室内は地獄のような空気だった。
ファルコナー夫人は娘を抱き寄せ、何度もこちらへ険しい視線を向けてくる。対して侯爵は黙って腕を組んでいた。
ヴェンディス令息も先ほどまでの皮肉は鳴りをひそめ、難しい顔をしている。警察側も誰ひとりとして口を開かない。
しばらくして、数人の警官がファルコナー嬢の荷物を運びこんできた。大きな旅行カバンに化粧箱、それから小型の手提げカバンまである。
「警部。ファルコナー侯爵令嬢のお荷物から、パフュームボトルが見つかりました」
差し出されたのは、銀細工の蓋がついた小ぶりのガラス瓶だった。
レストレード警部はそれを受け取り、栓を開けた。
「……香水じゃないな」
「赤ワインのようです」
警部がハンカチを取り出し、それに瓶を傾けると、中から赤い液体が滑り落ちてきた。
夫人の顔から血の気が引く。
「アリシア……?」
「ち、違います!」
ファルコナー嬢は弾かれたように顔をあげた。
「それは、その……たった数ヶ月の違いで、盟杯に参加できないのが残念だったから……せめて気分だけでも味わいたくて、少しだけ持ちこんでしまっただけです。いけないことだとはわかっていました。でも、まさかそれで疑われるなんて思ってもみなくて……!」
「そうですわ! たったそれだけのことで、人殺しの疑いをかけるというのですか!?」
「ファルコナー夫人のおっしゃるとおり、これで証明されたのは彼女が赤ワインを持ちこんだというだけだ。こうした規則違反が、彼女以外にいないとは限らない。メルモット嬢に成り変わったことも、まして彼女を殺害したことも、なにひとつ証明になっていない」
夫人が娘を背後にかばい、ヴェンディス令息がそれに続いた。
ファルコナー侯爵が低い声で言う。
「アリシア。王宮の規則をやぶったことについては、あとで話を聞く」
「……はい」
「だが、それと殺人の嫌疑は別だ、モリアーティ嬢。君の言ったとおり、娘が赤ワインを持ちこんでいたことは認めよう。だが、それだけで先ほどの推理すべてが証明されたことにはならない。それはわかっているね?」
「もちろんです。これだけで話を終わらせるつもりはありません」
わたしがそう告げると、一同の顔色がさらに悪くなった。
まったく、まるで『白衣の女』のフォスコ伯爵にでもなった気分である。
「ダイトンさん。メルモット嬢は東方風のお化粧をしていたとおっしゃっていましたが、それはどなたかとお揃いにしたものではありませんでしたか?」
「は、はい。ファルコナー侯爵令嬢とお揃いにするからと、張り切っていらっしゃいました」
「なっ……」
ファルコナー夫妻はそろって絶句した。
「メルモット嬢と彼女は、以前から親しかったそうですね」
「はい。去年くらいから、よくお話しするようになったそうです。今回も彼女と同じコーディネートにするのだと、嬉しそうにおっしゃっていました」
「そんなはずがありません!」
エライザの証言をさえぎるように、夫人は鋭く否定した。
椅子を蹴り倒す勢いで立ちあがり、顔を真っ赤にまくし立てる。
「アリシアが、あの娘と親しくするはずがありません!」
「それはなぜですか? 同じ年代のご令嬢でしょう? そうおかしなことではないと思いますが」
「それは……でも、そんなことあり得ないんです。あの娘は……あの娘だけは……ッ!」
「エセル、落ち着け」
「でも、あなた……」
ファルコナー侯爵が肩を抱くと、夫人はその胸に顔をうずめてすすり泣き始めた。
そのようすに、エライザも戸惑ったように口をつぐむ。
彼らには悪いが、ここで話をとめるつもりはない。
「ダイトンさん、ファルコナー嬢の隣に立っていただけますか?」
「え? ええ、構いませんが……」
「ファルコナー嬢、お立ちください」
「な、なぜでしょう? 理由もなくそんな……」
「ご令嬢、お立ちください」
レストレード警部が強めに指示を出すと、ファルコナー嬢はようやく不承不承といったふうに立ちあがった。
ふたりが並ぶと、ひと目でよくわかる。
「これは……」
警察側から小さなどよめきが起こる。
彼女らの背格好は、ほぼ一致していた。小顔で首が長く、肩幅が狭いところもそっくりだ。
今朝、部屋着姿のエライザの姿がファルコナー嬢と重なったのも、彼女たちの体格が似ていたからなのだろう。
「ダイトンさんはメルモット嬢と顔立ちや背格好が似ているそうですね。ならば、ファルコナー嬢とメルモット嬢も、変装でごまかせる程度には似ていたと考えられます。そのうえ、三人とも似たような茶色の髪です」
「しかし、化粧だけで別人になれるものですかな」
「それだけではありません。昨日のおふたりのドレスを思い出してください」
「ドレス……?」
ファルコナー嬢の顔がまたこわばった。
「メルモット嬢は金木犀モチーフのオレンジゴールド、ファルコナー嬢はカトレアモチーフの赤紫のドレスでした。しかし、その下のベースドレスは、どちらもアイボリーだった。加えて手袋も同色でした」
「……つまり?」
「オーバードレスだけ替えればいいのです」
警部が目を見開く。
「髪と化粧をあらかじめ似せておき、同じ色のベースドレスを着ておく。そうすれば大がかりな着替えなど必要ありません。オーバードレスと装飾品を替えるだけで、短時間で別人になれる」
「それも示し合わせてのことだと?」
「おそらくは。……警部、先ほど運ばせた荷物を調べていただけますか。金木犀を意匠にした、オレンジゴールドのオーバードレスがあるはずです」
レストレード警部はすぐさま警官たちに旅行カバンを改めさせた。
ほどなくして、なかから衣装が取り出される。
「……ありました」
広げられた生地を見て、室内がざわめいた。
オレンジゴールドを基調に、金木犀を模した小花が散らされている。
「これは……昨日のメルモット嬢の?」
「いえ、似せて作った別物でしょう」
実際にメルモット嬢が身につけていた衣装は、すでに警察が押さえている。
「おそらく、ふたりで示し合わせて似たものを注文したのだと思います。ファルコナー嬢のドレスはマンタリーニ夫人の仕立てだとお聞きしました。同じ時期に似たドレスを依頼されていないか、注文記録を確認していただけますか?」
レストレード警部は真剣な顔でうなずいた。
「あとで仕立て屋に人をやろう」
「これで着替えそのものは難しくありません。問題はいつ入れ替わったかです。ファルコナー嬢は献上式の冒頭、ファルコナー侯爵家による白隼の献上に参加している。ここでは本人の姿を大勢が見ています。しかし彼女は十七歳ですから、そのあとの盟杯には参加できない」
王室誕辰帳の記録を見るかぎり、彼女の誕生日は十月十四日。九月二十九日の献上式には、ギリギリ間に合わない。
「献上を終えたあと、十七歳以下の交流会に参加するふりをして控え室へ戻り、オーバードレスをつけ替える。あらかじめ化粧と髪型は似せているので、そのままメルモット嬢として盟杯に参加できる」
「ではその間、本物のメルモット嬢は……」
「臨時侍女として、わたくしの控え室にいた。そして、毒見のつもりで本物の毒を飲まされた。……ダイトンさん、メルモット嬢の当日の髪型は、シニヨンに付け毛をつけたものだったのでは?」
「は、はい。ボリュームを出すために使用いたしました」
「やはり。侍女に化ける際は付け毛を取ってシニヨンにして、令嬢に戻る際は再び付け毛を足せばすみますからね」
控え室にきたあの侍女は、分厚いメガネをつけていた。もとの顔がわかりにくいほどに。
「メルモット嬢はわたくしの控え室を出たあと、まずは東側クロークに立ち寄ったのでしょう。高位貴族の控え室から近いのは東側ですから。そこでティーポットを旅行ケースへ入れて預け、預かり札は西客殿入り口の植木鉢の裏へ隠した」
「そこまでしたなら、札を処分してしまえばいいのでは?」
「参加者全員が帰宅したあとも荷物が残っていては、忘れ物として中身を改められるかもしれません。そうなれば、ティーポットの仕掛けが露見する。ですから一時的に隠し、あとで回収するつもりだったのでしょう。ひょっとしたら、ファルコナー嬢に渡すためだったのかもしれません」
「ファルコナー嬢に……?」
「はい。あの青花磁器は大華製です。ならば用意したのもメルモット嬢ではなく、東方の物が手に入りやすいファルコナー嬢のほうでしょう。札を隠したメルモット嬢は、そのまま自家の控え室へ戻り、令嬢の姿に戻った。そこでファルコナー嬢が盟杯を終えるのを待っていたのだと思います」
「なぜ待つ必要が?」
「盟杯にいたメルモット嬢は、金木犀のパリュールを身につけていました。あれほどの装飾品を短期間で再現するのは難しい。おそらく本物を貸していたのでしょう。それに、ふたりが同時に人前へ出れば入れ替わりが露見します。だから、パリュールを返しにくるまで待つよう言われていたのでしょう」
「しかし、具合が悪くなればふつうは助けを呼ぶのでは?」
レストレード警部の疑問はもっともだった。
「そうですね。これは推測なのですが、メルモット嬢はお茶に盛られた薬を、多少具合が悪くなる程度のものだと聞かされていたのではないでしょうか。きっと彼女は、間違って薬の入ったほうを飲んでしまったのだと勘違いしたはずです。部屋で休んでいれば、そのうちよくなる。だから迎えがくるまで待てばいい。そう考えているうちに症状が悪化したのではないでしょうか」
そして、迎えはこなかった。
「ファルコナー嬢には、最初から迎えにいくつもりなどなかったのでしょう」
「なぜそう言える!」
ヴェンディス令息が声を荒げた。
斜に構えて周囲を冷笑する彼には珍しい余裕のなさだった。
「ここへくる途中、四季の女神像の前を通ったのですが、春の女神像の花かごで妙なものを見ました。――春の花に混じって、秋の花である金木犀が混じっていたのです」
実際に確かめたのは臨時侍女に扮して潜入捜査していたときなのだが、まあ嘘も誠も話の手管というやつだ。
今度は警部も素早かった。すぐさま警官を走らせる。そう経たぬうちに戻ってきた警官の手には、見覚えのある装飾品が握られていた。
「ご令嬢のおっしゃるとおり、春の女神像の花かごから発見しました。金木犀を模したパリュールです」
エライザが息をのむ。
「お嬢様の……!」
「盟杯を終えたファルコナー嬢は、メルモット嬢の待つ控え室に戻るつもりがなかった。かといって、いずれ遺品となるそれをいつまでも手もとに置いておくわけにはいかない。だから人目につかない場所に隠したのでしょう。あとでこっそりと回収するために」
「そんな……誰かが置いたのかもしれないじゃありませんか!」
夫人が食いさがる。
だがもちろん、これで終わらせるつもりもない。
「では、別の方向からも確認しましょう。……ファルコナー嬢、あなたはファルコナー侯爵家の献上が終わったあと、本当に青の大客間へ向かったとおっしゃるのですね?」
「も、もちろんです。……そうだ、わたくしはシャレードで蝶の役をやりました! 確認していただければはっきりするはずです!」
確かに、その証言はすでに得ている。
だが、彼女の出番は最後のほうだったはずだ。メルモット嬢として盟杯に参加したあと、すばやく着替えて交流会に合流すれば間に合う。そのための早着替えトリックだったのだろう。ファルコナー侯爵家の控え室が会場のすぐ近くであることも、状況が味方している。
――ならば、前半のアリバイを崩せばいい。
「では、そこで起こったハプニングは、当然ご存知ですよね」
「え……?」
アデア兄妹の兄ロナルドが起こした、あのハムレットの悲劇のことだ。もし彼女が最初から交流会に参加していたのなら、覚えていないほうがおかしい。
だが、彼女からの返答はなかった。
「さあ、答えていただきましょう」
「と、途中で体調が悪くなって……控え室で休んでいた時間があったので、そのときかも……」
「なるほど。では、それは何時ごろのことですか?」
「それは……」
「警部、あとで彼女が主張する時間と、ハプニングが起きた時間帯を照合していただけますか? 詳しい話はメイヌース伯爵のご令息、ロナルド・アデア令息にお聞きください」
「わかった」
ファルコナー嬢の顔色がますます悪くなった。
現状が娘に不利であることを悟ったのか、ファルコナー夫妻も土気色の顔をしている。
「さて、そうして控え室で亡くなったメルモット嬢ですが、そのままならばただの中毒死でした。しかし、現場は強盗が入ったかのように偽装されていた。――それをしたのはヴェンディス令息、あなたですね」
「……今度は私ですか」
「ええ。あなたは、おそらく本当にメルモット嬢を殺そうとしていた」
ファルコナー家の面々が息をのむ。
令息はしばらく黙っていたが、やがて薄く笑った。
「ずいぶんな言い草ですね」
「あなたが持っていた合鍵と目薬瓶、あれは誰かにはめられて忍ばされたものではない。最初から、あなた自身が用意していたのでしょう」
「証拠は?」
「現時点ではありません。しかし、ヴェンディス領は金属加工をはじめとする伝統産業で知られていますね」
「……それが?」
「王宮の鍵も、そちらの職人が手がけたものではありませんか?」
レストレード警部に目配せすると、もはや勝手知ったるとばかりにうなずきが返ってきた。
「営繕の記録を調べればわかるでしょう」
「一年半ほど前、あの部屋の錠前は一度壊れ、新しいものに交換されています。そしてどの控え室が割りあてられるかは、家格によってある程度決まっている。おそらくあなたは一年半前、わざとあの部屋の錠を壊し、新しい鍵を作り直させた。その際、自領の職人を抱えこんで、合鍵をひとつ融通してもらったのではありませんか?」
「妄想もいいところだ。なんの証拠もない!」
「そうですね。ですが、鍵を作り直した職人を警察が調べればわかることです」
「……わかりました。そこまでおっしゃるなら、徹底的に調べましょう」
警部が重くうなずく。
ヴェンディス令息はもう笑っていなかった。
「去年の献上式では、あの控え室は別の貴族が使っていた。だから手を出せなかった。今年、ようやくチャンスが巡ってきたあなたは、隙をみて控え室に毒を忍ばせるつもりだったのでしょう。だから、気がついてしまった――盟杯に参加している彼女が、別人であることに」
もはや誰も口を挟めないでいる。その空気をあえて無視して、わたしは話を続ける。
「あなたは用意していた合鍵で部屋へと入り、すでに亡くなっているメルモット嬢を見つけた。そして、とっさに強盗の仕業に見せかけることにした」
「しかし、なぜです? なぜ彼がそんなことを……」
「はっきりとした理由はご本人に聞かなければわかりません。ヴェンディス伯爵家はファルコナー侯爵家の分家なので、たんに血縁者をかばいたかったのかもしれない。しかし、わたくしはこう推測します。……彼はこれがファルコナー嬢の犯行だと見抜いてしまった。だからかばったのです。おそらく、彼らがメルモット嬢を殺したかった理由が同じだから」
「同じ理由……?」
「ええ。それが、この場にバーン男爵夫妻をお呼びした理由でもある」
急に話を振られて、バーン夫妻が身じろぎした。
ずいぶんと待たせてしまったが、これからが彼らの出番だ。
「アリシア・ファルコナー嬢、およびヴィンセント・ヴェンディス令息がこのような凶行にいたった動機――それは、二年半ほど前に亡くなったヘレン・バーン嬢の復讐ですね」




