【22話】知らない、家族のこと
「そういえば、ゼノンさんの家族って、どんな感じなんですか?」
セレナがそう尋ねると、ゼノンは懐から、小さな写真を取り出して見せてくれた。
「ほら、これ。家族写真や」
写真には、ゼノンを含めた数人が写っている。皆、驚くほど似た顔立ちをしていた。
「これ……全員、同じ顔じゃないですか」
「せやで。うちの一族、皆こんな感じや」
「し、しゃべり方も、全員こんな感じなんですか?」
「もちろん。家族全員、こんな調子やで」
ゼノンが当たり前のように答えるのを聞いて、私は思わず首をかしげてしまった。
「ゼノンさんの喋り方、結構変わってるなって、実は前から思ってたんですけど……」
「変わってる? どこが?」
ゼノンが、本当に分からないという顔をしていた。
「私も、特に変だとは思わないですね」
セレナが、あっさりとそう言った。
「殿下も、変わってると思いますか?」
「いや……特には。これが普通の喋り方だと思っていた」
ユリウスも、不思議そうな顔で答えた。
この世界では関西弁が普通なのか……そんな考えを巡らせていたところで、セレナが、ふと話題を変えるように私の方を向いた。
「モブちゃんのご家族は、どんな感じなの?」
「えっと……」
その質問に、私は一瞬、言葉に詰まってしまった。
「うちの両親は……えっと、優しい感じの人たちです」
「優しい感じ、って?」
「えっと……いつも、私のことを、ちゃんと考えてくれていて」
「具体的には、どんな風に?」
「それは……手紙とか、プレゼントとか、ちゃんと送ってくれるので」
「それ、前にも聞いたよ。他には?」
「えっと……お父様は、たぶん、真面目な性格で……お母様は、優しい雰囲気の方です」
「たぶん、って言うの、何回目や?」
ゼノンが、すかさず指摘した。
「あの、お二人の趣味とか、好きなものとか、知ってる?」
「えっと……それは……」
頭の中を必死に探っても、これ以上の情報は出てこなかった。
「……ごめんなさい、それ以上は、ちょっと」
正直にそう言うと、皆が、なんとも言えない表情で私を見つめた。
「これは……ちゃんと、一度会いに行くべきですね」
セレナが、優しくそう言った。
「そうですね……今度、休みの時に、行ってみます」
「私も、一緒に行きたいな。モブちゃんのご両親に、ちゃんと挨拶したいし」
「え……セレナも、一緒に?」
「うん、いいかな? モブちゃんがうちに来てくれたから、私も、ちゃんとお礎したいなって」
セレナが、にこにこしながらそう言った。
「分かりました……一応、確認してみますね」
その日の夜、寮の自室で、私は実家に向けて手紙を書くことにした。
休みの日に訪問したいこと、セレナも一緒に行きたがっていることを、簡単に書き記す。
数日後、返事の手紙が届いた。
内容は、思いのほかすんなりとした了承だった。
「いつでも歓迎する。お友達も、ぜひ連れてきてほしい」という、丁寧な文面が綴られている。
「セレナ、来ても大丈夫みたいです」
「やった! 楽しみだね」
セレナは、嬉しそうにそう言った。
胸の奥には、少し重たい気持ちが残っていた。
これまで、ほとんど関わりのなかった両親と、これからどう向き合えばいいのか。
気が重いまま、私は手紙を丁寧に折りたたんで、机の引き出しにしまった。




