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モブだったはずなのに~気づいたら、誰よりも大事にされていた~  作者:


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18/30

【18話】まさかのゲームセンター

ある日の放課後、貴茶研の皆で街に出かけることになった。


普段は学園の中で過ごすことが多いので、こうして街を歩くのは久しぶりだ。


「わあ、こんなに賑やかな通り、初めて来た気がする」


セレナが、目を輝かせながら周りを見渡している。


「殿下、外に出る機会、あまりないんですか?」


「ああ……正直、こうして気軽に歩き回るのは、新鮮だ」


賑やかな店が並ぶ通りを歩いていると、ふと、見覚えのある建物が視界に入った。


派手な看板に、点滅する飾り。


明らかに、周囲の中世風の街並みとは異質な雰囲気を纏った建物だった。


「あれ、何のお店なんだろう」


セレナが、不思議そうに指を差す。


頭の中で、ゲームの記憶が急速に蘇ってくる。


『アーレディ』のタイトル画面で、ある決まった順番でボタンを押すと、「特別な施設」が解禁されるというファンサービス的な裏技要素があった。


当時、攻略本を見て、面白半分で遊んだ記憶がある。


「モブちゃん、知ってるの?」


「えっと……たぶん、ゲームセンター、だと思います」


「ゲームセンター?」


「いろいろ遊べる場所、みたいな感じです」


内心で激しく突っ込みながらも、表向きは平静を保つ。


「面白そうですね、入ってみませんか?」


セレナの提案に、皆が頷いた。


「俺、こういう場所初めてやから、楽しみやな」


ゼノンが、興味津々な様子で先に進んでいく。


不思議な気持ちを抱えながら、私は皆と一緒に、その異質な建物へと足を踏み入れた。


中に入ると、薄暗い照明の中、見たことのない機械がずらりと並んでいる。


「これは……何をする場所なんですか?」


セレナが尋ねてくる。


「ゲームを遊ぶための機械が、こうやって並んでるんです」


奥に進むと、ひときわ目立つ二台の機械があった。


一つは横スクロール型のシューティングゲーム、もう一つは対戦型の格闘ゲームだ。


(あった……! これだ……!)


当時の記憶が、急速に蘇ってくる。


前世でやり込んだ『アーレディ』の中で、隠し要素として解禁されたこの二つのゲーム。


当時はかなりの高難易度で、攻略を何度も見ながら、ようやくクリアした記憶がある。


ゲームの中の設定では、クリアするとご褒美としてキャラクターの特別イラストが見られる、という仕組みだった。


(さすがに、こっちの世界でイラストが出てくるわけじゃないだろうけど)


「これ、私もやってみたいです」


セレナが、興味深そうにクレーンゲームに近づく。


「皆さん、こういう場所、入ったことありますか?」


「いや、初めてだな」


ユリウスが、少し緊張した様子で周りを見回している。


「俺も初めてやな。なんか、面白そうやけど」


ゼノンが、興味津々に私の画面を覗き込みながら言う。


「モブリーヌは、入ったことあるの?」


「私も、入ったことはないですけど……」


「え、初めてなのに、なんでそんなに詳しいんや? さっきから、ゲームの説明とか、すらすら言うてたやん」


「えっと……それは、本で読んだことがあったので」


(攻略本でこの施設の存在を知ったわけだし……嘘は言ってないよね、うん)


心の中でそっと自分に言い聞かせながら、表向きは平静を装う。


「本にも、こういうこと書いてあるんやな。物知りやな、モブリーヌ」


ゼノンは、特に深く疑うこともなく、感心したように頷いていた。


「やってみますね」


私はそう言って、シューティングゲームのレバーを握った。


画面が始まると、次々と現れる敵を、迷いなく撃ち落としていく。


難易度の高さは覚えていた通りで、画面のスピードも目まぐるしい。


それでも、かつて何十回と繰り返した記憶のおかげで、動きにまったく迷いがなかった。


「えっ……すごい」


セレナが、画面を見ながら声を上げる。


「モブリーヌ、めちゃ上手いやん……!」


ゼノンも、驚いた様子で画面に釘付けになっていた。


最終ステージを撃破し、クリア画面が表示される。


「やった、クリアできました」


(イラストは出なかったけど……まあ、当然か。それより、ノーミスで抜けられたこと、ちゃんと喜ぼう)


「これは……驚いた」


周りにいた他の客たちも、いつの間にか集まって、こちらを見ていた。


「あの子、すごいな……」


「ノーミスで抜けてたぞ」


「やべえ……」


驚きの声が、あちこちから漏れてくる。


続けて、格闘ゲームの方にも挑戦してみる。


こちらも当時、かなり練習を重ねたゲームだった。


「いきます」


対戦相手のキャラクターを操りながら、流れるようにコンボを繋いでいく。


これも、繰り返した記憶のおかげで、手が自然に動いた。


「圧倒的やん……」


ゼノンが、呆然とした様子で呟いた。


最終的に、その場にいた誰も私に勝てる相手はおらず、いつの間にか、ゲームセンターの中で小さな伝説のような扱いになっていた。


「あの子、すごい腕前だな」


「伝説になるぞ、これは」


周りの視線を集めながら、私は少し気恥ずかしくなっていた。


(まさか、ゲームの腕前で一目置かれることになるとは……)


その後は、皆でクレーンゲームに挑戦したり、写真を撮る機械で記念撮影をしたりと、和やかな時間を過ごした。


「これ、欲しいものが取れない……」


セレナが、クレーンゲームの前で苦戦していた。


「私が、やってみますね」


「またモブリーヌがすごいことになるんちゃう?」


ゼノンが笑いながら言うのを聞いて、私は少し照れながら、クレーンの操作レバーに手をかけた。


賑やかな時間が、夕方まで続いていった。


その後は、皆でクレーンゲームに挑戦したり、写真を撮る機械で記念撮影をしたりと、和やかな時間を過ごした。


「これ、欲しいものが取れない……」


セレナが、クレーンゲームの前で苦戦していた。


「私が、やってみますね」


「またモブリーヌがすごいことになるんちゃう?」


ゼノンが笑いながら言うのを聞いて、私は少し照れながら、クレーンの操作レバーに手をかけた。


何度か調整を重ね、ようやくアームが目当てのぬいぐるみを捉える。


ゆっくりと持ち上がり、無事に取り出し口へと落ちていった。


「やった……! 取れました」


「わあ、モブちゃん、すごい!」


セレナが、嬉しそうにぬいぐるみを受け取った。


小さな熊のぬいぐるみで、優しい色合いの毛並みをしている。


「これ、本当にありがとう。すごく可愛い」


「気に入ってもらえてよかったです」


賑やかな時間が、夕方まで続いていった。


寮に戻り、自室に入ると、セレナはずっとそのぬいぐるみを大事そうに抱えていた。


「セレナ、まだ持ってるんだね」


「うん。すごく気に入っちゃって」


ベッドに腰掛けながら、セレナは、ぬいぐるみの頭をそっと撫でている。


表情には、今日一日の楽しさが、まだ残っているようだった。


「モブちゃんが取ってくれたものだから、なんだか特別な気がするんだ」


「そんなに大したことじゃないと思うけど……でも、喜んでもらえて嬉しい」


セレナは、ぬいぐるみを胸の前にぎゅっと抱きしめながら、小さく笑った。


「今日も、楽しかったね」


「うん、楽しかった」


二人で、その日の出来事を振り返りながら、夜が静かに更けていった。


セレナの腕の中で、小さな熊のぬいぐるみが、優しく見守るように佇んでいた。

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