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モブだったはずなのに~気づいたら、誰よりも大事にされていた~  作者:


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13/30

【13話】お茶の時間、話題は私?

放課後、部室に集まったところで、セレナが嬉しそうに紙袋を取り出した。


「これ、うちから持ってきたお茶なんだ。皆にも飲んでもらいたくて」


「お、ええやん。セレナのとこの茶葉?」


「すごく良い香りですね」


皆が興味を示してくれたのを見て、私は内心でチャンスだと思った。


(これは……話題の中心を、私じゃなくてセレナに持っていける流れかも)


「セレナさんのご実家、すごく素敵なお屋敷でしたよ。庭園もきちんと手入れされていて」


「そうなんですね、行ってみたいです」


「なあ、今度皆で遊びに行こか?」


(よし、いい感じ……! セレナの話題で進んでる……!)


ところが、しばらく話が続いたところで、ふとゼノンがこちらを向いた。


「そういや、モブリーヌも一緒に泊まったんやろ? どんな感じやった?」


「え……あ、はい、すごく良いお宅でした」


「お前、最近セレナの家族とも仲良いんやな」


「それは……たまたま、というか」


「殿下にも自信を持つように言ったり、ゼノンにも色々言ったり。お前、本当に皆の世話好きだよな」


エイデンがそう言うと、ユリウスも頷いた。


「確かに。彼女がいると、いつも何か新しい話が増える」


(あれ……? お茶の話から、結局また私の話になってる……!)


「モブちゃんって、本当にすごいよね。私のお家のことまで、こんなに気にかけてくれて」


セレナがにこやかにそう言うと、皆も一斉に頷いた。


「ほんまやな。気配り上手やん」


「私も、いつも助けられています」


(これじゃ、お茶の話題で逸らそうとしたのに、結局全部私の話に戻ってきてる……!)


内心で頭を抱えながらも、表面上はなんとか笑顔を保つ。


「い、いえ、そんなことは……お茶、せっかくセレナさんが持ってきてくれたので、いただきましょうか」


なんとか話を戻そうとお茶を配る作業に移ったものの、皆は引き続き、和やかな調子でこちらに話題を振ってきた。


「モブリーヌの分、ちゃんと一番美味しいところ入れたから」


「私も、モブちゃんに一番楽しんでもらいたいな」


(結局、お茶を飲む段階になっても、私が中心になってる……!)


その日の部活が終わり、寮の部屋に戻った後、私はベッドに倒れ込みながら考え込んでいた。


(何か話題を振っても、結局私の話に戻ってきちゃうの、なんなんだろう……)


これでは、攻略対象たちとセレナの関係を深めるどころではない。


何か違うアプローチを考えなければ、と思いながら、私はその日も悩み続けることになった。


そんなことを考えていると、セレナが着替えを済ませてベッドの隣に座ってきた。


「今日も楽しかったね」


「うん、そうだね」


セレナは少し考えるような顔をして、それから珍しく、複雑な表情を浮かべた。


喜びと、少しの寂しさが混ざったような顔つきだった。


「最近、本当に毎日楽しいんだ。モブちゃんが、皆と話す機会をいっぱい作ってくれるから」


「それは、よかった」


「でも……最近、モブちゃんと二人で話す時間、ちょっと減った気がして」


「え……」


「殿下とか、ゼノンさんとか、皆と話すのも楽しいんだけどね。やっぱり、一番楽しいのは、モブちゃんと話す時間なんだ」


セレナはそう言って、少し恥ずかしそうに笑った。


「困らせるつもりはないんだけど……ちょっとだけ、寂しいなって」


その言葉に、胸の奥がぎゅっと締まる。


(これは……完全に裏目に出てる。良かれと思ってやってたことが、セレナを寂しくさせてたなんて)


「ごめん、ね。そんな気持ちにさせるつもりじゃなかった」


「ううん、モブちゃんが悪いわけじゃないよ。皆と仲良くなれるように頑張ってくれてるの、ちゃんと分かってるから」


セレナは小さく笑って、それ以上は深く追及しなかった。


けれど、その表情の動きの豊かさが、いつもよりずっと鮮明に伝わってきた気がした。


(セレナの感情、本当に色々な顔を見せるようになったんだな……でも、その分、私のやってることが、ちゃんと伝わっちゃうんだ)


灯りを消した後も、私はしばらく、セレナの言葉を思い返していた。


(私が誰かと誰かを繋げようとする行動、セレナにとっては、ただの「私との時間が減る」ことになっちゃうのかもしれない)


良かれと思ってやっていたことの裏側に、こんな気持ちが隠れていたとは思わなかった。


今後の方針を、もう一度考え直す必要がありそうだった。

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