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モブだったはずなのに~気づいたら、誰よりも大事にされていた~  作者:


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12/30

【12話】帰り道、2人で

翌朝、目を覚ますと、隣にはまだ眠っているセレナの顔があった。


穏やかな寝顔を見ながら、昨日聞いた話を思い出す。


そっとベッドから出て、身支度を整える。


物音に気づいたのか、セレナも目を擦りながら起き上がった。


「おはよう、モブちゃん」


「おはよう」


慣れない言葉の崩し方に、まだ少しぎこちなさが残る。


それでもセレナは嬉しそうに微笑んだ。


「ちゃんと言えてる。嬉しいな」


朝食の席では、両親が「またいつでも来てね」と笑顔で送り出してくれた。


屋敷の前で馬車を待つ間、セレナの母がそっと耳元で囁いた。


「これからも、娘のこと、よろしくね」


「はい、もちろんです」


馬車に乗り込み、学園へ向かう道のり。


窓の外には、見慣れた街並みが流れていく。


「昨日は、本当にありがとう」


セレナがぽつりと言った。


「お父様もお母様も、すごく喜んでた。私も、すごく楽しかった」


「私も楽しかったよ。ご両親、本当に優しい方たちだった」


しばらく沈黙が続いた後、セレナが少し考え込むような顔をした。


「私、こうやって誰かと泊まったり、一緒に過ごしたりするの、初めてだったんだ」


「うん、知ってる……ご両親から、少し聞いた」


セレナは少し驚いた様子を見せたが、それ以上は気にせず、不安そうな顔でこちらを見つめてきた。


「ねえ、モブちゃん。昨日、本当に楽しかった……?」


「うん、もちろん。すごく楽しかったよ」


「よかった……お父様もお母様も初めてだったから、なんだか色々勝手にやりすぎちゃったかなって、ちょっと心配で」


そう言うセレナの表情は、いつもと変わらない、柔らかい笑顔だった。


普段の優しい笑顔、控えめな振る舞い。


傍から見ていたら、何も変わったところはないように思える。


けれど、その内側では、初めての友達付き合いに戸惑いながら、不安を抱えながら、それでも一生懸命距離を縮めようとしていた。


「全然、勝手にやりすぎてなんかないよ。むしろ、すごく嬉しかった」


「そう、なら良かった」


セレナがほっとしたように笑ったところで、私はせっかくの機会だと思い、少し探るように尋ねてみた。


「ねえ、セレナ。部活の皆って、セレナにとってどんな存在? 殿下とか、ゼノンさんとか」


「え……?」


セレナは一瞬きょとんとした顔をして、それから視線をすっと逸らした。


「皆、いい人たちだよね。優しいし、好きだよ。……でも」


「でも?」


「モブちゃんは、ちょっと特別な感じがするんだ」


「特別、って……」


「うーん、説明が難しいんだけど……あ、見て、外の景色、綺麗じゃない?」


「セレナ、また話逸らした?」


「逸らしてないよ。ほら、本当に綺麗だから」


明らかに話題を変えようとする態度に、私は思わず苦笑してしまった。


「今は、他の人の話はしたくないかな。今日は、モブちゃんとの話で、いっぱいいっぱいだから」


そう言われると、これ以上追及するのも野暮な気がして、私は素直に頷くことにした。


「分かった、また今度聞かせて」


「うん、また今度ね」


セレナはほっとしたように、いつも通りの調子で次の話題を振ってきた。


「今日も、いつものお茶の時間、楽しみだね。あ、そうだ、うちから美味しいお茶、持ってきたんだ。皆にも飲んでもらいたくて」


「それは楽しみだね。きっと皆も喜ぶよ」


寮に着くと、二人で部屋に荷物を置き、いつもと同じように朝の準備を始める。


表面上は、何も変わらない日常がまた始まっていく。

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