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モブだったはずなのに~気づいたら、誰よりも大事にされていた~  作者:


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10/30

【10話】中間テスト終了、そして肝試し

中間テストが終わった日の夜、貴茶研のメンバーで軽い打ち上げをすることになった。


部室に集まり、それぞれ試験の出来や反省を話しながら、和やかな時間が流れていく。


「皆さん、お疲れ様でした!」


「いやー、終わったらほんま気が楽やな」


ゼノンが伸びをしながら笑う。


隣でエイデンも、ほっとした表情を浮かべていた。


「やっと終わりましたね……正直、ちょっと自信ないですけど」


「私も、あまり自信がない。でも、最後まで頑張れた気がする」


ユリウスがそう言うと、セレナが優しく頷いた。


しばらく雑談が続いたところで、ふと誰かが「せっかくだから、何か特別なことをしようよ」と言い出した。


それを受けて、私はある提案を持ち出してみた。


「試験も終わったことですし……肝試し、してみませんか?」


「肝試し? いいですね、やってみたいです」


セレナが目を輝かせる。


ユリウスも興味を示し、ゼノンは「おもろそうやん」と乗ってきた。


エイデンだけが少し不安げな顔をしていたけれど、結局は皆の流れに合わせてくれた。


「ペアは……くじ引きで決めましょうか」


その提案に、全員が頷いた。


私は密かに、内心で計算していた。


(これは……セレナと誰かをくっつける、最後のチャンスかもしれない……!)


校舎の旧館は、夜になると不気味な雰囲気を漂わせている。


普段は使われていない一角で、ちょっとした肝試しにはちょうど良い場所だった。


皆で紙を折って箱に入れ、順番に引いていく。


「私から引きますね」


最初に引いたのはセレナだった。


紙を開いて、こちらに見せてくる。


「あ……モブちゃんと一緒だ」


「え……私と、ですか」


紙に書かれた名前を確認して、私は思わず固まった。


(ちょっと待って……! セレナと私が組んじゃったら、本来の目的、完全に失敗じゃ……!)


(これじゃ、セレナと攻略対象、誰ともくっつかない……!)


内心で頭を抱えながらも、もう一度くじを引き直すのも変だと思い、結局そのまま受け入れることにした。


旧館の中は、思った以上に静かで、ところどころ蝋燭の灯りが揺れている。


セレナと並んで歩きながら、私はそわそわとした気持ちを抑えられなかった。


「モブちゃん、怖い?」


「ち、ちょっとだけ……でも、セレナさんが一緒なので、大丈夫です」


「えへへ、嬉しい。私も、モブちゃんと一緒で安心してる」


セレナがそっと私の手を握ってきた。


温かい手の感触に、思わず動きが止まる。


(これは……これは、本来あるべき展開と全然違う……でも……)


なんだか悪い気はしない。


むしろ、こうして手を繋いで歩く時間が、自然と心地よく感じられてしまう。


「ねえ、モブちゃん。今日、すごく楽しかった。最近、毎日楽しいんだ」


「私もです。セレナさんと過ごす時間、大切に思ってます」


「えへへ……これからも、ずっと一緒にいてね」


その言葉に、胸の奥がふわっと温かくなる一方で、頭の片隅では別の感情が渦巻いていた。


(これじゃダメなのに……! セレナの恋愛フラグ、私が完全に乗っ取っちゃってる……!)


旧館を一周し終え、皆で合流したとき、ユリウスとゼノンの組も、特に何か進展があったようには見えなかった。


「いや、正直に言うと……怖がる前に、ゼノンとずっと馬鹿話をしていただけだった気がする」


「せやな、怖さより楽しさが勝ったわ。意外と喋るやん、王子」


ユリウスが苦笑いしながら言うと、ゼノンがからからと笑った。


(これじゃ、本来の目的、誰も達成できてないじゃん……!)


そう肩を落としていたところで、エイデンがぽつりと声をあげた。


「あの……僕、結局誰とも組めなかったので、まだ一周してないんですけど」


人数が五人だったため、ペアが二組と、一人余ってしまっていたのだ。


誰もその点に気づいていなかったことに、今になって気づく。


「あ……! すみません、エイデンさん、忘れてました」


「いえ、僕も気づいたの今です……」


「じゃあ、もう一度くじを引いて、誰かエイデンさんと一緒に回りましょうか」


その提案に皆が頷き、再び紙を折って箱に入れる。


今度はエイデンと組む相手を決めるための一本勝負だ。


「私が引きますね」


そう言って手を伸ばしたのは、私だった。


紙を開いて、思わず声が漏れる。


「……あ」


そこには、エイデンの名前が書かれていた。


「私と、ですか」


「そうみたいです……よろしくお願いします」


二度目の肝試しは、結局私とエイデンの組で行うことになった。


先程よりも静まり返った旧館を、二人で歩いていく。


「すみません、僕のせいで、また回ってもらうことになって……」


「いえ、大丈夫です。気にしないでください」


「……ありがとうございます。モブリーヌさんは、いつも優しいですね」


エイデンがそう言って、少し気恥ずかしそうに視線を逸らした。


「私なんて、ドジで迷惑かけるばかりだから……正直、誰かと組むの、ちょっと不安だったんです」


「そんなこと、ないですよ。エイデンさんと一緒で、私は楽しいです」


「……そう、ですか」


蝋燭の灯りに照らされたエイデンの顔が、ほんの少し赤く見えた気がした。


(あ……これ、もしかして……)


何かが少しだけ動いた予感に、私は内心で密かに首をかしげていた。


旧館を一周し終え、再び全員で合流する。最終的に、肝試しという名目で集まった夜は、誰の恋愛フラグも明確には進展しないまま、ただ和気あいあいとした時間として終わってしまった。


寮への帰り道、私はセレナと手を繋いだまま、複雑な気持ちで夜空を見上げていた。

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