四章三話「愛を燃やす炎」
戦闘が始まった瞬間。
僕はまず、“叫無の致命傷”を探ろうとした。
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視線を合わせる。
骨格。
筋肉。
神経。
魂の流れ——
いつもなら全て見える。
だが。
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「来い——羅刹」
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叫無が低く呟いた瞬間。
僕と叫無の間に、“鬼”が現れた。
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巨大だった。
赤黒い肌。
捻じれた角。
無数の腕。
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まるで地獄そのもの。
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しかも。
こいつが邪魔で、叫無の構造が見切れない。
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叫無は肩を竦めた。
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「この能力は、本来この階層のもんじゃねぇ」
「だが、お前は危険すぎる」
「悪いが最初から全力で行かせてもらう」
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羅刹が拳を振り下ろす。
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——ブォン!!
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空気が裂けた。
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だが。
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「遅い」
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僕は羅刹の腕へ触れる。
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——バキッ!!
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鈍い音と共に、羅刹の腕が折れ曲がった。
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「へぇ」
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致命箇所。
見えた。
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その瞬間。
叫無の“色”が揺らいだ。
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怒りが薄れた。
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なるほど。
こいつは感情で動いてる。
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僕はすぐに肉体のストックを喰らった。
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【喰骸】
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力が溢れる。
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次の瞬間。
僕は叫無の懐へ踏み込んでいた。
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「——っ!?」
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そして。
弱点へ一撃を叩き込む。
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だが。
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気づけば。
僕の身体が吹き飛んでいた。
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「……あ?」
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魂にヒビが入る。
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叫無が静かに口を開いた。
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「【返業】」
「受けた痛みを、そのまま返す能力だ」
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さらに。
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「【不滅】」
「致命傷を受けるほど強くなる」
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叫無の身体から、禍々しい力が膨れ上がる。
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「なるほど」
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僕は笑った。
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「楽しいなぁ」
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そして。
三つ目の能力を発動する。
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【亡者兵装】
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取り込んだ人格を、武器や鎧として具現化する能力。
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僕の中には今——二千五百万人近い人格がいる。
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「まずは十人くらいでいいか」
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人格を武器へ変換。
剣。
槍。
鎧。
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まるで悲鳴で出来た武装だった。
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僕は再び羅刹へ突っ込む。
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——ギィン!!
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だが浅い。
弱点じゃない。
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「ははっ!」
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まるでボス攻略だ。
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最高に楽しい。
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◇◇◇
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俺は驚いていた。
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大叫喚地獄を突破し。
無間地獄の門番戦も勝ち抜いた。
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だから。
参加者程度に苦戦するはずがなかった。
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しかも俺は、最初から切り札の羅刹を出している。
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なのに。
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「……羅刹にダメージを与えただと?」
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信じられなかった。
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しかも。
あいつは笑っている。
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まるで遊んでるみたいに。
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長引けば危険だ。
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そう判断した俺は、【断罪】を発動した。
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【断罪】
相手の“罪”に比例して威力が上昇する。
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こいつほど罪深い奴はいない。
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終わりだ。
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俺は一瞬で距離を詰め、拳を叩き込んだ。
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——ドゴォォォッ!!
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直撃。
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だが。
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「……なんでだ?」
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消えない。
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罪の量なら、即死してもおかしくない。
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なのに。
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あいつは笑っていた。
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俺は思わず問いかける。
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「お前……罪悪感は無いのか?」
「今まで殺した奴らに、何も思わねぇのか?」
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すると。
あいつは少し考えてから答えた。
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「ないよ?」
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悪意のない声だった。
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「でも一人だけ、面白い奴がいたなぁ」
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「母親を箱に詰めて殺した後、その息子をずっと観察してたんだ」
「成長して幸せになった頃に、家族を同じように箱詰めにして殺したらどうやって壊れるのか見て見たくて」
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頭が真っ白になる。
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まさか。
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「そいつ全然壊れなくてさ」
「悲しかったなぁ」
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——ブチッ。
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何かが切れた。
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「——見つけたぞ」
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震える声だった。
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「家族の仇……!」
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羅刹が黒く染まる。
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怒り。
憎悪。
殺意。
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俺の全てが羅刹へ流れ込む。
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◇◇◇
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「あははははっ!!」
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僕は歓喜していた。
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あの時の男だ。
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あの壊れなかった男。
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最高だ。
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羅刹の攻撃が激しくなる。
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威力が段違いだった。
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さすがに痛い。
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だから。
僕は人格を喰らった。
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一万。
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人格達が消えていく。
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でも構わない。
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勝てばいい。
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力が爆発的に膨れ上がる。
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僕は黒い羅刹の四肢を引き千切った。
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◇◇◇
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届かない。
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俺の怒りじゃ届かない。
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このまま負ければ。
こいつが門番になる。
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もし。
閻魔大王にでもなったら。
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もし。
息子が地獄へ来たら。
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何をされる?
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その瞬間。
俺の中に、別の感情が生まれた。
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怒りじゃない。
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息子を少しでも守りたい。
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「……羅刹」
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羅刹の赤黒かった姿が。
白と赤の姿にかわる。
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その姿は、まるで神だった。
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そして。
新たな能力が流れ込む。
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【獄炎】
“消えると致命傷になるもの”を燃やし尽くす。
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代償として。
一時的に五感を失う。
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だが構わない。
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俺は羅刹へ全てを託した。
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◇◇◇
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「——ぁ」
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僕は燃えていた。
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熱くない。
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だが。
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僕の中の人格達が、消えていく。
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『やっと還れる』
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『ありがとう』
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『もう苦しくない』
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違う。
違う違う違う。
お前達は、僕の家族だろ?
一緒にいてくれるんじゃなかったのか?
なんで、
“消えて嬉しそう”なんだよ。
やめろ。
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行くな。
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置いていくな。
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一人にしないでくれ。
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「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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僕の中で、何かが壊れた。
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そして。
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無意識に叫無の首へ手を伸ばす。
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「許さない……!!」
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叫無も限界だった。
僕も限界だった。
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魂は、もうほとんど残っていない。
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それでも。
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僕は叫無を喰らおうとした。
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その瞬間。
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消えていく。
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無へ。
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◇◇◇
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閻魔大王が現れる。
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「命拾いしたな、叫無」
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俺は膝をついたまま睨み返した。
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「……仇を取れなかった」
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閻魔大王は笑う。
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「あれは無へ還った」
「まあ、続けてもお前が負けていたがな」
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悔しさで歯が軋む。
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すると閻魔大王は、面白そうに笑った。
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「あの男」
「最後まで愛されたことに気づけなかった」
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「実に哀れだ」
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そう言い残し、消える。
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俺は静かに拳を握った。
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怒りだけじゃ届かない。
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だが。
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今の俺には、それ以外もある。
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「待ってろ……閻魔大王」
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「いつか、お前を殺すその時まで」
四章三話 完
五章一話へ続く




