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大阪擬人化BL  作者: 桐生桜
【難波×梅田】

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13/14

13「覚えてへんわけ、ないやろ」

 数日ぶりに顔を合わせたのは、偶然だった。仕事帰りの街角。繁華街の居酒屋の前で、梅谷は南の姿を見つけた。明るい声で笑いながら、誰か……女の子と一緒に出てくるところだった。梅谷は反射的に目を逸らし、背を向けて歩き出す。けれど、胸の奥で何かがチクリと痛んだ。


(……何やねん、別に。関係ないやろ……)


 そう自分に言い聞かせても、心はごまかせない。まだはっきり名前をつけられない想いが、喉の奥に引っかかる。



***



 翌日。梅谷の家のインターホンが鳴った。扉の向こうに立っていたのは、他でもない南だった。


「……なんや、急に」

「梅谷に話したいことあって」

「はぁ……」


 梅谷はため息をつきながらも、黙って扉を開けた。部屋に入っても、しばらくふたりの間に言葉はなかったが、やがて南がぽつりと切り出した。


「昨日、見られてたんやな」

「……あぁ、せやな。まぁ、行動範囲一緒やからあり得ることやろ」

「……なんか誤解させたんなら、悪いな」

「別に……何も思ってへんよ」


 強がった言葉は、どこか乾いていた。


「そっか……でも俺は、ちゃんとお前に言いたいことあるから来たんや」


 南が一歩、距離を詰めてくる。梅谷はとっさに目をそらした。


「な……なんなん。お前、俺のことどうしたいん」


 その問いは、梅谷自身にも向けられているような気がした。しばらく無言が続く。


「はぁ…もうええわ。お前にとっては、どうせあの夜のことも……全部、忘れてるんやろ?」


 耐え切れなくなった梅谷が立ち上がり、背を向ける。数秒の沈黙。


「……覚えてへんわけ、ないやろ」


 ぽつりと零れたその声は、静かで、でも芯があった。聞き間違いかと思い梅谷は、振り返る。すると、南はまっすぐこちらを見ていた。


「ほんまはな、あの時ちょっとだけ覚えててん……でも、お前の顔が必死すぎて、怖かってん」

「……はよ言えボケ」


 梅谷は呆れたように言いながらも、少しだけ目が潤んでいた。梅谷の様子を伺いながら南は一歩近づく。


「じゃあ……もう一回、ちゃんとするわ。今度は、覚えとく」

「うん」


 震える手で梅谷の頬に触れる。少し赤くそまった頬を見て南の顔がほころぶ。指先は頬を撫で、そのまま耳、後頭部にずれていく。


「……お前のこと、大事にしたいって思ったん、あの夜からやねん」


 鼻先がぶつかりそうなくらいに梅谷を引き寄せ、そして……今度は南から、そっと唇を重ねた。


 今度は逃げなかった。今度は、ちゃんと受け止めた。あの夜、壊れそうだったふたりの距離が、ようやく静かに重なった。


To be continued


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