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大阪擬人化BL  作者: 桐生桜
【難波×梅田】

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11/14

11「笑ってほしいだけやのに」

 休日の午後。小さなライブハウスの片隅で、梅谷は開演を待っていた。南に「暇やろ?」と軽く誘われただけのはずなのに、心は妙にそわそわしている。やがて舞台に、スポットライトが落ちる。


 そこには南が立っていた。いつもの調子でテンポよく……と、思ったのは最初だけだった。ほんの小さなズレが、笑いのリズムを崩す。ツッコミが浮き、ボケが滑る。観客の反応は鈍く、会場には微妙な空気が流れ始める。梅谷は、拳をぎゅっと握った。


 終演後、人気のない裏道。南は缶コーヒー片手にしゃがみ込み、俯いていた。


「……お疲れさん」

「……あぁ」


 梅谷が声をかけても、南は顔を上げようとしない。


「お前、俺がスベってんの見て笑ったん?」


 かすれた声に、梅谷はそっと目を細める。しばらく黙ったあと、小さく答える。


「笑わん」

「……」

「お前、めっちゃカッコ悪かったけど……俺は、好きやった」


 南の視線が、ようやく梅谷をとらえる。そのまま、ためらいがちに、けれど真剣な声音で言った。


「……なぁ、梅谷。キスして、ええ?」


 一瞬、梅谷の全身から血の気が引いた。


「……は?」


 笑うような声が出た。けど、それは照れ隠しでもあり、戸惑いでもある。


「なんやねん、それ。……冗談にしても、タチ悪いわ」


 南はうつむいたまま、ぽつりとつぶやく。


「冗談ちゃうけどな」


 梅谷は言葉を失った。逃げ場を探すように、缶コーヒーをぐっと握る。


「……なんで、そんなこと言うん」

「……たぶん、自分でも、まだよう分かってへんねん。でも、今日のお前見てたら……俺、めっちゃ安心したんや」


 南の声は、いつもの調子じゃなかった。梅谷の胸の奥が、じんわり熱くなる。でも、まだこの感情に名前をつけるには、心が追いついていなかった。ふたりの距離が、静かに、でも確かに近づいていく気配がした。


To be continued


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