↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願いが一つだけ叶うノートを手にした僕は、あのツンツンした薬剤師に使うべきか迷っている  作者: 播磨 颯太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/47

28.暴走の結末

すみれ薬局 11:30


「いやーーーっ!!」


彩子の叫びは、ただの悲鳴ではなかった。

恐怖と嫌悪が混ざり合った、喉が裂けるほどの拒絶。


次の瞬間——


カウンターの上にあったものが、手当たり次第に宙を舞った。


「来ないで!!来ないで!!」


ガンッ!

パシッ!

プラスチックのケース、ボールペン、書類、トレー——


「お、おい!ちょっと待てって!」


大原は慌てて身をよじりながら避ける。


「オレだって!彩子!大原だって!」


しかし、その声は届かない。


「出て行って!!!」


彩子は完全に取り乱していた。

呼吸は荒く、目は見開かれ、指は震えながらも次の物を掴んで投げつける。


待合の椅子に座っていた老人たちは、ざわざわと騒ぎ始める。


「な、なんやあれ…」

「大丈夫なんか…」


騒ぎは奥の調剤室にも響く。


バタン、と扉が開き、白衣の薬剤師たちが飛び出してくる。


「彩子さん!?どうしたの!?」


女性薬剤師が駆け寄る。


彩子はその腕を掴み、震える指で大原を指差す。


「あいつが…!あいつがまた来た!!」


その一言で空気が凍る。


もう一人の女性薬剤師が、即座にスマホを取り出す。


「警察呼びます!」


そのやり取りの最中——


大原は、まるで状況を理解していなかった。


むしろ、確信している顔だった。


「おいおい、なんだよ照れてんのか?」


両手を広げ、ゆっくりと歩み寄る。


「大丈夫だって、オレだよ、彩子」


——狂っている。


春彦は外からそれを見ていた。


(なんでだよ…なんでこうなる…!)


足に力が入らない。


さっき突き飛ばされた衝撃がまだ残っている。


だが、視線の先で——


大原が、じりじりと距離を詰めていく。


彩子と、それを支える薬剤師の顔が、明らかに恐怖に染まっている。


(……ダメだ)


(このままだと——)


春彦は、歯を食いしばった。


立ち上がる。


「やめろ!!」


自動扉が開き、店内に飛び込む。


そのまま背後から、大原に飛びつく。


「何してんだよお前!!」


「うるせえ!どけ!!」


ドゴッ——!


鋭い肘打ちが、春彦の脇腹に突き刺さる。


「ぐっ…!」


息が詰まる。


それでも離さない。


「奥行って!!」


春彦は叫ぶ。


「早く!!」


彩子と女性薬剤師は、はっとして動く。


バタバタと調剤室へ駆け込み、ドアを閉める。


ガチャッ——鍵の音。


店内は騒然。


「警察まだか!?」

「誰か止めろや!」


しかし誰も動けない。


大原は暴れ続ける。


「どけよ!邪魔すんなって!!」


もはや、止めに入っているのが春彦ということも気づいていない。


バンッ!バンッ!


春彦の体に、何度も衝撃が走る。


(くそ…!)


その時——


「警察です!!」


入口から二人の警察官が飛び込んできた。


一瞬で状況を把握し、大原に向かう。


「動くな!」


「うるせえ!!」


だが——


次の瞬間には、完全に制圧されていた。


床に押さえつけられ、腕を取られる。


「放せ!放せって!!」


「落ち着けって!」


大原はなおも叫ぶ。


「彩子はオレのことが好きなんだって!!」


その声が、空しく店内に響く。


春彦は床に膝をつき、息を荒げていた。


警察官が近づく。


「大丈夫ですか?」


「……なんとか…」


かすれた声で答える。


大原はその場で現行犯逮捕。


「暴行の疑いで逮捕します」


「は!?なんでだよ!!」


手錠がかけられる。


連れて行かれる際も、なお叫ぶ。


「なんでだよ…!なんでだ…!!」


その声が遠ざかっていく。


やがて、静寂。


——しばらくして。


調剤室のドアがゆっくり開く。


彩子が出てくる。


まだ震えている。


警察官が事情を聞く。


女性薬剤師も補足する。


春彦の元にも、別の薬剤師が来る。


「大丈夫ですか?」


「はい…大丈夫です」


そう答えるしかなかった。


⸻


春彦の家 17:00


玄関のドアが閉まる音が、やけに重く響いた。


靴を脱ぎ、部屋に入る。


どっと疲れが押し寄せる。


ベッドに腰を落とす。


(……終わった)


警察での事情聴取。


長かった。


だが——


大原のことは、もうどうでもよかった。


(あれだけ止めたんだ)


(ああなるのは、自業自得だろ…)


問題は、そこじゃない。


春彦の視線が宙をさまよう。


(もし……)


(もし、この件で彩子が辞めたら……?)


胸が締め付けられる。


(それだけは……絶対に嫌だ)


そして——


もう一つ。


どうしても理解できないこと。


「……なんでだよ」


呟きが漏れる。


(“彩子が大原を好きになる”)


(確かに書いたはずだ)


しかも——


中嶋にとっては初めての願い。


条件は満たしている。


時間も、4時間以内だった。


なのに——


結果は、あれだ。


完全な拒絶。


(ありえないだろ……)


嬉しかった。


正直、心底ほっとした。


だが同時に——


(これじゃ使えない)


(同じことが起きたら……終わりだ)


春彦はゆっくりとカバンに手を伸ばす。


ノートを取り出す。


ページをめくる。


何度も、何度も見返す。


正美の願い。


堀田の願い。


そして——


中嶋の書いた一文。


「……」


その文字を見つめた瞬間。


春彦の目が、見開かれる。


「……あ」


呼吸が止まる。


「……もしかして……そういうことか……!」


決定的な違い。


それに気づいた瞬間、背筋に電流が走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました! ブクマ・ポイント評価お願いしまします!

前作もぜひお読みください!

占いの館で彼女を奪われ、異世界で王族の婚約者にされたので、僕は必ず取り戻す

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。