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シロクロイロ  作者: 双葉ゆず
第一幕 はじまり
19/60

第二試験 後編

私は悪魔を見つめる。スーツを着ており、格好は至って普通という感じだ。しかし、特有の角や尻尾を見れば、人間でないことは一目瞭然である。

それより気掛かりなのは、悪魔が木織であることだ。どう見ても木織。真顔で冷酷な雰囲気だが、まんまだ。これも試験の内なのだろう。知り合いであれ何であれ、悪魔を討てるのかどうか、試されているのだ。

今のところ、標的は私がいることに気付いていない。中級悪魔だから一発は厳しそうだけれど、どっちみち、やってみるしか。


水弓攻撃・【海原一雫】


魔術回避【闇靄】


弓を力強く引く。放たれた矢は的確に悪魔の胸へ飛んだが魔術で呆気なく躱された。ついでに靄がかかって真っ暗だ。そのせいで悪魔を見失ってしまった。

でも心配いらない。靄は時期に晴れるはず。バサバサと翼をはためかす音を頼りに悪魔の位置を把握する。頭上から来る。体に天力を巡らせ、体重をかけて踏み込む。上へ飛んだと同時に悪魔が地面に交差した爪痕を十本も刻んだ。


魔術攻撃【狂爪】


……危ない。あの爪は刀よりも鋭い。真面にくらってたら死んでた。

「水音さん、あと十分です」

依雲の声に、私は軽く唇を噛む。

思ったより時間やばい。試験だから五代魔術以外は使わないにしても、術の精度が格段に向上していて強い。これが中級悪魔。


魔術攻撃【暗黒魔弾】


靄に紛れて紫色の魔弾が大量に迫る。拳ぐらいの大きさで動きも速い。空吸を使いつつ身を翻して避ける。回避すると魔弾は崩れて消えた。

織火の持つ日本刀のような物ならば攻撃の受け流しもできるけど、弓矢は無理だ。矢を番る余裕もない。

落ち着け私。悪魔の位置は常に把握。靄が晴れるまで耐えるんだ。できる。絶対やる。


水回避・【雨衣】


衣に私の身代わりとして攻撃を受けてもらう間に薄い靄の中を飛び進む。

魔弾が切れた。靄も晴れ、敵の姿が露わになる。刺々しい真っ黒な翼は悪魔そのものであった。あの翼も諸共攻撃して動きを止める。弓を全力で引っ張って、天力を巡らせる。最大出力、攻撃準備完了!


水弓攻撃・【嵐流】!


放った。矢は複数に分裂して技名の通り嵐の如く荒れ狂い、猛スピードでぶっ飛んだ。空気を斬る音が激しく響き渡る。全ての矢が翼や体、最後に胸に突き刺さる。

「ぐあああああ」

激しい断末魔と共に悪魔の体は靄と化し、崩れるように無くなっていく。最終的には跡形もなく消え去った。

天を仰ぎ呻く姿はどこか寂しそうで、何とも苦しげな表情。木織だから、そう思ってしまうのだろうか。言葉では言い表せない哀れなものに胸が痛んだ。


「終わった……」

天力を大量に使った代償なのか、戦いが終わってすぐの私を疲労が襲う。足がガクンと曲がり、そのまま座り込む。安堵のため息が漏れた。弓は小型化して腕時計のポケットに仕舞っておく。

「合格おめでとうございます。VRゴーグルを外してください」

頭が重いと思えば、ゴーグルを着けていたのを忘れていた。ゆっくり外すと明るい光が差した。無意識に目を閉じる。何度か瞬きを繰り返し、やっと周りの景色に慣れた。

そこは見慣れた場所だった。背後には段ボール迷路がある。



「おめでとう水音。白天士決定だ」

「ありがとうございます」

審査員の織火から結果を告げられ、弱々しい返事を返す。疲労の影響が凄まじい。

「随分と疲れてるな。寮に帰って休んだ方がいいだろう。美煉、付き添ってあげてくれ」

「すみません」

「午前中から此処にいたら神経使うだろうから、疲労が蓄積するのも無理はないよ。ゆっくり休め」

一分も経たない内に美煉が来て「お疲れ様」と声をかけてくれた。それだけで安心して、笑顔が溢れた。手を繋ぎ、寮へ戻る。


道中、美煉から私の試験中に、どっと疲労が押し寄せた流文が突如倒れ、治療所に運ばれたという話を聞いた。会場は一時騒然としたそうだ。元気なのは嘘だったらしい。

それもそうか。美煉も私の順番までテーブルに伏せて寝ていた。疲れるのは当たり前だ。

「とにかく試験合格できて良かったあ」

「うん」

「今後も訓練や体力作りは怠らないようにしないと。頑張ろうね水音ちゃん」

美煉が頬を紅く染める。私も笑顔を返した。


合格して終わりではない。

ここからが始まりだ。


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