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シロクロイロ  作者: 双葉ゆず
第一幕 はじまり
18/60

第二試験 前編

 時は経ち、今日は第二試験本番。スポーツウェアを纏った受験者の集う会場は、これまでにない緊張感で溢れていた。

今年度の参加者は二十五人。去年、不合格だった先輩たちも含まれている。また、第二試験は一人一人時間を要するため、三日かけて行われる。五十音順なので、さ行の私は一日目の最後だと言われた。という訳で、此処にいる友達は流文と美煉ぐらい。他の人は寮内で、中継を見ているのだろう。

この試験で、白天士になれるかが決まる。自身の今後を、そして未来を左右する。今日まで培ってきたモノを此処で全て発揮するんだ。今回は絶対に逃げない。



「皆さん、おはようございます。サポートAIの依雲です。今回は第二試験の進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」

大画面のスクリーンに依雲が映る。今日はいつになく真剣な表情だ。

「試験の審査を行われるのは、織火様と木織様になります。御二方、よろしくお願いします」

織火と木織が画面越しに此方へ会釈する。二人は会場には来ず、モニター室から中継しているそうだ。


「それでは、これより第二試験を開始します。一番の方、準備してください」

一番は流文だ。ゴーグルの装着をし、武器を手に合図で迷路に入っていく。トップバッターは不安だろうけど、強気な流文ならきっと大丈夫。私は無言で応援した。



 待ち時間は喋るも良し、寝るも良し、飲み食いも良し。好きに使っていいという。そこで私は会場の隅にある休憩スペースで、リラックスしながら試験の様子をモニターで見る事にした。

モニターは二つあり、それぞれ映像が流れていた。一つは迷路の上を飛び交うドローンが捉えたもの。もう一つは流文視点のものだ。流文は悪魔に遭遇すると、武器である本のページを破り、それに天力を込める。あの武器、こんな風に使うのか。

「物語攻撃・【青柿】」

そう唱えると、悪魔の頭上から熟していない柿が大量に降ってきた。まるで『さるかに合戦』の猿が、蟹に柿を落として悪戯しているようだ。これが流文の独自属性、物語。本が好きな彼らしい。


「水音ちゃーん」

美煉が私の方へ駆け寄ってくる。流文が終われば、次は美煉。順番が近づく程、心音は大きく、脈打つのは速くなり、緊張感が増すのだろう。胸を押さえていた。

「大丈夫だよ。はい、深呼吸」

「えっ」

いきなりで驚きつつも、美煉は私の言う通りに深呼吸をする。スー、ハー。深く深く息を吸って、ゆっくり吐く。これを繰り返すと、緊張もほぐれる筈だ。

「……うん、落ち着いてきた。ありがとう」

「良かった」

美煉がにっこりと笑う。その顔が、弟の微笑む姿を彷彿とさせた。



 流文の試験が終わった。制限時間五分を残し、結果は合格。彼は白天士になれることが確定した。次は美煉だ。もう一度深呼吸をして、迷路の中へ消えた。


「よう」

「お疲れ、流文君」

流文が首にタオルをかけた状態で、私の所に来た。試験終わりとは思えないほどピンピンしている。まだまだ体力が有り余っていそうな感じだ。

「元気そうだね。手応えはどうだった?」

「それなりにあった。でもまあ、この程度、俺には楽勝だったけどな」

自信満々のドヤ顔が出た。ここはスルーしておこう、うん。私は目を伏せる。


「心配しなくても、水音ならいけるよ」

「……え?」

流文は突然、何を言い出すのだろう。藍色の瞳が真っ直ぐ此方を見ている。

「平気そうな面して、本当は緊張してるんだろ? はい、深呼吸」

「ええっ」

実は昨日の夜から緊張していたのだが、見抜かれていたらしい。さっきは私が深呼吸を促していたのに、今は立場が逆になっている。そう思いながらも、息をする。スー、ハー。高鳴っていた鼓動が少しずつ収まる。

「ありがとう。もう大丈夫」

「そうか」

流文の口角が僅かに緩む。私はそれに笑顔を返しておいた。




 私の順番が回ってきたのは午後だった。ここまで数人が不合格になり、少し不安もあるが、心の準備は万端だ。あとはゴーグルの装着と武器の用意。

これで大丈夫。よし、行こう。

休憩スペースで見守ってくれているのは、試験に合格した流文と美煉だ。二人に大きく手を振り、迷路へ足を踏み入れた。



迷路の中。私には校舎に見えているが、やっぱり静かだ。依雲に悪魔の居場所を特定してもらい、其処に向かう。基本的には練習と変わらない。曲がり角に注意しながら、確実に進む。

一人目、いた。廊下を練り歩いている。できれば一発で倒したい所だ。

「大丈夫です、水音さん。特訓の時のことを思い出してください」

依雲が囁いた。特訓中に夜星が言っていたことを思い出す。



「弓矢は遠距離攻撃が出来るという利点を活かせば、一発で仕留められます。狙いを定め、射つ事だけに集中すると、技の精度も上がりますよ」



相手に気付かれないよう、少し距離を取り、弓を引く。悪魔の胸を射つ。それだけに集中する。視覚を研ぎ澄ませ、真ん中に矢が刺さる位置を定める。

今だ! 


水弓攻撃・【水平線】!


引いた手を離して、矢を放つ。矢はどこまでも続く水平線の如く、一直線に飛んでいき、悪魔の胸に命中した。

「やった!」

できた!できたできた!

あの時、そこら中を逃げ回っていた自分が嘘みたいだった。嬉しさのあまり、その場で飛び跳ねる。

「五分経過しました。その調子です」

五分。中々いいペースだ。悪魔を五体倒した後には、ステージIIの中級悪魔の討伐が待っている。それに備えて、ステージIを早目にクリアする必要がある。どんな敵か分からない以上、時間に余裕が出来ればいいけれど。

「依雲ちゃん、次の悪魔の居場所は?」

「はい。この廊下を歩いて右の……」

場所を聞き、すぐ走り出す。急がないと。




五人目の悪魔に矢が刺さる。床に倒れ、静かに消えていった。あくまでシュミレーションだ。人間の体が残る筈もない。

「三十分経過しました。水音さん、素晴らしいです。まだ半分も時間が残っています」

「ありがとう、依雲ちゃん。でも、最後は手こずっちゃったよ」

相手に接近した所を気付かれ、魔術を使い始めたせいで時間がかかってしまった。一発で倒すのも難しい。


悪魔の使う『魔術』は、仕組み的には天術とさほど変わらない。魔力を元にして、術を発動する。

下級悪魔は五大魔術と呼ばれる五つの術しか使用しないので、ある程度は行動を予測できる。だが、中級や上級になると、個々で新しく術を創り出すため手強い。天術で言うと、独流のようなものだ。


「これで手こずったって……流文さんより速いのによく言いますね」

「そうなの⁉︎」

依雲の話によると、流文は五人撃破まで三十五分かかったそうだ。たった五分の差ですごいと言われても、褒められた気がしない。そんな事を考えている内に、私は迷路を脱出していた。風景は放課後の校庭、といった所だろうか。ステージIのクリアと共に、ステージIIがスタートしていた。

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