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エピローグ
七月。梅雨が明けていた。
チャイムが鳴り、授業が終わった。
夏目が振り返る。
「内海、放課後どうする」
「……特に何も」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ」
夏目は笑った。遥斗は頷いた。
廊下で田中がわざと肩をぶつけてきた。
パンを奪われ、一口齧られる。
「ん、思ったより普通だな」
大河内が笑いながら会話に加わる。
日向が前から歩いてきて、眉をひそめた。
「いい加減にしなよ。内海くんが食べる分なくなっちゃうじゃん」
遥斗は慌てて首を振った。
「い、いいんだ……」
階段で日向に声をかけられる。
「次の席替え、どこがいい?」
遥斗は小さく答えた。
「……どこでも」
すべてが普通だった。
五〇点より、ずっと上だった。
夏目と並んで帰る道。
夕方の住宅街。蝉が鳴いている。
道端の金属板で指を切った。
パックリと皮膚が裂けたが、血は出なかった。
「大丈夫?」
夏目が心配そうに覗き込む。
遥斗は傷口をじっと見た。
痛みは頭の中に浮かぶだけの記号だった。
喉の奥に、薄く透けた『0000』の数字が浮かんでいる。
(まあ、いっか)
遥斗は夏目のどうでもいい話に、ゆっくり頷いた。
そして、満足したように微笑んで歩き続けた。




