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【BL】拾った子竜を可愛がったら、僕より年上の大男になって物凄く口説いてくる。〜 契約と貴族と黒い竜 〜  作者: 良音 夜代琴


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良くも悪くもフェアな契約

「ヴェルデは……、私もリョクトから魔力を貰ったらどうかと、言っている」


 え?


「私の主食は魔力を宿した鉱石だ。しかし、それは竜の里にしかない」


 えっ、オーロって魔力を食べるの!?

 人間なのに!?


 えー、もしかして竜とのハーフ……いやクォーター……?

 えーと……とにかくそういう種族みたいなのかなぁ。

 竜に近いっていうと、リザードマンとか……?


 それで竜のヴェルデと会話ができてたの!?


 じゃあ今までご飯はどうしてたの!?

 まさかずっと我慢してたとか……!?


 僕の視線で問いに気づいたのか、オーロは僕に頭を下げて言った。


「実は……町で買い込んでおいた貴方の魔力を食べていた。……黙っていて申し訳ない。不快な思いをさせてしまっただろうか……」


 オーロは懐から小さな魔力貯蔵石を取り出して僕に見せる。

 そこには確かに僕の魔力が入っていた。


 そんなの、謝るような事じゃないよ。

 売ってたものを買って使ってくれてたなら、オーロは何も悪くないんだし。


 僕は地面に『大丈夫』の単語を書く。

 オーロは心からホッとした様子で安堵の息を吐いた。


 それから『食べる』と書いて、疑問符のマークを書く。


「……っ、まさか……」


 オーロがひとつだけの金色の瞳を見開く。

 そんなに驚くことかなぁ?


「私が……食べても、いいのだろうか」


 僕は答えるかわりに、にっこり笑って見せる。

 そんなの、いいに決まってるよ。

 こんなにいつもお世話になってるんだから。

 僕の魔力くらい……。


 そう思ってしまってから、結局、僕には魔力しかないんだな……と心のどこかが呟く。


 諦めに似た気持ちがじわじわと胸に広がる。


 そんな僕の肩を、僕の目の前までやってきたオーロが両手で掴んだ。


 え。なんで?


「……ありがとう。とても、嬉しい……」


 うっとりと金色の瞳が細められて、その幸せそうな表情に僕は思わず見入ってしまう。

 ゆっくりとオーロの顔が近づいてくる。


「ギャンギャウッ!? ガウウッッ!!」

 ヴェルデが急にけたたましく叫び声を上げて、僕は思わずヴェルデの方を見た。


「ガウガウッ! ガウウッ!」


 ヴェルデ、どうしたの?


「……手から食べろと言っている」


 うん?

 そうだよね?


 オーロが渋々という様子で僕の肩から手を離したので、僕は小さく首を傾げながらも両手をお椀のようにしてそこに魔力をためてオーロに差し出した。


「ありがたく、頂戴する」

 言ったオーロが僕の両手に唇を寄せる。


 え、あ、そっか。


 オーロも舐めるんだ……?

 僕の手を……??


 ペロペロと掌を丁寧に繰り返し舐められて、なんだかドキドキしてしまう。


 オーロが食事を終えるまで、しばらく僕はカチコチに固まったままじっとしていた。

 それでも魔力は溢れるくらいにどんどん出てきて、両手からこぼれ落ちた魔力はヴェルデがキャンキャンじゃれつきながら食べていた。



 俺の魔力って……美味しいのかなぁ……?



 魔力って一体どんな味がするんだろう。

 想像もつかないや……。


 そんなことを考えているとオーロが顔を上げて、とんでもなく幸せそうに微笑んだ。


「もう十分だ。新鮮で、とても美味しかった……」


 わ……。

 ……わぁぁ…………。

 オーロのそんなにうっとりした顔、初めて見たよ……。


 僕の魔力って、そんなに、美味しいって思うような味なのかぁ……。


 僕は思わず自分の両手を見つめる。


 足元ではヴェルデが「キャンキャン」と同意するように鳴いた。


「いつの日か、あなたに許しをもらえたら……今度は、直接食べさせてほしい」

 オーロは、僕の目をじっと見つめてそう言った。


 直接って……?

 今も十分、手から直接食べてたと思うけど……?


 足元ではヴェルデがガウガウ騒いでいる。


『どういう事?』と説明を求めて首を傾げた僕に、オーロは苦く微笑むだけだった。



 ***


 それから五日ほど経った頃、別れ道で、オーロとヴェルデは言い合いになった。


 オーロは左に行きたいのに、ヴェルデは右に行きたいみたいだ。


 ヴェルデにも目的地があったんだなぁ。


「だから、お前はさっさと儀式を済ませてこいと言っているだろう! この足手纏いが!」

「ガウガウッ! ギャンギャウガウッ!!」


 そんなのヴェルデより僕の方がずっと足手纏いだけどなぁ。

 ああでも僕は届け物なんだから、置いて行くわけにはいかないんだよなぁ。


 ……オーロも、こんなお荷物連れて旅をするのは嫌だよね……。


 僕がもっと早く歩けて、休まずどんどん進める体力があれば良かったのにな……。


「一緒に行くのは無理だと言っているだろう!」

「ギャンギャンッ! グルルッ!?」

「いい加減にしろ! リョクトの枷が外せない限り里に入れるわけには――っ!」


 バッとオーロがすごい勢いで自分の口を両手で覆う。

 それから、そろりと僕を振り返った。


 枷って……?


 僕はオーロと視線を交わして、首を傾げた。


「枷というのは……その、言い方が悪かった。リョクトの首に巻かれた契約の事だ」

 オーロが開口一番謝罪する。


 そんなこと気にしてないよ。

 僕が首を横に振ると、オーロはそれでも眉を顰めたまま話し始めた。


「その術は、契約主に契約履行者の居場所を伝える機能がついている。だから、秘匿されている竜の里にリョクトを入れることは……できない……」


「グルルルル……」


「年若い事を差し引いたとしても、お前には自覚が足りない。種族を率いる長として、もっと自身の発言に責任を持て。我々には守るべき物が両手では足りないほどにあるのだ」


「グルル……」


 えーと……。よく分からないけど、二人はどちらも種族の代表的なポジションにある……のかな……?


「その契約を消すためには、基本的にはかけた相手が破棄するしかない。が、そうでないもう一つの手段として、もっと強力な契約でその契約を上書きする。というやり方がある」


「ギャンッ!? ガウウッ、グルルルルッ!!」


「無理にとは言わない。当然リスクも説明する。この契約は相手を強く縛る契約だ。契約を交わした二人は、相手が共にいれば互いに強い力を手に入れられるが、その分離れれば離れるほどに互いが弱体化する。互いの位置は互いに筒抜けだし、身体状況も伝わってしまう」


 お互いに……って、それは、良くも悪くもフェアな契約なんだなぁ……。


「ガウガウッ」


「ああ、確かに契約して首の契約を外した後で、この契約を破棄するという方法は存在する。……だが、契約破棄には互いの同意が不可欠だ」


 オーロはそこまでで言葉を切って、僕の前に一歩進み出ると僕の手をそっとすくい上げるように握った。


「……私は……」

 そのまま僕の手は彼に持ち上げられて、俯いた彼の額に僕の手の甲が当たる。


 なんだか祈るような、願うような……ああ、これは僕に許しを乞う仕草なのか。


「私は、貴方を手に入れてしまったら……もう二度と、手放せそうにない……」


 苦しげに熱い息を吐くような、そんな声で告げられた言葉に僕は瞬く。


 ええと……?


 なんで?


 あ、僕の魔力が美味しかったから?



 それにしてもリスクの方が大きいのでは……?




 だって、それって、オーロは僕とずっと一緒にいなきゃいけなくなるんじゃないの……?



 あ、違うか、僕の方がオーロのそばにずっと縛られることになるのか……。

 なんで今一瞬逆に考えちゃったんだろう。


 自由を奪われるのは……僕だけだよね……。



 目を伏せた僕に、ヴェルデが飛びつく。

「ガウッ! キャンキャンッ!」


 甘えてくるような声が可愛くて、キラキラの緑の瞳に慰められて、僕はヴェルデをそっと撫でる。

 いつの間にかオーロに握られていた僕の手は離されていた。


「……言ったところでお前には不可能だろう? お前はさっさと儀式を済ませろと私は繰り返し言っているはずだ」



 時々二人が言ってる儀式って、何なの?


 僕の視線に、オーロが少しだけ戸惑ってから、渋々という様子で口を開く。


「儀式は……竜族の長の系譜が挑むことを許されている試練で、それを乗り越えた者のみが竜族の長候補として認められることができる」


 そんな大事な儀式の……えっと、途中だったの、かな?


 僕はマジマジと僕に両前足をかけて尻尾を振っているヴェルデを見つめる。


 あれ、首のところになんか小さな模様がある……。

 首元に浮かんだ模様を撫でると、ヴェルデが嬉しそうに目を細める。


「それは儀式の帰りに付けられる契約紋だ」


 帰り……じゃあもう後は、帰るだけってこと?


 それなのにヴェルデは僕の事を気にして儀式を置いてついてきてくれてたの……?


 僕のことはいいから、ヴェルデは自分のことをやらないと……。

 だって、ヴェルデにはヴェルデを待ってる仲間がいっぱいいるんでしょ?


 僕は地面に『行く』と『良い』を書く。


 ヴェルデは文字まで読めるのか、僕の書いた字をじっと見つめた。


 顔を上げて僕と目を合わせたヴェルデは、ちょっと悲しそうに首を横に振って、僕の手をぺろっと舐めた。


 ヴェルデは、行かなきゃいけないって事を分かってて……。

 それでも、僕と一緒にいようとしてくれるの……?




 ありがとう、ヴェルデ……。




 結局ヴェルデは、竜の里に向かうのを諦めて僕達についてきてくれた。



 僕は、迷いを振り切ったかのように尻尾を振って歩くヴェルデの後ろ姿を見ながら、あの頃クロの首にあった模様を思い浮かべていた。



 ヴェルデと同じ紋が、確かにあの頃のクロにもあった。


 じゃあ、クロはあの時、儀式の帰り道だったのか……。



 それなのに、外に出してもらえるって言われたクロは、僕と離されるのをあんなに嫌がって大暴れした。



 ……どうしてだったんだろう。


 僕の魔力が美味しかったから……?


 クロは僕と離れたくなかった……?



 それとも……。





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