ログ#24「裏神」
応急処置が完了したヴァイスがスミリ達と合流する。
ニガナの寝息を立てている姿に双子が喜びの涙と大声を出して子供達もそれに、つられたように泣き出す。
村に帰ろうと提案するスミリだったが、ふと気になる事を口にする。
「自警団は無事だろうか」
「心配ない、無事だ。
それに決着はついた」
「そっか、おまえがヴァイスが言うなら安心だな!!」
「そうなのか」
「ああ!
そうだ!!」
フードを貫きウラガミの頬に鮮血の痕を描く。
見えない50を超える斬撃を落としたり消し飛ばしたりするも全てに間に合うわけもなく直撃を免れるも吹き飛ばされ横たわる。
立ち上がるシラヌイに口元をニヤッとさせて頬を腕で拭うウラガミ。
(この光の剣、持ち手だけで軽いのかと思ったら光の刃の制御で普通の剣より扱いが難しい。
それでいて威力が凄まじいから使い手に任されてるんだ。)
木の葉がユラリユラリと舞い、地面に着地する。
次の瞬間に双方の刃が交わる。
ウラガミの持つ左右の魔道武器とシラヌイの持つ量産品の剣と光の二刀流が激突する。
連撃と追撃に眩しい閃光と火花、互角に見えて慣れない武器にシラヌイは少しずつ追い込まれてゆく。
「それ、欲しいかもなッ!
疾っ!!」
「なんだと!?
そうはいかない!!!」
力を入れたはずが汗で滑ったのか光の剣が宙を飛ぶ。
急いで跳んで掴もうとするシラヌイと叩き落とそうとするウラガミ。
一足先に手に取ったシラヌイだったが腕ごと、ウラガミに叩き落とされる。
しかし、空中で回転して着々すると降りてきたウラガミを回し蹴りで転かして飛び退いて、その間に態勢を整える。
だがウラガミは簡単には転がらずアクロバットに木々や武器を使って草木の上に着地した。
驚いているシラヌイにウラガミはフッと笑うと2人は又、ぶつかった。
一際、眩しい光が山を照らす。
その衝撃は風を起こし周囲の木々を揺らして、一陣の突風を巻き起こして2人を吹き飛ばす。
ウラガミの武器に罅が走り、シラヌイの剣が壊れる。
両者が立ち上がり戦いは再開されると思われた時、クチナシがガシャンッガシャンッと音を立てながら倒木や岩を退かしながら現れた。
そして自作の大型魔道具のアームから岩を投げる。
2人のちょうど真ん中に落ちて戦いは止まる。
「シラヌイくん!!
これは?
それに君は!?」
「邪魔が入ったから、もう帰る時間だっ!!!」
そう言ってウラガミは通り過ぎざまに一撃をシラヌイに入れて走り去って行った。
「うわっ!?」
「なんだったんだ!!
でもシラヌイくん、軽い傷で良かった。
子供達はヴァイスくんやスミリくんが村に送ってるそうだよ」
「はっ、はぁ〜〜〜〜。
良かった〜」
全身の力が抜けて倒れる。
草や土を焦がす音がして焦り見ると光の剣の刀身が出たままだったのに気付く。
「えっと?
どうやるんだ?」
刀身が出た時と同じボタンを押すが反応はなく焦っていると少しして刀身が短くなって消えて収まってゆく。
『悪い、戻し方を話してなかったな。
こっちで操作した。』
「ヴァイス!?
頭の中に!?
どこから?」
『ちがっ………そうだ俺の魔道具で話してる。
安心しろ、もう帰ってこい』
「あぁ、ありがとう」
「ん?
どうしたんだい?」
「あ、いえ。
なんでもありません」
(魔道具1つでこんなに戦況が左右される。
またまだ鍛錬が足りない………。)
もう刃の出ていない持ち手だけの魔道具から視線を空にしながらシラヌイは自分の不甲斐なさに別の拳に力が入った。
「おい、何してるんだ行くぞぉ!
シラヌイ!
クチナシさん!!」
遅れてきたゴンズイ達に呼ばれてシラヌイは振り返って取り付くように元気に返事をした。
◇◇◇
トラノオら子供達は村の大人や親に叱られた。
そして少しだけ褒められた。
村を飛び出した事はいけない事だが無事に帰ってきた事、そして危険な蒸気でも仲間を鼓舞し続けたトラノオと仲間を見捨てなかったウツギとレンの勇士に里の未来は明るいと笑う戦士たち。
トベラとニガナはヴァイスのラボに通され治療と輸血に協力して二人共、今は安静に眠っている。
次の日、慌ただしかった里に日常が戻る。
クチナシの自宅では子供に扱き使われていたクチナシが今日はヤケに笑顔で彼らの相手をする様子が見られる。
スミリとやってきたヴァイスを出迎えたのはシラヌイだった。
「これ、ありがとう。
正直助かったよ」
「それやるよ。
また壊れたんだろ」
「でも……。」
「またにメンテナンスが必要だから、それだけ覚えておいてくれ」
「えっ、でも。」
「ヴァイスがやるって言ってるんだ、遠慮するな!」
「なんでお前が答えてんだ、だがまぁ。
初対面の時に、お前の魔道具を壊した詫びだと思ってくれ」
「そうなのかな。
分かった、分かったよ。
ありがとうヴァイス!」
「あぁ!!」
「だからなんでお前が答えてんだ!!」
室内に笑いが上げる。
双子も数日後には元通りになると伝えられている、安静にするために今は家で大人しくする必要があるだけ、自警団の皆がヴァイスを真の意味で仲間と認めた瞬間だったかも知れない。
「でもこんな大ごとになるとわな!
シラヌイが手こずるなんて…………。」
シランが溢す。
「ん?
なんの事だ??」
スミリがユーリ達との談笑からシラン達の話に割り込む。
スミリの行動に慣れているため誰も特に何も言わない。
「ウラガミだよ。」
「ウラガミっ!!」
「ウラガミ?」
「ウラガミ、何年も前から此処周辺の森や山に現れる。
謎の男、迷い込んだ人間を攻撃したり、そうと思えば助けたりと行動に一貫性が無い。
俺の親世代の時にも見たって聞くから同一人物なのかも分からない。
ほんとうに怪しい奴だよ」
「へ〜〜なんでウラガミって言うんだ?」
スミリの純粋な疑問にヴァイスは少しだけ心の中でガッツポーズをした。
調べようにもこの村には本や出来事を書き残す週刊がないため手段は人に聞くだけしか方法がないためヴァイスとしては躊躇する所にあったからだ。
「私も詳しくは分からないんだが元は森の守り神的な?
森の管理をしてたからとか荒い神の化身だから、荒い、アライ、アラ〜イ、ウライ、ウラ〜っで、ウラガミって、そう呼ばれているみたいな話は聞いたよ」
「へ〜〜」
途中から興味をなくしていたスミリは菓子をポリポリ食べながらユーリ達の元に戻っていった。
「それにしてもスミリ案のヴァイスにお任せ作戦は案外好調だな!」
「スミリの作戦?」
「やっぱ、聞いてないのか?
スミリがヴァイスの有能性を見せつけて不信感を持つ大人連中や村の皆から信用を勝ち取ってヴァイスを人気にするって作戦だよ」
「に、人気者っ!?」
「まぁ人気者はどうかと思うがヴァイスが一部からしか受け入れられてないのも事実だ。
スミリなりに君を思っての事だと思うよ!」
「そうだぜ!
でもそれが迷子の捜索、ウラガミとの戦闘にまで発展するとわな」
「ヴァイスがいたから早期に発見できたしウラガミと戦ってシラヌイが生還できたんだ!
成果は十分だろ?」
「そうだな、村の皆がヴァイスを噂してるよ!!
勿論、良い意味でな!!」
「それは良かったよ」
自警団との会話にヴァイスは苦笑いを隠せなかった。
そんな昼過ぎ、ウツギ達はスミリに謝りにきた。
「ごめんなさい」
「これ、スミリお姉ちゃんが落としたの拾っちゃったんだ」
「これは?
………だからあんな危険を冒したのか。
分かった。
行くぞ!」
「「「え?」」」
「怒らないの?」
「それはもう大人達がしただろ?」
「いいの??」
「あぁ、いいぞ!」
「でもお宝なんじゃ?」
「ああ!お宝だ!
だから皆で行こうな、ニガナとトベラが元気になってからだ!」
「うん」
「はい」
「はーーーい!!」
スミリの親達はこの里に流れついた、そしてスミリ達を産み育てている。
このグロウ村は余所者を受け入れた過去がある。
他にも数年前にも余所者を受け入れたらしく、ヴァイスが始めてではない。
だがヴァイスにはそう簡単な問題には思えなかった。
子供達を撫でては伴に笑い合うスミリの様子を見てヴァイスは腕を組んだ。




