ログ#25「進捗」
経過日誌。
未開エリアにて未登録の惑星に墜落。
予備の宇宙艇での星間航海と帰還の目処が不明瞭。
現状は物資や食料の問題から探査機での
調査を開始。
人工衛星とドローン等で星や現住民のデータ採取の実行中。
また宇宙望遠鏡の制作と設置等も検討中。
食って糞して寝る。
そんな生活もいいが、それだけだと村での外聞としても軍人としての体裁としても後から管理部や情報部の奴らに見られる事を考えるとグダグダもしていられない。
モデルケースとしては都市よりも小村の方が結果は早く出るだろう、だが閉鎖的なコミュニティは社会性をより求められる。
横の繋がりも強く情報の伝達、人と人とのネットワークが早い。
交流………苦手なんだよ。
グロウ村は閉鎖的な一面が少ないが、それでも外部の人間を嫌う傾向はある。
今までの人間関係に割って入ってる訳だから忌避されるのは道理だ。
警戒されるし疎まれ恨まれる。
村の経営陣からしたら、いきなり現れた身元不明の男に村の娘が求婚したとなれば尚の事だ。
興味を持つのはホンの一部だ。
どうしたもんかな。
はぁ〜階級が上がって良いことは1つもない。
戦場で偉そうに出来るだけで実際にそういう奴らから先に死んでいく。
俺の経歴じゃ、そろそろ、そもそもこの辺で頭打ちだったんだが………………。
帰りたいってわけでもない。
特に必死なわけでも無いんだが……。
それしかないんだよな。
「しっ、やるか」
オペレーション・フォールンは、まだ初期段階だ。
やりようはまだ、ある。
まぁ、お偉いさんらに突かれない程度には、ゆっくり進めるさ。
◇◇◇
その夜の邸、スミリの部屋にヴァイスはいた。
「な、なんだ!?
ジロジロ見て!!
なにか変か?
女らしくないだろ?」
「いや別に」
「ッ、………それで私に用ってなんだ?」
「スミリ、お前には感謝してるんだ」
「なんだいきなり?
気味が悪いぞ!」
「人の心っていうのか?
温もりや温かみみたいな感情を思い出させてくれる。
忘れてたんだよ。普通に普通の話を大勢として他愛なく笑ったりするの………。
スミリは、むちゃくちゃだけどな」
「か〜〜〜!!
恥ずかしいだろ!!
あとむちゃくちゃは余計だ!」
顔を沸騰したように染めていたが最後の言葉に地団駄して起こるスミリにヴァイスは小さく笑うとテーブにある物を置く。
「ほら」
「ん?」
スミリが手に取ったのは板状の電子ツールの情報端末デバイス。
「ガキ共がまた悪戯やらなんやらで冒険に行って居なくならないとも限らないからな。
魔道具って事で、ようはタブレットなんだが……使い方分かるか?」
「分かるかっ!!」
「だな。
衛星他からリアルタイムの地図の機能のみにオミットしてはあるが、魔力なんかの個人情報を登録すると位置が把握出来る」
「ほぉ〜
ほーお!!」
「今はスミリだけだが、このアイコンがスミリだ。
しっかり点滅してるだろ。
タッチパネルをタップやスワイプすればズームしたりと色々と操作が出来る。
ペンは失くしそうだったから手でメモやちょっとしたイラストも描ける。
このせ‥国の言語での表記に変えといたからってどうした」
ヴァイスのペンを失くすの言動には一瞬、ムッとしたスミリだったがヴァイスに近づき耳元で告げる。
「いいや隠す気、ないなと思ってな。」
「はぁ、なに言って」
「ふふん、…………大好きだぞ!」
「お前っ、つぅ………。」
『『どうしました』』
「なんでもない」
「なにしてるんだ?
ほら行くぞ!
自警団の皆に自慢するんだ!」
「ふん、はぁ。今は夜だぞ」
「そうだった、嬉しくてついな!
なら母上や父上、屋敷の皆に見せびらかすぞ!!」
「それもどうかと思うんだが。
明日、ガキ共の魔力の登録忘れんなよ」
「あぁ、ヴァイス!」
「ん?」
「ありがとな!
明日、一緒に行くぞ」
伝えた言葉は嘘ではない。
想い動いた感情も偽りではない。
ただ少しだけ少女の好意を利用し誘導しただけだ。
それを知りながらヴァイスはスミリを見て心を痛めている自分がいるのを感じた。
◇◇◇
双子の家。
ナノマシンを除去する処置や錠剤等を処方して数日。
「皮膚や臓器の定着を確認した。
様子見の期間は終わった。
明日で起き上がっても大丈夫だ。
日常生活に戻れる」
手術当日、トベラはニガナの足りたい輸血を志願した。
検査の結果、問題もなかったためヴァイスは彼女の石を尊重した。
そのために2人揃って並んだベッドに眠っている。
2人は双子の力なのか同時に体調を良くしていっていた。
そして元々、双子のためか1つの部屋を使っていたため定期検診も双子の家で行っていた。
「ヴァイスのお兄さん、ありがとう。」
「ヴァイスさん。
ニガナを、トベラを助けてくれて改めてありがとうございます」
「いいや。
姉を、妹を、娘を思う家族の………。
生き物は皆が同じなんだと今更ながらに痛感しました。」
たらふく、食事を取り寝息を立てているニガナを見てヴァイスは上着を羽織って部屋を出ようとする。
「安心だとは思いますが日常生活に戻ってからも拒否反応や別の要因も考えられるので俺の方でも注意はしますがご家族でも注意をお願いします」
「は、はい」
注意事項やサプリ等を渡してから双子の家を出る。
家の外、壁に寄りかかって待っていたスミリがヴァイスの顔を見る。
「どうした暗い顔して」
「別に」
「ふ〜ん」
「聞かないのか?」
「なにを?
聞いて欲しいのか、違うだろ?」
「そうだな。
でも…………。」
「でも?」
「正直、隠し事してるのは良いんだ」
「っ!?
いいのか?
よくないだろう。
私はショックだぞ」
「ふん、どの口が言ってんだ。
隠し事自体は問題じゃないだろ。
誰にだって言えない事はある。
スミリ、お前もそうだろ」
「…………あぁ、そうだな。
誰にだって隠し事はある。
でも好きな奴に隠し事し続けるのはツライだろ?
私は話したい」
その言葉にヴァイスは溜め息ではなく鼻から息を吐いてスミリを一瞥して空を見てからスミリに視線を戻す。
「……歩くぞ」
「あ、おい!?」
「人んちの前だ。
帰りながらだ………。」
「、………あぁ!!」
村人達と通り過ぎ様に挨拶をしては屋敷に歩を向ける。
会話は始まらない。
傾斜が高くなり家路が続く。
「帝国や王国、その他の国の人間でもない。
薄々、感づいてたろ」
「はぁ!?
いきなりなんだ!!」
「面倒臭くなったんだ。
なにやってんだろなってな。
今まで殺してばかりだったからな。
そりゃ民間人を助けた事はある。
でも、今回はな。
なんて言うか考えさせられた。
こんな若い感情が残ってた事に、悩んでる自分自身に驚いてる」
「ヴァイス…………。
泣いてるぞ」
「……泣いてるのか……俺……。」
手の甲で拭った事で確かめた事で余計に涙が溢れ視界が歪む。
膝から落ちる。
「若いか……ヴァイス、ヴァイスが何年生きてて何歳だとか知らない。
年上だって言ってたが知ったことか!!
ヴァイスが何してきたとか聞かない!!
言えないんだろ?」
「言えない」
オペレーション・フォールン、軍人としての責務。
未知の星での行動とその重圧、そんなものはヴァイスは関係無いと思っていた。
だが彼の冷たい冷酷な魂を溶かし始めていたのは紛れもなく彼女だった。
感情の爆発までとはいかない。
それでも解れたソレは確かに見えていてホンの一瞬ではあるがヴァイスが子供のように素直に答えた瞬間だった。
「なら言うな!
私が受け止めてやる!
だから言えるようになるまで黙ってろ!!
ヴァイスはヴァイスだ!!!!」
「………。」
膝で立ち、泣いていたヴァイスをスミリが包み込むように抱きしめる。
「もう戻っていいんだ。
ここ最近のお前は張り詰めてたぞ、子供達の救出云々当たりから変だった。
元のヴァイスに戻れ、戻れるはずだ。
私の好きなヴァイスにだ。
……話せないからじゃない。
話せないなら私に任せろ。
そんなの全部含めて私はお前が大好きなんだ!」
ヴァイスを立たせて涙や諸々をハンカチで拭うと手を掴む。
「ほら帰るぞ!」
まるでスミリが母親でヴァイスが息子のようでスミリは少し可笑しくて笑う。
「私の隠し事、いやお前が知らない。
居なかった時の事も話そう。
今はムリか?
ほら泣き止め!
いつかお前の事も教えてくれよ!!」
そのどれも、ヴァイスはスミリの問いかけに短く返事をするだけでスミリと繋いだ手に引かれて歩いてゆく。
焦りと苛立ち、知らない世界での生活はストレスだったのかも知れない。
慣れているはずだった。もっと過酷な環境で寝る事も出来ず戦ってきた。
それでもスミリとのスミリ達との出会いはヴァイスに何かを与え始めている。
家はもうすぐだ。




