ログ#23「救難」
それはヴァイスが村にやってきて少年少女と2度目に会った時の事だった。
「新入り、俺達が先輩な!
子供だからってナメたら許さねぇーからな!」
「後輩として僕たちを頼ってね。
遠慮はいらないよ!」
「お兄さんは髪の毛、灰色だね。
おじいちゃんみたい!」
「ん………あぁ」
子供との会話が何十年ぶりだったのが関係してかどうかは不明だがヴァイスは彼らと1度目での挨拶程度だった事もあってか接し方が分からず普段よりも無愛想で、ぶっきら棒だった事をヴァイスは思い出していた。
人工衛星他からの監視映像のアーカイブを見ると朝早くに大人の死角を、うまく利用して村の外に脱出する彼らの姿がバッチリと映っていた。
森を進み、川辺を1列で並んで歩きアカペラで歌を全員で口ずさむ。
当然のようにヴァイスが知る訳もない歌にヴァイスは宴会で聞いたかもなと思い起こして小さく息を吐くように笑う。
子供達が空腹を訴えて野苺や果物を摘んで食べながら再度、出発する。
倒木を避けて大幅に予測されるルートから外れてからは道を反れていく。
そして……。
彼らが辿った出来事や道筋を1秒程の間に把握したヴァイスは太い高枝等を足場に森に飛び出した自警団のメンバーに自分にはそれは出来ないんだよな〜と思いながら隣で並走しているスミリへと首を向けた。
「ん?
どうした?」
「いや、なんでもない。
………助けたいか?」
「当たり前だろう!」
その答えに普通はそれが当然だよなと考えると服の下にあるペンダントに軽く触れる。
腕輪と交信、連動すると順次、装備が腕輪から展開されヴァイスの体をバトルスーツへと身を包んでいく。
バックパックの飛行ユニットで飛び上がると脚や足裏のスラスターでその場に留まりヘルメット部分の一部、顔を解除して顔を出すとスミリに手を差し出した。
「なら来い!
急ぐぞ」
一瞬の事に呆気に取られそうになるスミリだったが次にはフッと鼻で笑う。
「カッコイイじゃないか!」
スミリは空中のヴァイスの手を掴み、身をヴァイスに任せると空高く木々よりも高く飛び出した。
一方、クチナシは背負った大きなバッグからマジックハンドや木々を切り裂く丸鋸が飛び出した自作魔法具を使って子供たちの捜索を開始していた。
手に持つ子供達の魔力を記録した計測具が反応しないかを、つぶさに確認しては近辺を練り歩く。
汗を拭うのも忘れながら大声で名前を呼ぶ。
そんなクチナシが野生動物や魔獣から襲われないようにシラヌイ達は守るように陣取って進んだ。
「無事でいてくれ……。」
「ん、ヴァイス!?」
「奴ぅ、飛んでるぞ!」
「子供たちを見つけたのかも知れない。
俺が付いて行きます!!」
「任せたぞシラヌイ!」
「こっちも遅れを取れん。魔道具No.23 サガセルクン!!
フルパワー!
捜索範囲を広げる!
魔力波に魔獣が寄ってくるかも知れない!
頼むぞ!!」
「応っ!
その分、子供達への危険も負担も減るんだ!
みんな!!気張れよ!!!」
◇◇◇
その頃、トベラ達は皆で村の歌を歌っては子供達の気を紛らわしていた。
そこに不意に降り立った陰が1つ。
驚いたレンが悲鳴を上げそうになってウツギが口を塞ぐ。
「なんだ!?
なんかあったのか!!」
トラノオが声を掛けるが返事はなく登ろうとしてトベラが止める。
「トラ、ダメ!
砂が崩れちゃうわ!!」
「でも皆がぁっ、クソぉーーー!
ウツギ!レン!返事してくれ!!」
震えて声も出せないでいるウツギとレンの前に現れた男は2人に迫ろうとする。
男が手を伸ばそうとした瞬間、それを遮るように草や葉を服や髪に付けては風に舞いながら現れる人物がいた。
「お前はウラガミかぁ!!!」
弓を投げ捨て2人を庇うように立ち上がって2本の剣を構える。
「お兄さん」
「シラヌイお兄ちゃん!!」
「っ!?」
「みんな大丈夫か?
ヴァイスが急げって言うから先行してみれば、お前が噂のウラガミだな!!
子供達に何をしようとしていたんだ!
誘拐でもする気かぁ!!
ハァーーー!!」
「待て!
違うんだ!!
チィっ!」
謎の人物とシラヌイの衝突対決を画策した男、ヴァイスはそれを横目にニガナの元に降りてくる。
スミリはウツギとレンを抱きしめては泣き崩れる2人を宥す。
「ヴァイスさん?」
「ヴァイスさん!」
「ヴァイスの兄ちゃん!!」
シラヌイは戦闘中に気付き、謎の男も遅れてヴァイスとスミリに気付くもシラヌイが位置取りと攻撃で近付かせないようにする。
(あの男、シラヌイと互角の身体能力だが戦闘経験の差と魔法具の差で勝っているはずがシラヌイに決定打を決められていないな。
男の見えない斬撃も魔道具があれば、ある程度防げるのに気づく順応の速さ、シラヌイ自身の若さからくるものなのかセンスからくるものか、この世界の魔力も関係するのかもな。
時間が経つにつれてシラヌイの回避数や反撃が多くなっている。
どうするんだ、ウラガミ様よぉ〜
っとこっちも急がないとだな。
トレースだけは、しとくか)
「トベラだっけ」
「な、なにぃ!」
「ニ……ニガナは俺が助ける。
だがここは狭い、だから上に上がれ」
表示される人名を確認しながら名前を呼ぶため微妙に反応が変だがヴァイスは極めて丁寧に説明していく。
「そんな!?」
「足場がいつまでも耐つか分からない」
(まぁ、それの判定も補強も出来るんだが時間的猶予と治療自体を見せたくないコチラ側の事情があるんだが……。)
「俺にはニガナを救う手段がある。
今は全員が助かるための手段を取る……だから、そら、だからえっと………。」
「聞こえるか!?
危険だから此処に来るんだ!
私の所に来い!!」
「スミリねぇちゃん!?」
「スミリ!!」
「そう言う事だ。
分かったろ?
手伝ってやるから登れ、な。」
「そうだ!
ヴァイスは子供の相手が苦手みたいだからな。
そこより安全だぞ。」
◇◇◇
魔道具風に偽装したドローンにトラノオとトベラを乗せて順番にスミリの元まで運び終えるとシラヌイ達の戦っている場所から離れるように言うとヴァイスはニガナへと向き直す。
(ナノマシンでの治療が可能なのはスミリとの初遭遇時に船に乗せる際にチェック済みだが、いちようは個人的な要因も考えられるか)
「パッチテストやるぞNS!」
時間にして実際には数十秒だが検査の全てを終えてこの惑星の人類用に改良された治療が始まる。
「少し痛いぞ。
…………応急処置で傷は塞いだが帰ってだな」
「………。
痛くなかった?」
「そうか、やっぱここの村の奴らは肝が据わってるな。
もう喋んなくていい、ツライだろ。
子供連中にも大人の仲間に直ぐ会えるからな」
「う………ん……。」
「よし、次っだな」
ニガナを抱えると優しく飛び上がった。
その頃、シラヌイは子供達からウラガミを引き離して山中で対峙していた。
「悪いがここで倒す!!」
「チィッ!!
どうかな?」
白い煙幕に視界を奪われたシラヌイがウラガミを見失う。
敵から攻撃を警戒する態勢を取っていると風の流れで上を見る。
ウラガミが逃走するのを防ごうとある物を取り出す。
◇◇◇
空中を飛んでいるヴァイスとスミリに地面を跳んたり走って追いついたシラヌイが声を掛ける。
「おい!
おーーい!
もしかして子供達、見つけた?」
「あぁ、ヴァイスのなんか凄い魔道具でだ!
だがなんでも緊急らしいんだ!」
「なんだって!!」
「ガキの3人が崖のっ──怪しい男がガキ連中に異常な速度で近付いている」
「なにぃ!
悪い、俺は先に!!」
「まて、コレ持ってけ!
俺よりお前の方が早く着く。
柄のココを押すと光の刃で出現する魔道具だ。
敵がガキの下に着くぞ、ほら急げ!!」
「あっああ!」
グリップだけの魔道具をキャッチするとシラヌイは全速力で疾走した。
「なぁヴァイス?」
「ん」
「なんでお前の方が遅く着くんだ?」
「決まってるだろ、お前が重、ぐはあ」
「んん?
その先を言う覚悟があるんだな?
止めはしないぞ?」
「な、なんでもない。
ちょっとヤバそうなんで急ぎます」
「あぁ分かった。
女の子には優しくな?
デリカシーのそれくらいは私にもあるんだ!」
「はい」
ヴァイスから受け取った筒状の柄を取り出したシラヌイはボタンを押す。
すると反対の方から光の剣が現れる。
光の剣はその周囲の空気をもバチバチッと焦がしているように刀身の形を維持し続けている。
「反対だった!!」
言いながらウラガミに振り上げる。
「ぐわ!?
なんだ、それはっ!!??」
初めて触る得物だった事もあってか距離感や軽さから浅く足を斬りつけされたウラガミは落下と同時に魔道具を発動させ見えない斬撃を左右から飛ばす。
シラヌイは光の刃を順手に持ち替える暇もなく戦闘は続行された。




